双極性障害(躁うつ病)を抱える配偶者との生活は、相手の予測不能な気分の波に翻弄され、支える側が心身ともに疲弊してしまうケースが少なくありません。こうした状況が続くことで、離婚を検討する方もいらっしゃいます。
このコラムでは、配偶者が精神疾患にかかった場合の結婚生活に与える影響や、その結果として離婚を検討することになった場合の進め方や成立条件、注意すべきポイントを解説します。
2026.07.10
離婚原因

双極性障害(躁うつ病)を抱える配偶者との生活は、相手の予測不能な気分の波に翻弄され、支える側が心身ともに疲弊してしまうケースが少なくありません。こうした状況が続くことで、離婚を検討する方もいらっしゃいます。
このコラムでは、配偶者が精神疾患にかかった場合の結婚生活に与える影響や、その結果として離婚を検討することになった場合の進め方や成立条件、注意すべきポイントを解説します。
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双極性障害とは、気分が異常に高揚する「躁状態」と、激しく落ち込む「うつ状態」を繰り返す脳の病気です。これは、単なる性格の問題ではなく、治療が必要な精神疾患です。
双極性障害(躁うつ病)の症状が重いものになってくると、気分の浮き沈みが大きくなり、その結果として家庭生活に与える二次的な影響が深刻になるケースもあります。実際のご相談でも、多いのが下記の3つになります。
うつ状態が深刻になると自傷行為への警戒など、24時間気を休めることができません。また、躁状態では、極端な行動をとることが特徴で、外出時など気分の高まりからトラブル等を起こすケースなどに気をつける必要があります。
双極性障害(躁うつ病)の症状が深刻になると配偶者が家事や育児をできなくなるため、経済的・肉体的負担がすべて片方の肩にかかるようになってしまいます。
配偶者が双極性障害(躁うつ病)ということへの偏見を恐れ、どうしても周囲に相談できず、「自分自身だけで解決しよう」と孤立を深めてしまうケースが少なくありません。
双極性障害(躁うつ病)の配偶者との離婚でも、相手と離婚の合意ができれば協議離婚をすることができます。どうしても、夫婦だけでの話し合いが進まず協議離婚ができない場合は、家庭裁判所での調停を通じて相手と合意することで、調停離婚をすることができます。
しかし、重度の双極性障害(躁うつ病)の場合、配偶者側が離婚に対して大きな拒絶感を持ったり、意思疎通自体が困難であることも少なくありません。
そうした場合、裁判で離婚を認めてもらう方法があります。
法律(民法770条1項5号)【2026年4月1日施行後は(民法770条1項4号)】では「婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚事由があります。双極性障害(躁うつ病)そのものが直ちにこれに該当する形ではありませんが、「病気が原因で婚姻生活が破綻している(暴力、浪費、育児放棄など)」と判断された場合は、離婚が認められやすくなります。
ただし、「回復の見込みがある」と判断される軽度の神経症や、一時的な抑うつ状態だけでは、裁判で「婚姻を継続し難い重大な事由がある」と判断されて離婚を勝ち取るのは困難です。夫婦には「相互扶助義務」というものがあるため、回復の見込みがある病気の配偶者を見捨てるような形での離婚には裁判所も慎重になります。
そのため、裁判所に「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在していることを分かってもらうためには、あなたが配偶者の双極性障害との病気に対して何を行い、どのような努力を尽くしてきたのか、配偶者にされた酷い言動の数々、あなた自身の精神的な状態などといった具体的なエピソードを交えて、あなたが配偶者との離婚を決意するほどに追い詰められてきた経緯を詳細に主張していくことが重要です。
配偶者が「病気になったこと」自体に過失はないため、精神疾患を理由とした慰謝料請求は原則できません。しかし、病気が直接の原因ではない形で発生した「不貞行為」や「DV」がある場合は、それらを理由に請求可能な場合がありまです。
