長年連れ添った夫婦が離婚を選ぶ「熟年離婚」。第二の人生を前向きにスタートさせるための重要な手続きが「財産分与」です。熟年離婚では結婚期間が長いため対象となる資産が多く、分割額が高額になりやすい特徴があります。
ここでは、2026年の最新情報や50代、60代の平均資産データをもとに、熟年離婚における財産分与の相場、持ち家や退職金・年金の分け方、注意すべきポイントまでを詳しく解説します。
2026.09.06
財産分与

長年連れ添った夫婦が離婚を選ぶ「熟年離婚」。第二の人生を前向きにスタートさせるための重要な手続きが「財産分与」です。熟年離婚では結婚期間が長いため対象となる資産が多く、分割額が高額になりやすい特徴があります。
ここでは、2026年の最新情報や50代、60代の平均資産データをもとに、熟年離婚における財産分与の相場、持ち家や退職金・年金の分け方、注意すべきポイントまでを詳しく解説します。
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財産分与とは、婚姻生活の中で夫婦が協力して築き上げた資産(共有財産)を、離婚時にそれぞれへ分け合う手続きのことです。貢献度に応じて原則「2分の1」ずつ分けることが基本ルールとされています。
財産分与の対象となる財産(共有財産)である「婚姻期間中に夫婦の協力によって形成された財産」は、名義がどちらか一方になっていた場合でも対象となります。一部、特有財産として財産分与の対象にならないものもあるので注意が必要です。
財産分与の対象となるものとして、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた共有財産が挙げられます。「実質的共有財産」とされ、名義がどちらのものであっても、結婚生活の中で得たものは原則として対象に含まれる形となります。
具体的には、下記のような財産がその対象となります。
・婚姻中に貯めた別名義の口座を含む預貯金
・自宅、土地、マンションなどの不動産
・株式や投資信託などの有価証券
・婚姻期間に対応する退職金
・生命保険や個人年金保険の解約返戻金
・自動車、家具、貴金属・ブランド品
一方で、夫婦の協力とは無関係に得た財産は「特有財産」と呼ばれ、分与の対象外となります。
・独身時代から持っていた預貯金や資産
・婚姻中に親や親族から相続、贈与によって取得した財産
・個人的に使用している衣服や日用品
若年層の離婚と比べ、50代・60代以降の熟年離婚における財産分与には独自の難しさや特徴があります。
50代・60代の熟年離婚になると婚姻期間が20〜30年以上に及ぶことも多いため、預貯金だけでなく不動産、保険、投資商品、退職金など多種多様な資産が蓄積されています。
資産の中で最も大きな割合を占めるのが自宅不動産です。現金のように簡単に折半できないため、評価額や「どちらが住むか」を巡って対立が生じやすくなります。近年、住宅の資産価値が高まっていることもあり、売却を行って現金等で分けるケースも増えています。
熟年離婚後の収入機会は限られるため、財産分与で獲得できる金額がその後の老後資金(生活費・医療費・住居費)に直結します。一方が不利な条件で合意してしまうと、老後破綻のリスクを抱えることになるため、非常に緻密な話し合いが求められます。
熟年離婚における財産分与の額は、「数十万円~300万円程度が平均」の一般的な離婚の相場と比べて格段に高くなる傾向があります。
※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世帯主の年齢別世帯数」等のデータから、50代・60代世帯の金融資産保有額は下記のようになります。
| 世帯年代 | 金融資産保有額(平均値) | 3,000万円以上保有世帯の割合 |
| 50代(二人以上世帯) | 約1,908万円 | 約18.8% |
| 60代(二人以上世帯) | 約2,683万円 | 約27.2% |
