「好きな人ができたから離婚したい」という希望や、有責配偶者(浮気・不倫した側)からの離婚請求が通ることは特に珍しいことではなく、よくある離婚の形の一つです。
この記事では、好きな人ができた時に夫(妻)と離婚する方法(特に有責配偶者に該当する可能性がある場合の離婚の進め方や離婚するためのポイント)を男女問題に強い弁護士が解説します。
2022.06.17
離婚原因
不倫慰謝料

「好きな人ができたから離婚したい」という希望や、有責配偶者(浮気・不倫した側)からの離婚請求が通ることは特に珍しいことではなく、よくある離婚の形の一つです。
この記事では、好きな人ができた時に夫(妻)と離婚する方法(特に有責配偶者に該当する可能性がある場合の離婚の進め方や離婚するためのポイント)を男女問題に強い弁護士が解説します。
目次を見る

有責配偶者とは、夫婦の婚姻関係の破綻について主たる原因の責任を負う配偶者を指します。
その典型例は不倫(浮気)をした配偶者です。
その他にも、いわゆる「悪意の遺棄」をした配偶者や、DVを繰り返していた配偶者なども、有責配偶者に該当する場合があります。
そして、有責配偶者からの離婚請求は、離婚裁判(離婚訴訟)の中でもとりわけ難易度が高く、判決で離婚が認められない可能性が高い類型です。
そのため、離婚裁判に至る前の交渉や調停の段階で離婚の合意が得られず離婚が成立しなかった場合には、実質的に離婚の糸口を失うおそれがあります。
このため、有責配偶者が離婚を達成するためには、できるだけ早期に離婚問題に精通した弁護士へ相談するなどして、離婚に向けた手続の見通しや対応方針を整えておくことが重要です。
男女は、知り合い、交際し、婚約して、結婚します。
そして、結婚とは、世の中に無数に存在する異性のひとりを自分の人生における唯一のパートナーに定める行為です。結婚した瞬間、人生を共に歩むことが「正しい」とされる異性は配偶者のみに固定化されます。
仮に本気で好きな人ができたとしても、その好きな人と恋愛することは結婚のルールからすれば「正しい」とはいえない行為です。
その好きな人への恋心を断ち切り、既にその好きな人と交際(浮気・不倫)している状況であればその人と別れることが、結婚の「正しいルール」に沿った対応です。
ただ、人の心は、結婚の「正しいルール」の通りに素直に言うことを聞いてくれないことがあります。様々な葛藤の末、好きな人との交際を続けるとの選択をすることだってあるでしょう。
この記事では、好きな人ができた時に夫(妻)と離婚する方法(特に有責配偶者に該当する可能性がある場合の離婚の進め方や離婚するためのポイント)を解説します。

配偶者に対する不満が募っていたり、配偶者との夫婦の婚姻関係が悪化した状態にあった中で、配偶者以外の異性との交際(浮気・不倫)が開始されることは多いものです。
・自分のことを一人の異性として見てくれなくなった配偶者との生活に寂しさを感じていた
・配偶者の暴言(モラハラ)・暴力(DV)・異性関係・収入や金遣いなどの点に悩みを抱えていた
・配偶者との間で性格の不一致や価値観の違いを感じていた
・セックスレスなど性的な事柄に関する不満を感じていた
など、配偶者に対する不満が募っていたり、配偶者との関係が悪化した状態である場合は、配偶者以外の異性に心が向かいやすい状況でしょう。
そして、このような場合は、好きな人ができたことや、その好きな人と恋愛関係(浮気・不倫の関係)に至ったことが後押しとなって、配偶者との婚姻関係を解消したいという思いにつながっていきます。
また、このような場合は、そもそも配偶者以外の異性の存在とは無関係に、夫婦の婚姻関係が破綻し、ないし破綻に瀕していたといえる場合もあります。
配偶者以外の異性に自分が恋していると自覚し、その異性に対する思いやその異性との関係が深まるにつれ、配偶者に異性としての魅力を感じなくなり、配偶者に対する気持ちが冷めていることに気が付くことがあります。
配偶者との会話や日常生活に退屈感や煩わしさを感じてひとりの時間が欲しくなったり、配偶者とのセックスに物足りなさや億劫さなどといった冷めた感情や義務感を感じて満足できなくなったりし、そういった配偶者との関係における我慢やストレスが積み重なっていきます。
そして、そのようないわば「つまらない」配偶者との人生に価値や将来性を見出せなくなり、このまま自分の人生がそれに費やされていってしまうことが嫌になり、配偶者との婚姻関係を解消して別々の人生を進むことを希望する場合には、配偶者との離婚を選択することとなります。

好きな人ともっと一緒にいたい、もっと深く繋がりたいと思ったとしても、配偶者がいる状況だと、どうしても配偶者の目を気にする必要がありますので、恋人と自由に会ったり、遊興に出かけたりすることは困難です。
恋人とは「おやすみ」や「おかえり」を言い合える関係ではなく、対外的な役柄は他人であり、配偶者にバレない範囲内でしか会うことができません。
例えば夜遅くまで一緒に過ごすことや、週末や祝日に会うことや、お互いの誕生日・クリスマス・年末年始などのイベントの日を一緒に過ごすことや、一緒に宿泊をすることなどができないことも多いでしょう。
その切なさや恋しさ、孤独感や時には嫉妬心に耐えかねて、恋人と自由に付き合いたい、恋人との関係をもっと深めていきたいとの思いから、配偶者との別居や離婚に踏み切る場合もあります。
数多くの夫婦が現実に離婚を選択していることから考えても、人は、結局離婚することとなるような異性と結婚をしてしまうことが良くあるものなのでしょう。
そもそも配偶者は自分が出会うこととなる無数に存在する異性の中で最も魅力的で相性の良い異性であると保証された存在ではありませんし、最も自分が幸せになれる人生のパートナーであると保証された存在でもありません。
結婚した後に配偶者よりも魅力的で相性の良い異性が現れることもあり得ることであり、そのような異性と恋愛し、相思相愛の恋仲となって信頼関係を築いていき、お互いに共に歩む人生を望むようになることもあり得るものです。
そのような恋人と再婚したいと思い、恋人との間での再婚の約束がある場合には、再婚をするためにまずは配偶者と離婚をしなければなりません。
