【不倫慰謝料の相場】裁判で最も高額の不倫慰謝料が認められ得るパターン

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不倫慰謝料の金額が最も高額になるのは、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合です。

その中でも、未だ離婚が成立していない場合の裁判例が、最も高額の不倫慰謝料が認められる傾向があります。

この記事では、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合のうちの、未だ離婚が成立していない場合の裁判例を紹介しながら、その場合の不倫された妻・夫から不倫相手に対する慰謝料の相場金額と慰謝料の増減事由を説明します。

1.不倫で婚姻関係が破綻したが未離婚の場合が最も高額の慰謝料が認められる傾向がある

不倫で婚姻関係が破綻したが未離婚の場合が最も高額の慰謝料が認められる傾向がある

不倫とは配偶者以外の異性と性交渉又はその類似行為をすることいい、法律上は「不貞」と言います。

不倫慰謝料の金額は不倫された妻・夫が被った損害が大きいほど高額となります。

そのため、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合が、最も高額の不倫慰謝料が認められています。

不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合の不倫慰謝料請求訴訟の裁判例には、以下の2通りが存在しています。

  1. 婚姻関係が破綻しており既に離婚が成立している場合の裁判例
  2. 婚姻関係が破綻しているものの未だ離婚が成立していない場合の裁判例

ここで、①「既に離婚が成立している場合」は、不倫した配偶者に対する関係での不倫慰謝料の請求の状況によって、以下の減額事由が存在している場合が多いです。

既に離婚している場合に問題となる不倫慰謝料の減額事由

離婚の際に不倫慰謝料に関する取り決めがある場合

既に不倫慰謝料の支払いを受けている場合
→既に支払いを受けた不倫慰謝料の金額分だけ、請求できる不倫慰謝料の金額が減額になる

未だ不倫慰謝料の支払いを受けていない場合
→不倫した配偶者との間で不倫慰謝料の支払いの取り決めがあること自体が、不倫慰謝料を減額する方向に考慮される場合がある

不倫した配偶者に対して不倫慰謝料を請求しない場合

→不倫した配偶者に対して不倫慰謝料を請求しないこと自体が、不倫慰謝料の減額事由と扱われることがある

他方、②「未だ離婚が成立していない場合」であれば、このような不倫の慰謝料の減額事由は問題となる場合が少ないです。

そのため、①婚姻関係が破綻しており既に離婚が成立している場合の裁判例よりも、②婚姻関係が破綻しているものの未だ離婚が成立していない場合の裁判例の方が、一般的に認められている不倫の慰謝料の金額は高額になる傾向があります

この記事では、不倫が原因で不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合のうちの、②未だ離婚が成立していない場合の裁判例を紹介しながら、その場合の不倫された妻・夫から不倫相手に対する慰謝料の相場金額と慰謝料の増減事由を説明します。

なお、夫婦が同居を続けた場合の不倫慰謝料の相場金額に関しては、【不倫慰謝料の相場】夫婦が同居を続けた場合に裁判所が認めている金額】をご確認ください。

また、①婚姻関係が破綻しており既に離婚が成立している場合の相場金額に関しては、【【不倫慰謝料の相場】不倫が原因で離婚した場合に裁判所が認めている金額】をご確認ください。

2.不倫が原因で婚姻関係が破綻したが離婚していない場合の不倫慰謝料の金額

⑴慰謝料金額が100万円未満となったケース

(⑴-1)慰謝料30万円(東京地裁平成21年11月26日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約6年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
  2. 【減額事由】
    ・夫婦の婚姻関係が破綻した原因は、不貞開始以前から夫婦が互いに夫婦関係を維持すべく協力する姿勢が薄かったことにもある
    ・女性が夫と不貞行為に至ったのは、夫から夫婦関係が破綻している旨のもっともらしい説明を受けたことが原因であり、女性が夫の説明を信じたとしても止むを得ない事情もあった