「双極性障害(躁うつ病)だから親権者として不適格」と自動的に決まるわけではありません。例えば、配偶者側の症状が落ち着いていれば適切な育児ができる環境があり、実家のサポートなどが厚く、子どもをしっかりと育てられるという主張があった場合などは、親権を争うことになる可能性があります。
親権を決める上で、最も重視されるのは子どもの利益であり、配偶者が双極性障害(躁うつ病)で、自分自身は大きなストレスを受けていたとしても、いままでの監護実績や子どもと過ごしてきた時間、経済状況などが考慮したうえで決定される形になります。
相手の双極性障害(躁うつ病)の症状が極めて重く、自分自身で物事の判断が十分にできない状態の場合、そのままでは離婚手続きを進めることができません。その場合は、家庭裁判所に「成年後見人」を選任してもらい、その職務として離婚の手続きを行う必要があります。
夫は双極性障害の診断を受けており、躁状態の時期には転職を繰り返すほか、衝動的な言動や浪費が見られました。
夫はうつ状態になると家事や育児がほとんどできず、妻が実質的に家庭を一人で支える状況が続いていました。
当初、夫は離婚に強く反対していましたが、調停においては、
・長期間に及ぶ別居
・夫による家事育児の放棄
・就労の不安定さによる生活基盤の動揺
・夫婦間に生じた強い不信関係
といった客観的事情を時系列で整理し、婚姻関係が既に破綻していること、修復可能性がもはや全く存在していないことを具体的に主張しました。
その結果、夫にも現状では関係の再構築が困難であることをご理解いただき、最終的には面会交流の条件を明確に定めた上で、調停離婚が成立しました。
妻は双極性障害で通院を継続しており、躁状態の際には衝動的に離婚を求めたり家出を繰り返したりするなど、家庭内の対立が深刻化していました。
また、子に対しても人格を否定するような暴言が見られ、家庭環境は不安定な状況となっていました。
別居後も感情の波により主張が変わることがあり、当事者間での協議は難航しました。夫側にも代理人が就任し、双方代理人のもとで離婚協議を進めることとなりました。
協議においては、
・警察介入を伴う家庭内トラブルの経緯
・長期間に及ぶ別居の継続
・夫婦関係の修復可能性の乏しさ
といった客観的事情を時系列で整理し、婚姻関係が既に実質的破綻に至っていることを丁寧に説明しました。
その結果、夫側も紛争を継続するのではなく、離婚を前提に具体的な条件調整を行う方向へと方針を転換しました。
その後、財産分与、養育費、面会交流の条件を整理し、最終的に協議離婚が成立しました。
裁判離婚の場合、療養費の目処が立たないなど、病気の配偶者が離婚後にまともな生活が困難な状況では、離婚が認められ難いことがあります。
実際の裁判例の中にも、離婚後に相手方配偶者の生活援助を十分に行う意思を有していることが離婚成立の決め手の一つとされている例もあります。
そのような場合は、配偶者の実家と話し合いなどを持ち引き受けてもらったり、配偶者をしっかりとサポートして「障害年金を受給できる」「生活保護の申請をする」など、離婚後の具体的な生活プランを提示することが離婚成立の鍵となります。
「双極性障害(躁うつ病)という病気そのもの」を理由とした離婚はそもそも困難です。しかし、重い症状が出た際などの日記や会話の録音などで「平穏な家庭生活が送れない」「自分自身の精神が限界である」ことを証拠として示すことが出来れば、「婚姻を継続しがたい重大な事由」として離婚が認められやすくなります。
双極性障害(躁うつ病)との離婚は、相手の病状に合わせた進め方が求められます。相手の予測不能な気分の波に巻き込まれ、誰にも相談できずに一人で悩んだり、倒れてしまう前に、まずはカウンセラーなどの専門家に相談してください。
症状の改善が見込めずに離婚という選択肢を検討する際は、お気軽にご相談下さい。
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弁護士法人レイスター法律事務所 代表弁護士
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