特に恋人との間で子どもを設けたいと考えている場合には、早く配偶者と離婚して恋人と再婚したいと強く思うときもあるものです。

配偶者に恋人の存在が発覚したことがきっかけとなり、配偶者から事ある毎に責められ、何度も繰り返し謝罪や反省を求められたり、何を伝えても聞く耳を持ってもらえずに否定されるようになったり、生活に支障が出る程の様々な制約を課されたりするなどの状況となることがあります。
また、浮気・不倫の発覚が配偶者からの暴言(モラハラ)や暴力(DV)が始まるきっかけとなることもあり、そしてそれは習慣のように配偶者に染み付くことがあります。
配偶者からひどい暴言や脅しのような言葉を投げかけられ、暴力的な挙動をするようになった配偶者に恐怖を感じることもあるでしょう。
また、子どもがいる場合は特に問題が大きく、あえて子どもに聞こえるように浮気・不倫を責められたり、子どもの前で夫婦の言い争いが多発するようになったりしてしまう場合もあります。
なお、そのような行為は子どもを使ったDVや子どもに対する心理的虐待に該当し得る悪質性の高い行為です。
そのような配偶者との終わりの見えない辛い共同生活の状況に精神的に追い込まれてしまい、配偶者との別居や離婚を決意するに至ることもよくあることです。

離婚問題は、通常、離婚協議→離婚調停→離婚裁判と進んでいきます。
配偶者との離婚を決意した場合には、まずは協議離婚が成立する可能性を検討することとなります。
協議離婚とは、夫婦で離婚するかどうか及び離婚条件について協議(話し合い)を行って合意して離婚を成立させる離婚の方法のことをいい、離婚する夫婦の圧倒的多数が協議離婚の形で離婚しています。
配偶者が離婚を拒否している場合や、そもそも配偶者と離婚の協議(話し合い)ができそうもないような場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて調停離婚の成立を目指すこととなります。
調停離婚とは、家庭裁判所で調停委員の仲介のもとで離婚するかどうか及び離婚条件について話し合って合意して離婚を成立させる離婚の方法のことをいいます。
離婚調停では、調停委員が離婚に合意しない方を離婚に合意させようと必死に検討してくれることもあり、全体の半数近く(離婚調停中に協議離婚が成立した場合も含む)で離婚の合意が成立しており、離婚調停に弁護士が関与している場合にはさらに離婚合意の成立率は高まります。
離婚調停を申し立てて家庭裁判所で離婚問題の話し合いを行なってもなお配偶者が離婚に合意しなかったり離婚条件について折り合いが付かなかった場合には、離婚するために残された手段は離婚裁判を提起する方法のみです。
離婚裁判では、裁判所が法定離婚原因の有無を審理し、法定離婚原因が存在すると判断されれば離婚判決が出され裁判離婚が成立し、法定離婚原因が存在しないと判断されれば棄却判決(離婚を認めない判決)が出されることとなります。
法定離婚原因は以下の5つです。
法定離婚原因(民法770条1項)
①〜④に定められている法定離婚原因が存在していない場合は、⑤「婚姻を継続し難い重大な事由」の有無が主な争点となり、その存在が認められれば離婚判決が出されることになります。
配偶者からモラハラや暴力(DV)の被害を受けていた場合や、配偶者が子どもを虐待していた場合には、⑤「婚姻を継続に難い重大な事由」が存在するとされ、離婚判決が出される可能性が十分にあります。
また、「婚姻を継続し難い重大な事由」の存否の争いでは別居期間がどの程度であるのかが極めて重要となります。
そして、一般的には、同居中である場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」の存在が認められず、離婚判決は出されにくいとの傾向があります。
他方、別居期間が概ね2年半以上であれば、他にこれといった事情が存在しなかったとしても「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在するとされて離婚判決が出される可能性が高まっていき、別居期間が5年以上であれば離婚判決が出される可能性が相当高くなります。
ただし、有責配偶者(夫婦の婚姻関係の破綻に主な責任を負う配偶者)からの離婚請求は、裁判所は原則として認めません。
そして、①の「不貞」をした配偶者は、有責配偶者に該当する可能性があります。
あなたが①の「不貞」をしていた場合など有責配偶者に該当する可能性がある場合には、後述するように、離婚までの進め方に注意点や離婚するためのポイントがあります。
浮気・不倫をしたら離婚できないとか、有責配偶者は離婚できないなどと言われることがありますが、そんなことは全くありません。
浮気・不倫をした方の配偶者から離婚を切り出した場合であったとしても、離婚が成立する形で離婚問題が解決することは特に珍しいことではなく、よくある離婚の形の一つです。
ただし、浮気・不倫をしていた場合には、離婚までの進め方に注意点や離婚するためのポイントがあります。

「不貞」とは配偶者以外の異性と性交渉又はその類似行為をすることをいい、性交渉とは男性器の女性器への挿入行為をいいます。
そして、離婚裁判では、その「不貞」が存在したかどうかを「不貞」の存在を主張する方の配偶者が証拠に基づいて立証することが必要となります。
そのため、好きな人ができただけである場合や、その好きな人とプラトニック不倫(配偶者がいる者が配偶者以外の異性と肉体関係の伴わない恋仲を貫いている場合)の関係であったに過ぎない場合は、「不貞」はありません。
その場合は、有責配偶者とされない可能性が十分にあります。
「不貞」の存否について夫婦間で争いが生じている場合には、最終的には裁判所が「不貞」の有無を決めることとなります。
その際、裁判所は、肉体関係(男性器の女性器への挿入行為)の存在自体を直接証明する証拠が存在していなかったとしても、肉体関係が存在していた可能性が高いと考えられる状況が存在していたことが証拠上明らかとなれば、肉体関係が存在していたと認定します。