認められた慰謝料の金額

30万円

(⑴-2)慰謝料40万円(東京地裁平成22年11月26日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約5年1か月
不倫の期間:約10か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【減額事由】
    ・不貞関係が風俗店の店員と客との関係で始まった(後に店舗から離れた不貞関係に発展した)
    ・女性は、夫から妻子がいないと申し向けられ、そのことを前提として店舗から離れた不貞関係に至った
    ・女性は、夫に妻子がいることを知った後、夫に対して交際の中止を申し出ていた
    ・女性は、夫に対して交際の中止を申し出た後、夫から妻の署名・押印入りの離婚届を示されて不貞に当たらないと強く不貞関係の継続を求められていた
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係は、夫の浪費・暴力により脆弱になっていた

認められた慰謝料の金額

40万円

(⑴-3)慰謝料70万円(東京地裁平成22年2月1日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約7か月(同棲期間は約4年)
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻が不安障害になりメンタルクリニックに通院して薬物療法等の治療を受けるようになった
  2. 【減額事由】
    ・婚姻期間が短い
    ・不貞開始時点での夫婦の婚姻関係が完全に円満とはいえなかった
    ・不倫の期間が短い(特に最初の約1か月は婚姻していることを知らなかった)

認められた慰謝料の金額

70万円

(⑴-4)慰謝料80万円(東京地裁平成21年1月27日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約4年
不倫の期間:約1か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【減額事由】
    ・女性が不貞関係の開始の際に婚姻の事実について故意があったとは言えない(独身であると信じたことについては過失があった)
    ・女性は夫が独身ではないと知った後は不貞関係を解消していた
    ・不貞行為の第一次的責任(主たる責任)は不貞配偶者である夫が負うべきである

認められた慰謝料の金額

80万円

(⑴-5)慰謝料90万円(東京地裁平成27年9月8日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約半年
不倫の期間:約半月
夫婦間の子ども:幼い子ども1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・幼い子ども1人がいる
    ・女性が不貞関係を否定して、妻に対して謝罪していない
  2. 【減額事由】
    ・婚姻期間が短い
    ・不倫の期間が短い
    ・不貞関係開始の時点で夫婦の婚姻関係が相当程度悪化していた(夫が別の女性とも不貞関係にあって、妻は夫が女性と不貞関係になる前の時点でそのことを確信して弁護士への相談や調査会社への依頼を検討しているなどしていた)

認められた慰謝料の金額

90万円

⑵慰謝料金額が100万円〜150万円となったケース

(⑵-1)慰謝料100万円(東京地裁平成20年12月26日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約7か月
不倫の期間:約3か月
夫婦間の子ども:幼い子ども1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・長男出生直後(2か月後程度)の不貞である
  2. 【減額事由】
    ・女性は夫婦の婚姻関係が破綻していると認識していた
    ・婚姻期間が短い
    ・不倫の期間が短い

認められた慰謝料の金額

100万円

(⑵-2)慰謝料100万円(東京地裁平成21年11月17日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約7年
不倫の期間:約6か月
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性は、婚姻の事実を知った後も(夫との性的関係はないものの)夫と親密な交際を続けた
    ・婚姻期間が長い
    ・妻が精神的な疾患に罹患した
  2. 【減額事由】
    ・女性は、不貞関係の開始の時点では婚姻の事実を知らず、夫が独身であると信じたことに過失もなかった
    ・女性は、婚姻の事実を知った後は夫との性的な関係はなかった

認められた慰謝料の金額

100万円

(⑵-3)慰謝料100万円(東京地裁平成19年3月30日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約23年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:3人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【減額事由】
    ・不貞開始時点での夫婦の婚姻関係は、外形的表面的には平穏であるかのようであっても、夫が原因で精神的には形骸化したものであった

認められた慰謝料の金額

100万円

(⑵-4)慰謝料120万円(東京地裁平成21年4月23日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約4年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・夫が、不貞行為によって夫婦の婚姻関係が悪化して妻と別居した後、長男を単独で養育せざるを得なくなったので、転職するなどした
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始時点において夫婦間に著しい不和が生じていた(夫が妻に対して暴力を振るうなどしたこともあった)
    ・(不貞開始後の事情)妻が男性に対して夫の暴力行為を伝え、夫との離婚の意向を仄めかしたことがあった