現在、都内および近郊の持ち家(戸建て・マンション)は地価上昇や建築費高騰の影響を受け、平均不動産価格が4,000万円〜9,000万円台のボリュームゾーンとなっています。
仮に「金融資産(平均値)」+「評価額5,000万円の自宅不動産(ローン完済済)」とし、そこに解約返戻金・退職金・自動車等を考慮して試算すると、以下のような大規模な共有財産額になります。
金融資産(約1,900万円)+ 自宅不動産(5,000万円)+ その他資産(退職金等 約1,100万円)= 共有財産総額:約8,000万円
➔ 1人あたりの分与額目安:約4,000万円
金融資産(約2,700万円)+ 自宅不動産(5,000万円)+ その他資産(退職金等 約1,300万円)= 共有財産総額:約9,000万円
➔ 1人あたりの分与額目安:約4,500万円
このように、熟年離婚では数千万円規模の財産分与が発生することも珍しくありません。専業主婦の女性などから、熟年離婚を検討しているが、金銭面が不安というご相談をよくいただきますが、実際にシミュレーションすると、安心される方が多くいらっしゃいます。

熟年離婚で高額になればなるほど、財産分与を過不足なく進めるためには、段階的なステップを踏むことが重要になります。
預貯金通帳、有価証券の口座明細、保険証券、不動産の登記簿謄本などを集め、夫婦の全資産(プラスの財産・マイナスの財産)を可視化した財産目録を作成します。
結婚前から所有していた資産や、結婚後に相続・贈与で得た財産(特有財産)を除外し、財産分与の対象金額を確定させます。
不動産は複数の不動産会社へ査定を依頼して現在価値を把握し、保険は解約返戻金相当額、退職金は基準日時点の支給見込額を算出します。
集めたデータをもとに話し合います。原則2分の1ですが、将来の住まいや生活設計に配慮した分け方を模索します。合意した内容は必ず「離婚協議書(できれば公正証書)」にまとめます。
不動産は現物分割ができないため、主に以下のいずれかの方法で分けることになります。
自宅の財産分与方法として最もトラブルが少ない形式で、自宅を第三者に売却し、売却益から諸経費(手数料等)を差し引いた残額を夫婦で折半する方法です。金額が明確になり、離婚後の腐れ縁を断ち切れるメリットがあります。
「代償分割」という方法ですが、妻または夫が自宅にそのまま住み続ける場合、自宅の評価額の半分(2分の1)に相当する現金(代償金)をもう一方へ支払います。
自宅査定額が5,000万円で妻が住み続ける場合、妻は夫へ代償金として2,500万円を支払う必要があります。妻側に相応の自己資金が求められます。
熟年離婚でも、近年はリバースモーゲージや長期ローン等で住宅ローンの残債があるケースがあります。
不動産価値から別居時のローン残高を差し引いた金額を共有財産とみなして分けます。
実質的な資産価値はゼロ(またはマイナス)と扱われ、財産分与の対象から外れるか、他のプラスの資産と相殺・調整を行うことになります。また、名義変更や連帯保証人の解除には銀行の承諾が必要となるため、ハードルが高くなります。
老後の命綱となる「退職金」と「年金」も、熟年離婚における重要な財産分与対象です。熟年離婚で退職金を分ける方法すでに支給された退職金はもちろん、会社の経営状態や勤続年数から支給される蓋然性が高い場合は「将来支給される予定の退職金」も財産分与の対象になります。
退職金全額が対象になるのではなく、「同居期間(婚姻期間)に対応する分」のみを算出・抽出して折半します。すでに受け取っている場合は預貯金として分与します。将来支給の場合は「退職時に受け取る」契約(合意)を取り交わすか、離婚時に評価額を割り引いて現金で清算します。
熟年離婚で年金を分ける方法として「年金分割」というものがあります。これは、婚姻期間中に納めた「厚生年金(公務員の共済年金含む)」の支給実績を夫婦で分割する制度です(国民年金部分は対象外)。
夫婦で合意した割合(最大50%)で厚生年金の標準報酬分を分割します。