例えば、以下のような証拠が存在している場合には、本当に肉体関係が存在していなかったとしても、裁判所に肉体関係が存在していた(「不貞」があった)と認定されてしまう可能性が高いです。
・ラブホテルに出入りしていることを証明する写真など
・2人きりで宿泊を伴う旅行に出かけたことを証明する写真や旅館の領収書など
・いずれかの自宅に長時間滞在・宿泊したことを証明する写真など
・同棲していることを証明する写真など
・肉体関係が存在している男女間のやり取りとしか思えないようなLINE・メール・SNSでのやり取りの証拠
・配偶者に対して肉体関係が存在していたことを認めたように見える謝罪文などの証拠
このような証拠が存在していた場合には、本当に肉体関係が存在していなかったとしても、裁判所に「不貞」があったこととされてしまい、有責配偶者であるとされてしまうリスクがあります。

有責配偶者であるかどうかは、不倫をしていたかどうかだけで決まるような単純な問題ではありません。
不倫をしていたとしても、離婚裁判で有責配偶者該当性を争った結果、判決において有責配偶者ではないとされる場合もあります。
なぜならば、有責配偶者とは夫婦の婚姻関係の破綻に主な責任を負う配偶者をいうのであって、不倫をした配偶者をいうものではないからです。
つまり、仮に配偶者以外の異性と不倫の関係(肉体関係を伴う関係)にあったとしても、その不倫が夫婦の婚姻関係が破綻した主な原因でないのであれば、不倫をした配偶者は有責配偶者ではありません。
例えば、不倫の開始前に既に夫婦の婚姻関係が完全に破綻していた場合には、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻したものではありませんので、不倫をした配偶者は有責配偶者ではありません。
また、不倫の開始前に夫婦の婚姻関係が破綻していたとまでは言えなかったとしても、夫婦の婚姻関係が相当程度悪化しており、かつ、不倫の発覚後の経緯なども相まって夫婦の婚姻関係が破綻するに至ったという場合もあります。
その場合は、不倫だけが原因で夫婦の婚姻関係が破綻したものではありませんので、有責配偶者に当たらないとされる可能性も十分にあります。
夫婦の婚姻関係が悪化する原因の例
浮気・不倫の開始前に以下のような事情が存在していた場合には、裁判所に不倫以外に夫婦の婚姻関係が破綻した原因(夫婦の婚姻関係の破綻の一因)が存在していたと判断してもらえる可能性があります。
配偶者との今までの生活を思い返して、じっくりと検討してみてください。
そして、思い当たるところがある場合は有責配偶者該当性を争える可能性がありますので、離婚問題に精通した弁護士に相談をして離婚交渉の進め方をしっかりと検討することをお勧めします。

仮に有責配偶者であったとしても、相手の配偶者が離婚に合意するのであれば、離婚は成立します。
そもそも、自分の夫(妻)が不倫をした上で離婚を切り出しているという状況は、離婚が成立すると否とを問わず、夫婦の関係性はこの上ない程に最悪の状況です。
そのような場合、多くのケースで別居が開始されています。
つまり、もう当該夫婦の関係性は完全に形骸化しており、ただ戸籍に法律婚の記載がされているだけの状況であって、日々の生活実態は離婚後の状態と全く変わらない状況です。
夫婦の状況がそのような状況に陥っているにも関わらず配偶者が離婚に合意しない主な理由は、以下の点にあることが多い印象です。
① 経済的な理由
② 経済的理由以外の理由
このうちの、「②経済的理由以外の理由」に関しては、弁護士や調停委員なども交えてじっくりと説得・交渉して、どうにか諦めてもらう他ありません。
その前提として、相手の配偶者に対して、離婚に合意しないで争い続けたとしても、夫婦の婚姻関係が完全に形骸化した状態である以上、いつか離婚が成立するその日まで問題の解決が先送りになるだけであり、いずれにしても生活実態は離婚後の状態と変わらない状況が続くだけであるということをしっかりと理解してもらうことが重要でしょう。
他方、離婚に合意しない本質的な理由が「①経済的な理由」にある場合であれば、離婚条件(特に経済的な離婚条件)の話し合いの中で、こちらが合意可能な離婚条件と、相手の配偶者が合意可能な離婚条件について話し合いを進め、その合意点を探っていくとの交渉が可能な場合が多いです。
離婚の合意の成立に向けて様々な工夫をしつつ慎重に離婚交渉・話し合いを進めていけば、離婚調停の段階までで離婚の合意が成立する可能性は十分にあります。
慰謝料の相場金額
相手の配偶者との間で離婚条件に関して話し合いをする際には、相手の配偶者から慰謝料請求を受けることが多いでしょう。
その際の慰謝料の相場金額(浮気・不倫が原因で離婚に至った場合に裁判所が認めている慰謝料の金額)は 概ね150万円〜300万円程度であり、当事者間で話し合って合意に至る場合もその相場金額の水準で合意が成立することが多いです。
ただし、不倫の慰謝料の金額は個別具体的な増減事由により変動するものであり、上記相場金額以下の金額が認められているケースや、上記相場金額以上の金額が認められているケースも数多く存在しています。
有責配偶者であったとしても100%絶対に離婚判決を獲得することができないわけではなく、以下の例外要件が満たされる場合には離婚判決を獲得することができます。
有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件
裁判所は、①の別居期間の要件が満たされるかどうかについて夫婦間の様々な事情を総合的に考慮して判断しており、6年〜10年程度の別居期間がなければ離婚を認めないことが多いです。
ただし、不倫に至る前の夫婦の関係性の状況や、不倫発覚後に配偶者からされた酷いことなどの状況次第では、かなり短期間の別居期間で離婚が認められている場合もあります。
裁判所は、②の未成熟子要件に関しては、一般的には高校を卒業する程度の年齢までは「未成熟の子」とすることが多いです。