認められた慰謝料の金額

120万円

(⑵-5)慰謝料120万円(東京地裁平成19年5月10日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約11年
不倫の期間:約2年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・未成年の子どもが2人いる
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始時点での夫婦の婚姻関係は、夫婦間の価値観の相違等で良好とは言えない状態が続いていた

認められた慰謝料の金額

120万円

(⑵-6)慰謝料120万円(東京裁平成21年7月23日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約19年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・妻が抑うつ状態(パニック症候群)に陥った
  2. 【減額事由】
    ・不貞の継続について第一に責任を負うべきなのは配偶者である夫である(女性の責任は副次的なものにとどまる)
    ・女性は、妻から訴訟が提起された後に、夫に対して損害賠償請求訴訟を提起するなどしており、女性の方から夫との関係を経とうとしている

認められた慰謝料の金額

120万円

(⑵-7)慰謝料120万円(東京地裁平成22年2月23日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約20年
不倫の期間:約6か月
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・妻が体調不良になり通院服薬している
  2. 【減額事由】
    ・不倫の期間が短い
    ・不貞行為の回数が少ない(4回)
    ・不貞関係の開始時点で夫婦の婚姻関係は円満ではなかった

認められた慰謝料の金額

120万円

(⑵-8)慰謝料120万円(東京地裁平成22年7月28日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約13年2か月
不倫の期間:約2年4か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻が精神的ストレスで診療所を受診した
    ・妻がうつ病及び自律神経失調症の診断を受けてカウンセリング及び薬物療法を受けていた
  2. 【減額事由】
    ・女性は、夫から夫婦の婚姻関係が破綻しており離婚の合意もあると言われたことを信じて、夫と不貞関係になった(夫の言葉には具体性があったり、少なくともその一部は真実に基づいていたりしており、妻も離婚届の用紙を取ってきて夫と長女に示したこと等をしていたこともあり、全くの事実無根とは言い難い)
    ・不貞関係は既に解消されている
    ・女性には定職がない

認められた慰謝料の金額

120万円

(⑵-9)慰謝料130万円(東京地裁平成19年10月17日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約22年
不倫の期間:約9年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・不倫の期間が長い
    ・夫婦の婚姻関係が破綻したことで、妻の老後の生活が不安定なものとなった
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係は円満さを欠いていた

認められた慰謝料の金額

130万円

(⑵-10)慰謝料130万円(東京地裁平成23年5月16日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約1年3か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・男性は訴訟において不貞関係を否定し、不自然な弁解をしている
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係は必ずしも良好ではなかった

認められた慰謝料の金額

130万円

(⑵-11)慰謝料140万円(東京地裁平成28年1月27日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約4年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:3人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
  2. 【減額事由】
    ・女性が夫から夫婦間の離婚訴訟の第一審で離婚判決が出たことを聞かされてから、控訴審で第一審の離婚判決が破棄されたことを聞かされるまでの間は、不貞行為が成立しない
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係は円満ではなかった

認められた慰謝料の金額

140万円

(⑵-12)慰謝料150万円(東京地裁平成21年12月22日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約6年
夫婦間の子ども:3人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・未成年の子ども3人がいる
  2. 【減額事由】
    ・夫婦の婚姻関係が破綻した要因には、夫が別の女性の裸体の写真をも保有するに至るような生活をしていたことによって長男との関係が悪化したことや、妻の両親との同居に対する夫の不満にもあった可能性がある
    ・夫が子ども3人の経済的な面を含めた扶養を放棄していない

認められた慰謝料の金額

150万円

(⑵-13)慰謝料150万円(東京地裁平成23年6月16日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約2年
不倫の期間:約5か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【減額事由】
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係が夫が関係修復に向けて努力するという状態であった

認められた慰謝料の金額

150万円

(⑵-14)慰謝料150万円(東京地裁平成21年9月10日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約13年
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻が、不貞が発覚して夫婦の婚姻関係が悪化したことで体調不良になり精神科に通院した
  2. 【減額事由】
    ・夫婦の婚姻関係の悪化の原因には、妻が夫を厳しく追及して精神的に追い込んだことも一因となっている
    ・妻は女性の勤務先に不貞行為に関する文書を大量にFAX送信しており、その結果女性は勤務先を退職するに至っている