平成19年(2007年)4月以降の専業主婦(主夫)期間について、相手の合意がなくても自動的に50%ずつ分割請求できる仕組みです。
注意点として、年金分割は「年金受給額そのものを半分にする」のではなく、「将来受け取る年金の計算基礎となる標準報酬を分け合う」手続きということが挙げられます。
資産規模が大きくなりやすい熟年離婚では、法律の専門家である弁護士のサポートを得ることで大きな差がつきます。
相手の財産が多岐に渡っていたり、結婚生活の中でもあまり把握出来ていなかった場合に、弁護士照会制度(弁護士法23条の2に基づく照会)を活用し、相手が開示しない隠し預貯金や有価証券口座を特定できます。
複雑な退職金の計算や不動産の適正価格の割り出し、株式等の資産の整理、税金面(贈与税・譲渡所得税)のリスク回避を考慮した上で交渉を進めてくれます。
熟年離婚は、長年の夫婦生活を経ての離婚となるため、どうしても直接対話が難しい場合があります。弁護士が代理人となることで冷徹かつ法的に妥当な金額を獲得できます。
当事務所で、取り扱った「熟年離婚」で財産分与が成立した事例をご紹介いたします。
依頼者は50代後半・専業主婦で婚姻期間は約30年でした。 夫から「うちには大した貯金もないし、家も古いから分与できる財産は少ない」と言われ、数百万円の提示で離婚を求められていました。
弁護士が介入し、夫の財産開示を求めるとともに各種調査を実施。その結果、以下の資産が明らかになりました。
妻が把握していなかった夫名義の株式・投資信託:約1,000万円以上
解約返戻金付きの積立型生命保険:約500万円以上
数年後に支給予定の退職金見込額(婚姻期間分):約2,000万円以上
持ち家(都内戸建て)の最新査定額:5,000万円以上
預貯金、株式、保険、退職金、不動産を合算した共有財産総額は非常に大きな額と資産されました。交渉の結果、最終的には不動産を売却して現金化し、妻側が所有していた資産と合算し、原則通り上記資産の50%の金額を財産分与の条件として離婚が成立しました。
熟年離婚を進める際は、事前に以下の重要ポイントを押さえておきましょう。
財産分与の請求には期限(除斥期間)があります。2026年4月施行の法改正により、2026年4月以降に離婚が成立した場合、請求期限が従来の「2年」から「5年」へと延長されました。期間が伸びたとはいえ、離婚後に相手が資産を消費・隠蔽してしまうリスクがあるため、原則として離婚成立前に全ての財産分与協議を完了させることが重要です。
財産分与や年金分割で得られる一時金・月額収入と、住居費・光熱費・医療費・税金などの今後の生活費の収支バランスを計算しておく必要があります。「財産文よの金額」だけに目を奪われず、老後の住まいをどう確保するかなどを綿密に設計しておくことが大切です。
浮気や不倫などの不貞行為やDV・モラハラなど、相手に離婚の原因となる行為があった場合は、財産分与とは「別枠」で慰謝料を請求することができます。財産分与の中に慰謝料を含めて一括提示してもらう「慰謝料的財産分与」の交渉も進めることが可能です。
熟年離婚における財産分与は、婚姻期間が長いぶん共有財産の種類が多く、総額も数千万円規模と高額になりがちです。自宅不動産をどう処分するか、将来の退職金や年金分割をどのように組み込むかによって、離婚後のあなたの老後生活の質は劇的に変わります。
「相手の言いなりになってしまった」「隠し財産に気づかず損をしてしまった」ということにならないよう、早い段階で財産の把握を進め、必要に応じて離婚問題に強い弁護士へ相談することをおすすめします。
レイスター法律事務所では、数多くの熟年離婚の相談をいただき解決に導いてきた実績がございます。多岐に渡る財産を整理して正当な財産分与を支援した実績が多数ありますので、お気軽にご相談ください。

執筆
LEYSTER LAW OFFICES
弁護士法人レイスター法律事務所

弁護士法人レイスター法律事務所 代表弁護士
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