ただし、具体的事情(特に離婚しても子の福祉が特段害されることがない等の事情)によっては、小学校入学前の子どもが居たとしても離婚が認められている場合もあります。
裁判所は、③の苛酷要件に関しては、①の別居期間の要件と②の未成熟子要件が満たされているにもかかわらず、③の苛酷要件のみが満たされていないという理由で離婚を認めないことはほどんどありません。
裁判所は、③の苛酷要件については限定的かつ極めて柔軟に考えており、たとえ相手の配偶者が無職・低収入であったとしても、離婚に伴う経済的給付(財産分与や慰謝料など)として相手に支払うこととなる金員が高額である場合や、扶養的財産分与などとして一定の金員を支払うこととすることにより、③の要件が満たされたと判断することが通常です。
一昔前と比べて、有責配偶者からの離婚請求が認められる範囲は格段に広がっています。
中にはほんの数年程度の別居期間で有責配偶者からの離婚請求を認めた裁判例も出現しており、いわゆる担当する裁判官次第では相当広い範囲で有責配偶者からの離婚請求が認められるようになってきています。
離婚の争いは、お金の貸し借りや単純な慰謝料請求を巡る争いとは性質が全く異なり、離婚という身分関係の変動を伴うものであり、人生に与える影響が極めて大きな争いです。
そのため、裁判所が出した判決により無理やり当事者に結論が押し付けられるという形ではなく、当事者である夫婦が互いに歩み寄って譲歩して合意することによって争いを終結させることができればそれに越したことはありません。
裁判所もそのように考えており、離婚裁判を担当する裁判官は、離婚裁判の手続の中で、当事者双方に対して何度も「離婚すること」と「離婚条件」について話し合って合意することで争いを解決できないかどうかを確認・打診してくることが通常です。
このことは有責配偶者からの離婚請求の場合でも、更には判決で離婚が認められなさそうな状況であったとしても変わらず、裁判所は、当事者双方に対して、和解離婚の成立に向けた検討を促すことが多いです。
その背景には、仮に離婚請求を棄却する判決(離婚を認めない判決)を出したとしても、夫婦間の離婚を巡る争いが今後も継続するだけであって、何らの紛争解決にはなっていないという点にもあると思われます。
その流れで当事者である夫婦間に「離婚すること」と「離婚条件」についての合意が成立した場合には、離婚裁判の手続きは判決に至る前に和解離婚が成立することによって終了します。
和解離婚であれば、有責配偶者からの離婚請求であったとしても、離婚が成立します。
和解離婚は判決に至る前に離婚が成立する最後の機会であり、ここで離婚の合意が成立することも多いです。
なお、離婚裁判では、実は判決で離婚が成立する件数よりも和解離婚にて離婚が成立する件数の方が多いです。
この裁判例は、裁判所が有責配偶者である夫からの離婚請求を認めた裁判例です。
夫婦の同居期間が約22年に及ぶ一方で、別居期間は約6年と比較的短期間であったものの、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を認めました。
なお、夫婦の間には長男と二男が存在していましたが、判決当時にはいずれも成人していました。
妻は結婚後、日本語学校の教師として勤務していましたが、夫婦の会話は少なく必ずしも円満とはいえませんでした。
また、妻が外国人男性と親しく交流するようになり、夫は妻がその男性と一緒に写っている写真を見たり、その男性の妻から連絡を受けたことをきっかけに、妻の不貞を疑うようになりました。
その後しばらくして妻から謝罪があったものの、夫婦関係は冷え込み、夫は妻との生活に苦痛を感じる中、料亭で出会ったアルバイトの女性と不倫関係になって、自宅を出て別居に踏み切りました。
夫は別居から1年経過した頃より不倫相手の女性と同棲生活を開始しました。
他方、夫は、別居後も、当初は給与口座を妻に管理させ、その後は毎月妻に生活費を送金するとともに、子供達の学費や、妻が居住する住宅のローンの支払いを継続していました。
裁判所は、別居後既に6年を超えているところ、その間夫婦関係の改善は全くみられないこと、夫の「離婚意思は極めて強固であることが明らか」であることから、「婚姻関係は完全に破綻し、今後話合い等によってこれを修復していくことは期待できない」と判断しました。
また、裁判所は、妻の不貞行為は証拠不足で認定されなかったものの、夫が妻について「外国人男性と親密な関係にあるのではないかとの疑念を抱いたことは無理からぬこと」であると指摘した上、妻と外国人男性との交遊関係が「夫婦関係の悪化を促進させる要因となったものと認められる」と判断しました。
裁判所は、夫は「有責配偶者であると認められる」と判断しました。
別居期間が「平成八年三月から既に六年以上経過している」こと、「夫婦はもともと会話の少ない意思の疎通が不十分な夫婦」であったこと、妻と外国人男性との交遊は夫の側からみて「疑念を抱かせるもの」であったことから、別居前から既に「夫婦間の溝が大きく広がっていた」ことを指摘しました。
また、夫婦間に「未成熟子がいない」ことを指摘しました。
さらに、妻が外国人講師として勤務し「相当の収入を得ている」ことに加えて、夫は離婚に伴う給付として妻が現在居住する自宅を妻に譲り渡し、住宅ローンの残債も完済するまで支払い続ける意向を示していました。
裁判所は、これらの事情から、有責配偶者である夫からの離婚請求につき、「その請求が信義誠実の原則に反するとはいえない」と結論付けました。
このように、裁判所は、夫を有責配偶者であると認定しながらも、夫からの離婚請求を認めました。
この裁判例は、裁判所が有責配偶者である夫からの離婚請求を認めた裁判例です。
夫婦の同居期間は約6年6か月に及ぶ一方、別居期間はわずか約2年4か月に過ぎませんでしたが、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を認めました。
なお、夫婦の間には当時7歳の未成熟子である長男が存在していました。
夫は勤務先の研修で知り合った女性と親密になり、平成12年10月頃に妻に「好きな人がいる」と告げて離婚を求めました。