認められた慰謝料の金額

150万円

(⑵-15)慰謝料150万円(東京地裁平成21年12月28日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約35年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始時点の夫婦の婚姻関係は相当に気詰まりな状態に陥っていた(その原因は夫のみならず妻自身の言動に起因するところが相当にあった)

認められた慰謝料の金額

150万円

(⑵-16)慰謝料150万円(東京地裁平成24年7月24日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約12年半
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:幼い子ども1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・幼い子ども1人がいる
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係が円満ではなかった(夫が家出を繰り返したり、別居して離婚調停を申し立てたりしており、女性はそれを聞かされた上で不貞の関係となった)
    ・不倫の期間が短い

認められた慰謝料の金額

150万円

⑶慰謝料金額が150万円を越えたケース

(⑶-1)慰謝料170万円(東京地裁平成24年6月19日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約5年
不倫の期間:約4年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性が夫の子どもを妊娠・中絶している
    ・不貞関係が夫からの一方的なものであるとは言えない
    ・女性は夫から暴行を受けたことで不貞関係の解消を切り出したものの、夫に拒否されたため、それ以降も自らの意思で不貞関係を継続した
    ・女性は、妻に対して、無言電話などの執拗かつ悪質な嫌がらせ行為をしている
  2. 【減額事由】
    ・女性が夫から暴行を受けた後も不貞関係を継続した理由は、夫から不貞関係の継続を懇願されたり脅迫的な言葉を言われたためであるという面もある
    ・女性は、夫による自宅周辺での待ち伏せ、執拗な架電により精神的に相当疲弊していた
    ・女性の妻への嫌がらせ行為は、女性に対して甘言を弄しながらそれを実現しない夫に対する苛立ちや妻に対する嫉妬心の現れであった

認められた慰謝料の金額

170万円

(⑶-2)慰謝料180万円(東京地裁平成21年11月18日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約半年(同棲開始から約4年半)
不倫の期間:約3か月
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【減額事由】
    夫婦間の相互信頼が相当程度に希薄なものであったといえなくもなかった

認められた慰謝料の金額

180万円

(⑶-3)慰謝料180万円(東京地裁平成22年12月21日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約2年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・男性は夫婦の自宅で妻と不貞行為を行い、妻が浴室でシャワーを浴びている際に帰宅した夫と遭遇し、夫から直ちに退去を申し向けられて退去したことがある
  2. 【減額事由】
    ・夫婦間の性交渉が少ないという問題があることにつき夫婦の共有認識があった

認められた慰謝料の金額

180万円

(⑶-4)慰謝料180万円(東京地裁平成23年3月17日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約4年
不倫の期間:約6年
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・女性は妻に謝罪していない
  2. 【減額事由】
    ・不貞関係は、主として夫の女性に対する詐言が原因で開始された

認められた慰謝料の金額

180万円

(⑶-5)慰謝料180万円(東京地裁平成26年12月4日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約19年
不倫の期間:1回
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・子ども達の精神的苦痛や心理的動揺等
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始時点で夫婦の婚姻関係は必ずしも円満とはいえない状態であった

認められた慰謝料の金額

180万円

(⑶-6)慰謝料200万円(東京地裁平成22年11月30日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:婚姻前からの不貞
不倫の期間:約6年半
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不貞関係を一旦解消した後再開して現在も継続していること
    ・婚姻期間が長い
    ・妻は、夫との婚姻関係の悪化によって夫が理事長を務めるクリニックの仕事ができなくなった
  2. 【減額事由】
    ・夫婦が同居していなかった
    ・夫婦の間には実子はおらず、妻の連れ子(夫と養子縁組している)は既に成人している

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-7)慰謝料200万円(東京地裁平成19年4月24日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約9年
不倫の期間:約2年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性は不貞開始時点では婚姻の事実を知らなかったが、婚姻の事実を知った後も夫との同棲を続けた
    ・夫は女性と同棲生活を開始したために、自宅に帰らなくなった(それにより婚姻関係が完全に破綻した)
  2. 【減額事由】
    ・女性は不貞開始時には婚姻の事実を知らず、夫が独身であると信じたことに過失もなく、途中から知った
    ・女性が婚姻の事実を知った時点では夫婦の婚姻関係は既に破綻に瀕していた