それ以降、夫婦の間にはほとんど会話がなくなり、妻は夫に極めて冷淡になり、「同じ空気を吸うのも嫌だ」と言い、夫のネクタイやパソコンのマウスを切断する、夫が使用した後すぐトイレや蛇口を掃除する、夫が帰宅すると就寝していても起床して夫が歩いたり触れたりした箇所を掃除するようになりました。
夫は、このような生活に耐えられず自宅を出て別居に踏み切り、その後現在まで約2年4か月間別居が続いていました。
なお、別居後の夫と長男との交流は、妻の意向で途絶えた状況でした。
別居後、夫は、妻に対して、毎月8万円の生活費の送金に加えて、妻が居住する官舎の家賃や光熱費なども負担していました。
また、妻も夫と一緒に暮らしたいという意向はありませんでしたが、子宮内膜症の持病のために働いて収入を得ることが難しかったため、将来の経済的不安から夫の離婚要請を拒み続けていました。
裁判所は、夫は妻に対する「情愛を全く喪失」し、「再度同居して生活する意思はなく、離婚を強く希望」している状況であると指摘し、他方、妻においても、妻が離婚を拒絶している理由は「法律的な婚姻関係を継続すれば一応の経済的安定を維持できるから」であって、夫への情愛や同居意思はないと認められると指摘しました。
そして、そうしたことから、「将来、婚姻関係を修復し、正常な夫婦として共同生活を営むことはできないといえる」と判断しました。
その上、「別居生活は約2年4か月経過」していることや、その間夫と長男とさえ会っておらず、「家族としての交流はないこと」もを併せ考慮すし、「婚姻関係は既に破綻している」と判断しました。
裁判所は、夫は、遅くとも平成12年7月ころから、女性と「性的交渉を持った親密な仲であったと推認される」し、「これが婚姻関係破綻の原因となった」と判断し、夫は有責配偶者であると認定しました。
他方において、裁判所は、妻の生活態度について、「かなり極端な清潔好きの傾向があり、そのやや独善的な性格」から、これを夫に「ことごとく強要した」ことを認定しました。
そして、「夫婦として生活することは、生育環境の違い等から生活習慣が異なる者同士が共同生活を営むことを意味するから、夫婦は、生活習慣について、互いに相手の意見を聞き少しずつ譲歩して円満な夫婦関係を維持すべき」と述べ、そのような視点からすれば、妻の「生活態度には問題があった」とし、夫が妻との「同居生活に苦痛を覚え、これに辟易したのも無理からぬこと」であるとし、妻にも「婚姻関係破綻について一端の責任がある」と判断しました。
裁判所は、夫婦が「互いに夫婦としての情愛を全く喪失しており、既に別居生活は約2年4か月経過し、その間家族としての交流もなく、将来正常な夫婦として生活できる見込みもない」ことや、妻の両親は健在であり、妻は「経済的にも比較的余裕がある」ことなどの点を総合勘案すると、夫が不倫したことや妻が子宮内膜症に罹患しているために就職して収入を得ることが困難であることを考慮しても、夫からの離婚請求を「信義則に反するものとして排斥するのは相当でない」と結論付けました。
また、裁判所は、妻は離婚によって精神的苦痛や経済的不利益を被ることを認めつつ、「その補償は別途解決されるべきものであり、この点から前記結論を覆すことはできない」とも述べています。
このように、裁判所は、夫を有責配偶者であると認定しながらも、夫からの離婚請求を認めました。
この裁判例は、裁判所が有責配偶者である妻からの離婚請求を認めた裁判例です。
夫婦の同居期間は約6年11か月であった一方、別居期間はわずか1年半余りに過ぎませんでしたが、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を認めました。
なお、妻はフランス国籍、夫は日本国籍でした。
また、夫婦の間には当時6歳の長男と当時4歳の長女という未成熟子が存在していました。
離婚問題に関しては、元々夫が妻に言うことを聞かせるために切り出したものでした。
夫は、離婚を切り出すのみならず、妻に言うことを聞かせようとして妻の「携帯電話やメールを使えないようにしたり、クレジットカードをキャンセルしたり」しました。
そのことで、妻は夫に対する「信頼を失い、夫婦としての亀裂が急速に拡大」していきました。
その後、妻はフランス人男性と交際するようになり、夫との離婚を決心し、夫に対して「離婚してほしい」と告げ、それに対して夫は「考えさせてほしい」と答えたものの、妻は離婚を切り出した当月中に子供達を連れて自宅を出て別居を開始しました。
妻は、別居した翌月には離婚調停を申し立てましたが、これを受けた夫は、妻に対して自宅に立ち入らないように申し渡し、妻に対して自宅の鍵を返却するよう要求した上、妻が残した物を全て破棄する旨を通告しました。
さらに、夫は、妻が別の男性の家から出てくるのを待ち構え、暴力沙汰となって、警察が臨場する騒ぎになりました。
その後は、夫も妻も夫婦としての関係を修復するための具体的な行動は何もとらず、むしろ夫は妻の「自宅への立ち入りを拒絶し、離婚に備えて未成年者らとの関係を維持するためのフランスのビザ取得の方法や内容等を相談する」などして、妻との「婚姻関係の破綻を前提とする行動」をとっていました。
裁判所は、上記の経緯から、「もはや2人の婚姻関係が修復される見込みはない」と判断し、夫婦の婚姻関係は「決定的に破綻していた」と認定しました。
なお、裁判所は、夫が離婚を拒否している理由は妻に対する愛情に基づくものではなく、離婚が成立して妻が子供達をフランスに連れて帰ってしまうのではないかと恐れてのことであり、妻が申し立てた離婚調停においても、夫が子供達の親権を取得できれば、妻との離婚自体には応じていたのではないかと推測されると指摘しています。
裁判所は、妻が不倫関係に至る以前には「婚姻関係が修復される可能性が残っていたことは明らか」であり、「婚姻関係はギクシャクしていたものの、亀裂が決定的というほどではなかった」と認定しました。
そのうえで、妻がフランス人男性と交際し、さらに別の男性とも関係を持ち、夫に離婚を求めた経緯を踏まえ、「婚姻関係が決定的に破綻したのは」主に妻が「不貞行為に及んだためである」と判断しました。
このため、裁判所は、妻は「夫以外の男性と交際しており、そのために」夫との「離婚を求めているものであって、いわゆる有責配偶者に該当する」と結論付けました。
裁判所は、「有責配偶者からの離婚請求が否定されてきた実質的な理由の一つには、一家の収入を支えている夫が、妻以外の女性と不倫や不貞の関係に及んで別居状態となり、そのような身勝手な夫からの離婚請求をそのまま認めてしまうことは、残された妻子が安定的な収入を断たれて経済的に不安定な状態に追い込まれてしまい、著しく社会正義に反する結果となるため、そのような事態を回避するという目的があったものと解される」とした上、「仮に、形式的には有責配偶者からの離婚請求であっても、実質的にそのような著しく社会正義に反するような結果がもたらされる場合でなければ、その離婚請求をどうしても否定しなければならないものではない」との判断枠組みを示しました。
その上、裁判所は、最初に離婚を切り出したのは夫であること、夫が妻に「言うことを聞かせようとして」妻の「携帯電話やメールやクレジットカードを使えなくする」などの実力行使に及んでいたことを指摘しました。
これらの事情から、妻が夫との婚姻関係を継続することはできないと考えるに至ったことには相応の理由があり、不倫に至ったことについても夫に「相応の原因がある」というべきであり、夫にも「婚姻関係が破綻した責任の一端」があると判断しました。
次に、裁判所は、子供達の養育状況に関して、妻による「養育監護の状況等に特に問題もない」ことを考慮し、妻からの離婚請求を認めたとしても、「未成年者の福祉が殊更害されるものとは認め難い」と判断しました。
さらに夫自身もかつて妻との離婚を望んだ経緯があるだけでなく、夫には約961万円の年収があるため、「本件離婚請求を認めたとしても、精神的・社会的・経済的に著しく不利益な状態に立ち至るわけでもない」と判断しました。
そして、裁判所は、妻が求めている離婚請求は、「社会正義に照らして到底許容することができないというものではなく、夫婦としての信義則に反するものではないというべきである」と結論付けました。
このように、裁判所は、妻を有責配偶者であると認定しながらも、妻からの離婚請求を認めました。
この裁判例は、裁判所が有責配偶者である夫からの離婚請求を認めた裁判例です。
夫婦の同居期間は約17年(婚姻期間は約18年半)であった一方、別居期間はわずか約1年6か月に過ぎませんでしたが、裁判所は有責配偶者からの離婚請求を認めました。
なお、夫婦の間には、当時17歳の長男と当時15歳の長女が存在していました。
妻が夫に秘密で「多額の借金」をし、夫がその返済を余儀なくされたことで、夫は妻への不信感を抱き始めました。
その後も妻の「杜撰な家計管理」で家計が苦しくなり、再び借金問題が起こったため、夫の不信感はいっそう増大し、夫婦の口論も増えました。
さらに、夫が函館へ単身赴任する直前に妻から性交渉を拒否された上、「そんなにエッチがしたいなら,風俗店にでも行ったら?」と言われ、夫の不満は一層募っていました。
そのような中、夫は不倫相手の女性と出会い、当該女性に好意を寄せるようになりました。
それでも夫は夫婦関係の修復を図ろうと考え、妻と東京旅行に行きましたが、旅行中に妻から逆に不満をぶつけられ、関係を修復することはできませんでした。
その後、夫婦の性生活が途絶え、欲求不満の末に夫は好意を寄せていた女性と肉体関係を持つようになりました。
それでも夫は一度は離婚を思いとどまりましたが、妻との同居を再開した直後に大きな口論となり、妻が離婚届を用意して夫に対して署名押印を要求するする事態が発生しました。
これをきっかけに夫は妻との離婚を現実的に考えるようになり、二度目の函館単身赴任を機に不倫相手の女性との交際を再開しました。
ただし、その後も夫は、妻と大阪旅行に行ったり、普通の夫婦のようなメールのやり取りを続けたりしていました。
その後、妻が函館を訪ねた際に、夫は妻に不倫相手の女性の存在や彼女との同居を打ち明けました。
これ以降、夫婦のメールには口論のような内容が増え、妻は夫からの電話にも出なくなりました。
夫婦間の対立はさらに深まり、妻が自宅の鍵を取り替えて夫が自宅に戻ることを不可能にし、メールでの言い争いも激化していき、最終的には「メールでのやりとりもなくなった」状態となりました。
裁判所は、夫が不倫相手の女性と関係を持った時点では「到底、本件婚姻関係が破綻するに至っていたものということはできない」と判断しました。
そして、裁判所は、結論としては、夫が妻に対して不倫相手の女性との同居を打ち明けた後、夫婦間の対立が深まり、妻が自宅の鍵を取り替えるなどして妻の夫に対する「恐怖」と「嫌悪」の感情が表面化した時点で、夫婦の婚姻関係は「完全に破綻するに至った」と判断しました。
裁判所は、本件婚姻関係の最も大きくかつ直接的な破綻原因は、夫の不貞行為にあるというべきであると判断しました。
ただし、裁判所は、妻にも「杜撰な家計の管理」、「安易で多額な」夫名義での借金の繰り返し、夫との性交渉を拒否した上で夫に対して「そんなにエッチがしたいなら,風俗店にでも行ったら?」などといった「配慮を欠いた言動に及んだこと」などからして、「本件婚姻関係の破綻に至る経緯において,一定程度の有責性がある」と判断した上、本件婚姻関係の破綻に関する夫の有責の度合いの高さは、妻の有責の度合いの低さとの関係で「相対的なものであるということができる」と判断しました。
裁判所は、「有責性の程度に関する評価」は「相対的なものである」との理解のもとで、「別居期間は比較的短期間ではある」としつつ、別居に至った直接のきっかけは、妻が、「何らの予告なく自宅の鍵を取り替えて」夫が「自宅に戻ることを不可能にする実力行使に出たことが原因」であり、妻において、積極的に夫との同居を拒むに至ったものというべきであると判断しました。
また、子供達に関しては、「未成熟子である」としつつ、「比較的年長者である」と指摘しました。