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-8)慰謝料200万円(東京地裁平成19年8月24日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約1年6か月
不倫の期間:約4か月
夫婦間の子ども:幼い子ども2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・幼い子ども2人がいる
  2. 【減額事由】
    ・婚姻期間が比較的短い

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-9)慰謝料200万円(東京地裁平成21年6月22日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約8年半
不倫の期間:約10か月(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:幼い子ども2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性が夫との不貞関係を継続し、夫と同棲を継続していること
    ・婚姻期間が長い
    ・幼い子どもが2人いる
  2. 【減額事由】
    ・不貞関係の継続の主たる責任を負うべき夫が、不貞関係について積極的に働きかけていた

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-10)慰謝料200万円(東京地裁平成28年5月18日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約1年
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:幼い子ども1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不貞開始の時点で結婚式を間近に控えていた(そのことを男性は知っていた)
    ・男性は市議会議員として道徳的にも市民の規範たるべき人間であることが認められる者であり、男性自身も結婚していたのに不貞に及んだ
    ・幼い子ども1人がいる
    ・男性は夫の勤める市の市議会議員であり、最も信頼もしていた者であったと思われる
  2. 【減額事由】
    ・配偶者である妻と比べれば男性の責任は副次的である
    ・婚姻期間が短い
    ・不倫の期間が短い
    ・男性が不貞発覚後に夫に対して謝罪の意思を表明していた

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-11)慰謝料200万円(東京地裁平成21年2月27日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約22年
不倫の期間:約1年11か月
夫婦間の子ども:3人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性は、夫との関係は既に解消していると主張しつつも、実際にはその後も夫との関係を継続していた
    ・妻には夫との婚姻関係の破綻の危機が招来した責任が全くない
  2. 【減額事由】
    ・婚姻関係破綻の主たる責任は配偶者である夫にあるというべきである(夫と女性は上司と秘書的な庶務の仕事をする部下との関係で夫は女性よりも20歳以上年上であったことなどから、夫が主導的に不倫関係を結んだものといえる)
    ・妻は夫に対して不倫慰謝料を請求していない
    ・女性は、夫との不貞関係の継続で精神的に影響を受け心身症を患っていると法廷で発言し、今後は夫と交際しないと誓っていること

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-12)慰謝料200万円(東京地裁平成21年6月10日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約16年
不倫の期間:約5か月
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻は、夫から強く離婚を求められたことでうつ病の診断を受けた
    ・夫が女性との交際中に総額1000万円程度の支出をしていた(妻はこのことを知って多大な精神的苦痛を受けたものと推認される)
  2. 【減額事由】
    ・女性から夫のことを積極的に不貞行為に誘ったとまでは言えない
    ・不倫の期間が比較的短い

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-13)慰謝料200万円(東京地裁平成22年1月29日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約13年
不倫の期間:約3年間
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・女性は不貞発覚後に妻への謝罪や反省の態度を示していない
  2. 【減額事由】
    ・妻は、女性に対して脅迫的言動を行い、女性の職場や実家にも頻繁に電話を掛けて、職場の関係者に不貞関係を伝えるなどして女性を苦境に追いやった(妻の行為には社会的相当性を欠く行き過ぎな点があった)
    ・女性が妻に対して謝罪せず、不貞関係を否定するような回答を送ったことには夫の対応にも一因がある

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-14)慰謝料200万円(東京地裁平成25年5月30日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約13年
不倫の期間:約3年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性が夫と同棲していること
  2. 【減額事由】
    ・不貞開始の時点で夫婦の婚姻関係は必ずしも円満ではなかった(そのことについて夫にも帰責性がないとは言えない)

認められた慰謝料の金額

200万円

(⑶-15)慰謝料250万円(東京地裁平成21年11月25日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:婚姻直後(婚姻前の不貞行為は認められなかった)
不倫の期間:約2年半
夫婦間の子ども:幼い子ども1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・幼い子ども1人がいる
    ・不貞関係が婚姻直後から長期間継続していた
    ・妻が幼い子どもを連れて別居したことで夫が子どもとほとんど面会できなくなった
    ・夫が子どもと面会しやすくするために転居し、それに伴って職場の仕事内容も変わった
  2. 【減額事由】
    ・(夫婦の婚約後婚姻前の肉体関係について)女性が婚約の事実を知っていたとは言えないので、夫の婚約者としての権利ないし利益を違法に侵害したとは言えない(婚約後婚姻前の不貞行為は否定)