さらに、離婚により妻は「一定程度経済的に余裕のない状況となることも推認することができる」としつつ、夫が妻の作った借金の返済を未だに続けていること、妻が夫から「収入や本件借入の返済額に比して過分ともいうべき婚姻費用の支払を1年以上にわたって受け続けてきている」こと、客観的に見ると妻において「未だ家計の切り詰めを十分にしたとはいえない状況であって、今後、相当程度の支出を圧縮することも可能である」こと、子供達の年齢からして妻において「稼働制限をしなければならないような状況にはない」ことなどを総合考慮した上、夫からの「離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するということのできるほどの特段の事情を認めるには至らない」と判断しました。
このように、裁判所は、夫を有責配偶者であると認定しながらも、夫からの離婚請求を認めました。
依頼者である夫(50代)は不貞行為が原因で妻との離婚を希望していました。2年前に自ら離婚調停を申し立てましたが不成立に終わり、妻は夫に恋人がいることへの怒りから離婚に応じない状況でした。
当事務所の弁護士が妻側代理人に離婚条件を提示し、粘り強く交渉しました。妻側は強硬な条件を突きつけてきましたが、依頼者に不利な条件には一切応じない方針で交渉を継続しました。依頼者自身は裁判などの手続よりも話し合いで早期解決したいと強く希望しており、弁護士も可能な限り協議でまとめる方針で対応しました。
結果
その結果、長らく進展のなかった離婚問題が、当事務所に依頼後わずか数か月という短期間で協議離婚の合意に至りました。有責配偶者からの離婚請求ながら、依頼者に不利な条件を避けつつ希望どおりの離婚成立を実現できました。
依頼者である夫(40代)は職場の女性と不倫関係となり、それが妻に発覚して別居状態になりました。妻は激怒して離婚を拒否し続け、慰謝料請求や高額な婚姻費用を求める姿勢を示していました。夫としては反省の気持ちはあるものの、長年妻からの暴言もあり夫婦関係の修復は不可能と考え、不貞相手との再婚も望んでいたため早期離婚を希望していました。
妻が離婚自体に応じないため、まず弁護士が内容証明郵便で強めの離婚要請を書面送付しました。しかし妻側は取り合わなかったため、速やかに家庭裁判所へ離婚調停を申立てました。調停の場では、依頼者である夫の妻に対する謝罪と現在の率直な気持ちを伝え、妻の感情に寄り添いながら説得を繰り返しました。また、妻側代理人から相場を大きく超える婚姻費用を請求されましたが、調停期日や期日間の交渉を通じて粘り強く交渉し、適正な金額に調整しました。
結果
有責配偶者からの離婚請求という不利な立場ではありましたが、調停申立から約8か月という比較的短期間で面会交流や金銭条件も依頼者の希望を踏まえた内容で離婚合意を成立させることができました。妻の強い拒絶を粘り強い説得で覆し、無事に離婚成立に結びつけることができました。
夫(30代)は職場の女性と不倫をしてしまったものの、それ以前から経済的問題や子供の教育方針に関して夫婦間で分かり合えず、諍いが絶えなかったことや、不倫発覚後に妻からの過度な監視や厳しい言動が長期間続いたことで、心身ともに疲弊していました。夫は離婚を望みましたが、妻は離婚を強く拒否し、調停を申し立てたものの不成立となり、最終的に裁判で決着を図ることになりました。
裁判では、妻側が「夫の不倫こそが婚姻破綻の原因」と主張しましたが、こちらは結婚当初から別居に至るまでの経緯を丁寧に立証し、夫の不倫のみが夫婦の婚姻関係が破綻した原因ではないことを明らかにしました。
結果
裁判所は「不倫が唯一の破綻原因ではない」と判断し、夫を有責配偶者とみなさず判決で離婚請求を認めました。
この事例は、不倫があっても一律に裁判離婚が認められないわけではなく、夫婦関係の実態次第で裁判所は離婚判決を出すことを示す典型例といえます。
依頼者である妻(30代)は夫との価値観の相違や性的な不調和に悩む中、職場の男性に思いを寄せるようになり、その男性と不倫関係となりました。その不倫が夫に発覚すると夫は激怒し、依頼者である妻を家から追い出して連絡を完全に無視するような状態になりました。妻は夫に離婚を切り出しましたが、一切取り合ってもらえず、自分からの離婚請求は難航する状況でした。
当事務所の弁護士が夫に対して内容証明郵便で離婚を強く求める書面を送りましたが、夫は非常に強い拒絶をしていました。そのため、弁護士は、感情的になっている夫の気持ちをまず受け止めつつ、妻側の事情や離婚への強い意思を根気強く伝えていきました。弁護士が間に入ることで冷静な話し合いが可能となり、夫も次第に態度を軟化させていきました。
結果
約4か月間の交渉期間を経て、当初離婚に応じなかった夫が離婚に合意し、協議離婚が成立しました。有責配偶者からの離婚請求という厳しい状況ながら、早期に夫の理解と同意を得ることができた成功事例です。依頼者である妻は新たな人生を早めにスタートでき、夫婦双方にとっても長引く紛争を避けられた形となりました。
依頼者である妻(40代)はマッチングアプリを通じて知り合った男性と不貞行為に及んでしまった有責配偶者でした。夫から離婚調停を申し立てられましたが、親権や財産分与の話し合いがまとまらず調停不成立となり、離婚問題は行き詰まっていました。依頼者には子どもの学費や医療費など経済的不安もあり、夫側から提示される条件ではとても離婚に応じられない状況でした。しかしながら、有責配偶者であることは争いようがない状態であったこともあり、婚姻費用も十分にもらうことができず、離婚条件としても裁判になれば妻が希望する条件を勝ち取ることは難しい見通しでした。
当事務所はまず夫婦の財産状況を把握し、可能な限り話し合いで離婚条件をまとめる方針をとりました。夫が財産を隠している疑いがあり、依頼者名義の特有財産も証拠不十分で裁判では認められない恐れがあったため、まずは夫側に誠実な開示と交渉を促しました。並行して依頼者から改めて離婚調停を申し立て、調停の場で粘り強く交渉を重ねました。幼いお子さんがいるケースでは面会交流の条件も重要となるため、調停では子どもの福祉を最優先に妻側の希望を丁寧に主張し、夫にも受け入れやすい妥協案を模索しました。