認められた慰謝料の金額

250万円

(⑶-16)慰謝料250万円(東京地裁平成21年7月23日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約6年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・女性は訴状送達後に不貞関係を解消したと主張しながらも、実際には解消していなかった
  2. 【減額事由】
    ・不貞関係の開始の時点で夫婦の婚姻関係は相当程度円滑を欠く状態にあった

認められた慰謝料の金額

250万円

(⑶-17)慰謝料250万円(東京地裁平成22年3月4日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約21年4か月
不倫の期間:約3年半(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・不倫の期間が長い
    ・女性が妻に対して謝罪をしていない
  2. 【減額事由】
    ・不貞の開始の時点で夫婦の婚姻関係が必ずしも円満・良好なものではなかった(その責任が専ら夫にあるともいえない)
    ・不貞関係が夫の主導によるものであった
    ・夫は妻に対して月額55万円の婚姻費用を負担している

認められた慰謝料の金額

250万円

(⑶-18)慰謝料300万円(東京地裁平成19年4月5日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約6年
不倫の期間:約2年2か月(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が比較的長い
    ・女性は、妻から再三に渡り夫と別れるよう求められたが拒絶して不貞関係を続けた

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-19)慰謝料300万円(東京地裁平成22年12月9日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約9年10か月
不倫の期間:約4か月
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・男性は、妻との肉体関係を否定するなど、夫に対して不誠実な対応に終始していた
  2. 【減額事由】
    ・夫婦の婚姻関係が破綻した最も大きな原因は、配偶者である妻が積極的に男性との関係にのめり込んだことにある

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-20)慰謝料300万円(東京地裁平成23年2月22日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約5年半
不倫の期間:約4年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・男性と妻が、お互いに異性として強く意識するとともに、真剣な気持ちで交際する関係となったこと
    ・男性は、妻の別居に協力し、妻の転居先を確保し、妻に対して別居後の生活支援を約束し、妻はそのことを前提として夫との別居を開始したこと

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-21)慰謝料300万円(東京地裁平成20年6月17日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約17年
不倫の期間:約4か月
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・不貞行為の回数が決して少なくない(約20回)
    ・男性は女性に対して積極的に関係を求めていた
  2. 【減額事由】
    ・不貞について最も責任を負うべき者は配偶者である妻であること

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-22)慰謝料300万円(東京地裁平成22年1月26日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約12年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻は、夫と女性との不貞行為が噂になって、いたたまれなくなり退職した
    ・妻は、女性の研究等に一定の恩恵を与えていた(その女性が夫と不貞行為に及んだことで裏切られたという気持ちを強く抱いた)

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-23)慰謝料300万円(東京地裁平成22年4月5日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約12年
不倫の期間:約9か月半(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:無し

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・不倫の期間が長い
    ・女性は妻に不貞関係が発覚した際に謝罪をしつつも、不貞関係を解消しなかった
    ・女性と夫との間には子どもが4人いる(なお、夫はいずれの子どもも認知していない)
    ・女性は夫から継続的に生活援助を受けていた

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-24)慰謝料300万円(東京地裁平成22年7月8日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約21年
不倫の期間:約8年
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・不倫の期間が長い

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-25)慰謝料300万円(東京地裁平成23年3月25日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約15年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・妻が夫と女性の不貞行為により情緒不安定となり、社会生活を送ることが困難な程のうつ状態になり精神科に通院した
    ・妻が夫に対して申し立てた婚姻費用分担請求調停において、夫が長男を中学校卒業後に働かせる(長男に高校進学を断念させる)旨の発言をしたことに、妻が強い衝撃を受けた
    ・長女が夫と女性の不貞行為によって強いストレスを受け、パニック症になり精神科に通院したことで、妻が強い衝撃を受けた

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-26)慰謝料300万円(東京地裁平成26年5月19日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約15年
不倫の期間:約2年(不貞関係継続)
夫婦間の子ども:2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・女性が夫と同棲し続けている(家庭裁判所から同居を命じる審判が出されているが、夫はそれを無視して女性と同棲している)
  2. 【減額事由】
    ・妻の心情としては夫との婚姻関係が完全に破綻したとは認識していない(離婚を求めてもいない)

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-27)慰謝料300万円(東京地裁平成27年5月27日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約15年
不倫の期間:約5年
夫婦間の子ども:4人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・妻の連れ子3人、夫の連れ子1人がおり、それぞれ養子縁組していること
    ・妻と夫は財産関係でも密接な関係にある(居住している土地建物が夫婦共有となっており、土地建物の取得や新築のために妻所有のマンションに抵当権が設定されるなどの状況)
    ・妻は夫が設立した株式会社の経営に深く関与している
    ・女性が夫と別れることを否定している
  2. 【減額事由】
    ・不貞関係について女性が主導的であるとは認められない

認められた慰謝料の金額

300万円

(⑶-28)慰謝料400万円(東京地裁平成22年10月7日判決)

夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約6年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:幼い子ども2人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・幼い子ども2人がいる
    ・男性は、自宅の建築の中止・妻が住むアパートの選定・夫婦の離婚などについて妻に助言していた
    ・男性は、妻の不貞相手が自分であることが明らかにならないようにするために様々画策しつつ不貞関係を継続した
    ・男性は、訴訟開始後も、妻との関係は恋愛の自由市場における競争の結果に過ぎないなどと主張して不貞関係を継続した
    ・妻が男性の子どもを妊娠した
    ・男性が妻と夫との間の子どもと一緒に出かけたり、妻と夫との間の子どもが住むアパートに出入りしたりしていた
    ・夫は、妻の実家近くに自宅建築用の土地を購入し、自宅の建築請負契約を締結する直前であったが、不貞関係が原因でとん挫することになった
    ・夫は、相当程度の負担を伴う不貞関係の調査などを行わざるを得なかった

認められた慰謝料の金額

400万円

(⑶-29)慰謝料400万円(東京地裁平成21年3月11日判決)

妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求

不貞開始時点での婚姻期間:約14年
不倫の期間:約1年半
夫婦間の子ども:1人

慰謝料金額に影響を与えた主なポイント

  1. 【増額事由】
    ・婚姻期間が長い
    ・養育すべき子どもが1人いる
    ・妻は不貞発覚の際に精神的苦痛から心療内科に通院した
    ・女性は不貞発覚後も夫との不貞関係を継続した

認められた慰謝料の金額

400万円

3.裁判所で認められる金額や合意が成立する金額は相場通りの金額とは限らない

裁判所は、一般的な傾向としては、以下の事情があるケースでは、高額な不倫慰謝料を認める可能性が高まります。

高額の不倫慰謝料が認められる可能性があるケース

  1. 不倫前の夫婦関係の状況 ➡︎円満
  2. 不貞開始時点での婚姻期間 ➡︎長い
  3. 不倫の期間 ➡︎長い
  4. 夫婦間の子ども ➡︎幼い子どもがいる
  5. 不貞発覚後の加害者の対応
    ➡︎不誠実な対応をした(謝罪しない、開き直る、攻撃的な態度をとるなど)
  6. 不倫相手の妊娠 ➡︎不貞相手が妊娠した

他方、裁判所は、一般的な傾向としては、以下の事情があるケースでは、不倫慰謝料が減額される傾向があります。

不倫慰謝料が減額される可能性があるケース

  1. 婚姻期間が短いケース
  2. 不倫の期間が短いケース
  3. 既に不倫の関係を清算しているケース
  4. 不倫をした配偶者が不倫関係に積極的であったケース
  5. 不倫をした配偶者が上司・先輩など目上の存在であったケース
  6. 不倫をした配偶者が相当に年上であったケース
  7. 不倫発覚後に誠実に謝罪をしていたケース
  8. 不倫の開始の時点で既婚者であることを知らなかったケース
  9. 不倫慰謝料が不倫をした配偶者には請求されていないケース
  10. 不倫をした配偶者が既に不倫慰謝料を支払っているケース
  11. 不倫慰謝料の請求者が社会的相当性を欠く行為(脅迫や名誉毀損行為など)をしているケース
  12. 不倫の開始の時点で夫婦の婚姻関係が円満ではなかったケース
    ➡︎特にこの12に関する事情次第で大幅な不倫慰謝料の減額を認める場合がある