結果
調停申立から約10か月で離婚が成立し、依頼者である妻にとって相場を上回る有利な条件での合意となりました。具体的には、依頼者が夫名義だった自宅不動産の所有権を取得し、未払いだった婚姻費用も全額受け取ることができました。さらに夫が離婚後も子どもの学費・医療費を負担することを約束させるなど、経済的にも非常に有利な内容で解決しました。有責配偶者であっても適切な法的サポートと交渉次第で非常に有利な離婚条件を勝ち取れた好例と言えるでしょう。
依頼者である妻(40代)は、結婚当初から夫によるDVや暴言・精神的虐待に長年苦しめられていました。妻は離婚を望みつつも子どものために我慢を重ねてきましたが、心身ともに限界を迎え、知人の男性に悩みを相談するうちに互いに思いが通じて不倫関係に至ってしまいました。妻の不倫が発覚すると夫は激怒し、妻を家から追い出しました。妻は夫への恐怖から夫のことを考えるだけで動悸を感じる状況にあり、離婚裁判で長期間争うのではなく、可能な限り早期に離婚したいと強くのぞみ、裁判前に調停での解決を希望していました。しかし、夫は「裏切ったお前が悪い」と妻の不貞を理由に離婚を頑なに拒否し続けました。
妻自身が夫と直接顔を合わせることは到底困難な状況であり、また、夫からの激しい拒否が予想されたため、当事務所の弁護士が妻の代理人として直ちに家庭裁判所へ離婚調停を申立て、法的な手続きに踏み出しました。その上、事前に裁判所へ事情を説明し、妻と夫の出頭時間をズラしたり、別の階層の待合室で待機できるよう依頼し、妻は夫と一度も顔を合わせることなく安全に調停手続きを進められるよう配慮しました。調停では、夫は当初、妻の不貞のみを強調して離婚を拒んでいました。しかし代理人を通じて、夫婦が結婚当初から別居に至るまでの経緯(夫による長年のDVや暴言・精神的虐待が繰り返され、家庭が既に崩壊状態にあったことなど)を丁寧に説明し、夫婦関係の破綻原因が妻の不貞だけではないことを粘り強く説明し、離婚裁判になれば夫のDVの証拠を詳細に提出し、相応の慰謝料を請求することとなる点も示した結果、夫も態度を軟化させ、最終的に調停で離婚合意に至りました。
【結果】
夫は妻との離婚を強く拒否していましたが、ご依頼から約8か月で、離婚調停が成立しました。これにより依頼者である妻は正式に離婚が成立し、長年耐えてきたDVから解放されて新たな人生の一歩を踏み出すことができました。この事例は、たとえ依頼者自身に不貞の事実があった場合でも、夫婦関係破綻の経緯や実態次第では調停で離婚合意を得られる可能性があることを示す典型例です。

もうしっかりと愛せそうもない配偶者(本当は離婚したい配偶者)と生涯夫婦であり続けるとの人生の選択は、「正しい」選択なのでしょうか。
結婚の「正しいルール」に基づいて考えると、それは「正しい」選択です。
それに対して、好きな人と交際(浮気・不倫)することは結婚の「正しいルール」に違反する行為であり、配偶者に多大な被害を被らせ、慰謝料を支払う責任を負う可能性のある行為でもあります。
それに加えて、望まぬ離婚までしなければならないとすれば、配偶者はまさに踏んだり蹴ったりの状況でしょう。
結婚というシステムは、配偶者以外の異性のことを決して好きになることなく、また万一好きな人ができたとしてもその恋心を押し殺して、配偶者との関係を生涯に渡り円満に維持・継続するための努力を続けることを期待しています。
配偶者の人生や配偶者の幸福のため、そして配偶者の期待するあなたであり続けるために、あなたは好きな人への恋心を封印して忘れる努力をするとの選択をしなければなりませんし、まして「好きな人ができた」との理由で配偶者が望まない離婚を選択してはなりません。
しかし、常に「正しい」選択をし続けるだけが人生ではないでしょう。
実際、「好きな人ができた」との理由で配偶者との離婚を選択する人は昔から相当数存在しています。
そして、「好きな人ができた」という理由で始まった離婚問題や、浮気・不倫をしていた有責配偶者からの離婚請求により始まった離婚問題であったとしても、離婚が成立する形で解決することは特に珍しいことではなく、よくある離婚の形の一つです。

「好きな人ができた」との理由で配偶者との離婚を検討している人の多くは、配偶者と結婚する際には、将来自分が配偶者以外の異性のことを本気で好きになり、配偶者との離婚を検討することになるなどとは思ってもみなかったはずです。
浮気・不倫など実感の伴わない他人事に過ぎず、自分の人生とは無縁の別の世界の出来事であったはずです。
しかしながら、人生では、許されないことだとは重々承知しつつもどうしようもなく本気で好きになってしまい、その恋心が抑圧できない程に膨れ上がり、結婚の「正しいルール」を乗り越えて共に歩む人生を望んでしまうような異性と出会うことがあるのでしょう。
自分の人生を変えてしまうような異性との出会いが良かったのか悪かったのかは、今決まる問題ではありませんし、人生の最後まで分からないかもしれません。
どこに自分の本当の幸せがあり、どのような道を選択するべきかという問いに普遍的な正解はなく、本当のところは選択した道を進んでみなければ分からないものです。
それでいて人生は一度きりであり、かつ、進んできた道を後戻りすることはできず常に前に進み続けるしかありません。
後悔のない人生のためにどのような道を進むかを選択するのは、法律論ではなく、あなたの判断です。
ただ、その判断の前提の一つとして、複雑な法律問題(離婚問題・不倫慰謝料問題など)が存在しています。
レイスター法律事務所では、無料相談において、離婚に向けて進める場合の離婚の成立可能性、離婚交渉の方針や早期離婚達成のための交渉戦略、離婚が成立する場合の離婚条件(財産分与・慰謝料・養育費など)の金額の幅などの離婚問題全般の見通しなどについて、具体的なアドバイスを行なっています。
配偶者との離婚問題でお悩みの際は、是非、こちらからお気軽にご連絡ください。
テーマ:

やまざき よしひろ
山﨑 慶寛
キーワード検索
SERVICE CATEGORY
ARCHIVE
TAG
人気の記事