ただ、裁判所は、実際には、上記の事情以外にも実に様々な事情を拾い上げて不倫慰謝料の金額の増減を調整しています。

時には意外な事情や、本来であれば不倫慰謝料の金額の増減事由とは一般的に考えられていないような事情を拾い上げて不倫慰謝料の金額の増減を調整していることもありますし、なんでこの事例がこの不倫慰謝料金額となったのかが不明としか言いようのない場合もあります。

また、当事者にとってとても納得できないような不倫慰謝料の増額・減額事由も見られます。

例えば、不倫慰謝料を不倫相手のみに請求すること(不倫をした配偶者に対しては請求しないこと)が不倫慰謝料の減額事由とされてしまうとなれば、人生の選択肢がとても窮屈なものになってしまいます。

事例で説明

事例

  1. 夫婦は円満そのものであり、夫婦の間には幼い子どもが2人いた
  2. 妻は、職場の上司であるA男の積極的な働きかけによってA男と不貞行為に及んだ
  3. 夫は妻とA男の不貞行為を知り、妻との離婚を決意した
  4. ただ、夫は、幼い子ども達のためを思って、子ども達の親権者は妻にすることとした上、妻に対しては不倫慰謝料を請求せず、むしろ扶養的財産分与も含めて離婚後の生活について十分な支援を与えることとした
  5. 他方、夫は、妻に積極的に働きかけて不貞行為に及んで夫婦の婚姻関係を破綻させたA男に対しては、しっかりと不倫慰謝料を支払ってもらって落とし前をつけてもらいたいと考えていた

不都合性

裁判所は、不倫により婚姻関係が破綻したことに対する主たる責任は配偶者に対して貞操義務(他の異性と性的な結合関係を結ばないという義務)を負っている妻にあり、不倫相手の責任は副次的なものにとどまるにも関わらず、夫が妻に対しては不倫慰謝料請求をしていないという事情を、夫のA男に対する不倫慰謝料の減額事由として考慮してくる場合があります。

そうなるならば、夫としては、結局、A男に対して本来請求し得る水準の不倫慰謝料を請求するためには、幼い子ども2人の離婚後の生活をかえりみず、妻に対してA男と同水準以上の不倫慰謝料を請求しなければならない(扶養的な財産分与などをすることも不倫慰謝料請求の算定上マイナスに考慮されてしまう可能性があるためできない)ということとなりかねません。

しかしながら、裁判所は基本的に法律論(担当裁判官がそうだと考えている法律論)に基づいて容赦無く判決を出しますし、実際にどのような内容の判決が出るのかは実際に判決が出るまで分かりません。

そのため、裁判に至る前の不倫慰謝料の話し合い(交渉)の際にも、最終的に裁判所が認めるであろう金額を指針の一つとしつつも、その裁判所が認めるであろう金額には大きな幅があり得るということを念頭におくことが必要です。

また、話し合い(交渉)では、裁判では(法律論としては)不倫慰謝料金額の増減事由とはおよそなり得ないような事情・極めてプライベートな事情・経済的な事情・今後の人生設計などに関する事情などの事情も含め、請求者側の事情も被請求者側の事情も実に様々な事情を検討する必要があります。

そのため、話し合い(交渉)において合意が成立するであろうと想定される不倫慰謝料の金額は、裁判における慰謝料の相場金額の幅よりもさらに個別具体的な事情により大きく差が出てくるものであり、話し合い(交渉)の進め方など次第で最終的な合意金額にも大きな差が出てきます。

レイスター法律事務所では、無料法律相談において個別具体的な事情に基づいて、想定される不倫慰謝料の具体的な金額の幅について、交渉にて解決した場合と裁判の判決に至った場合とに分けて、できる限り具体的にお伝えしていますので、是非ご利用ください。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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