夫がアルコール依存症の場合に家族が考えるべき重要な事項

アルコール依存症の夫との離婚問題

 アルコール依存症は自らの意思でお酒と離れられなくなってしまう精神疾患であり、重い症状が出るようになると普通に生活をすることが難しくなってしまいます。
 アルコール依存症は適切な治療を受ければ回復する病気ですが、家族に対して攻撃的な言動をしてくることもあり、家族の生活・人生にも多大な影響を及ぼすことの多い病気です。
 アルコール依存症の夫との離婚を決意した場合、どのように離婚問題を進めていけば良いでしょうか。

1.アルコール依存症とは

アルコール依存症とは、お酒を飲むことを自分で止められなくなってしまう精神疾患です。

お酒を長期間に渡って大量に飲み続ければ、どんな人でもアルコール依存症になってしまう可能性があり、特にお酒に強い人ほど注意が必要です。

お酒を毎日飲んでいると、徐々により多くのお酒が欲しくなってきます。

その結果、徐々に飲酒量が増えて、毎日大量のお酒を飲むようになると、その影響はお酒が切れている時に現れます。

具体的には、お酒が切れている時に体調が悪くなったり、お酒に酔っていない状況に物足りなさや苛立ちを感じるようになり、早くお酒を飲みたいとの欲求が強くなってきます。

そして、さらに大量の飲酒を習慣として続けていってしまうことで、アルコール依存症は進行していきます。

アルコール依存症が進行すると、お酒が切れている時に手の震えや発熱・悪寒・下痢・不眠などの身体的症状が強くなってくるとともに、無気力・注意力低下・恐怖感・不安感・うつ状態などの精神的症状も強まっていき、普通に生活をすることが難しくなってしまいます

なお、厚生労働省の調査によると、生活習慣病のリスクを高める飲酒をしている者(1日当たり純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上のアルコールを接種している者)は、男性の15.8%、女性の8.8%いるとされています。

アルコール摂取量20gとは、ビール中瓶1本、缶チューハイ1缶、日本酒1合、ウィスキーダブル1杯、ワイングラス2杯ほどの量であり、ストロング系チューハイでいうと350ml缶1本で20gを超える量のアルコールが含まれています。

2.アルコール依存症と家族

⑴アルコール依存症の恐ろしさ

アルコール依存症の恐ろしいところは、病的に強烈な飲酒欲求のために自分の意思でアルコールから離れられなくなってしまうということです。

そして、そのような「どんなに強く決意してもどうしてもお酒を止められない自分」を受け止められず、そのような自分と折り合いを付けるために、病気を否定(否認)したり、そのような自分を擁護したりする言動をする傾向にあります。

その結果、家族に対して嘘や言い訳を頻繁に言うようになったり、言っていることがすぐに変わってしまい約束を守らなくなったり、尊大な行動・攻撃的な行動・自己中心的な行動を繰り返したり、妄言・妄想に基づいた行動をしてしまったりします。

アルコール依存症の夫を心配して治療を受けさせようとしても、夫はなかなか自身の病気を認めず、それでいて毎日の飲酒を決してやめず、飲酒を止めるといっても結局止めることはなく、お酒を飲んで帰宅することに嘘の言い訳を良い、そのことを責めると暴言・暴力などの攻撃的な言動をしたりします。

このように、アルコール依存症は家族の生活・人生にも多大な影響を及ぼすことの多い病気です。

⑵アルコール依存症の夫との付き合い方

アルコール依存症は適切な治療を受ければ回復する病気です。

しかし、アルコール依存症は、自分の意思で治療を開始・継続することが極めて困難な病気です。

そのため、アルコール依存症の治療の開始・継続には、家族の理解と協力が必要となります。

夫にアルコール依存症の治療を受けてもらうことは容易ではありませんが、夫を説得し、夫から嘘をつかれたり攻撃的な言動を受けたりしてもそれを許容し、辛抱強く改善に向けて努力をしていく必要があります。

ただ、夫がどうしてもアルコール依存症の治療を受けてくれなかったり、治療に真剣になってくれなかったりする場合もあります。

そのような場合には、あなた自身や家族が潰れてしまう前に、あなた自身や家族の人生を守るために、そのような夫との離婚を検討することもあり得る考え方です。

3.アルコール依存症を理由とする離婚について

⑴夫と話し合って離婚する

夫に離婚を切り出して、離婚に向けて離婚条件などを話し合っていきます。

夫としても、家族に迷惑をかけてしまっていることの自覚がある場合も多いですので、あなたの離婚の求めに真摯に向き合ってくれる可能性もあります。

ただ、アルコール依存症の夫に離婚を切り出す場合、酒に酔った夫が逆上して強烈な暴言・暴力の被害を受けてしまうことがあります。

そのため、離婚の進め方としては、可能であるならば別居を先行させることが良いでしょう。

別居することが経済的に難しい場合には、別居と同時に婚姻費用を請求することでカバーできる場合もありますので、その方向性を検討することも有用です。

同居したままで離婚を進めたい場合は【同居しているものの離婚を考えている】を、別居して離婚を検討している場合は【別居して離婚を考えている】を、併せてご確認ください。

また、夫が感情的になったり、夫が攻撃的になったりする場合には、あなた自身の日常生活を守るためにも、弁護士に夫との交渉の間に入ってもらったり、離婚調停を申し立てて裁判所において離婚の話し合いを進めることが良いでしょう。

弁護士に依頼すれば夫と会うことなく離婚を成立させることも可能です。

また、夫に離婚までの間の生活費(婚姻費用)を請求できる場合もありますので、積極的に検討するべきです。

なお、具体的な事情によっては、夫に対して慰謝料を請求できる場合もあります。

⑵夫と裁判離婚する

夫が離婚に合意しない場合には離婚訴訟を提起して裁判所に離婚判決を出してもらうことが必要となります。

そして、裁判所に離婚判決を出してもらうためには民法に定められた離婚原因(法定離婚原因)が存在していることが必要となります。

アルコール依存症の場合に問題となり得る離婚原因は、以下の2つです。

「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(民法770条4号)
「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条5号)

しかし、①「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(民法770条4号)については、アルコール依存症はこれに該当しません。

また、アルコール依存症であるというだけでは、②「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条5号)にも該当しません。

加えて、夫婦は「同居し、互いに協力し扶助」する義務(同居義務・協力義務・扶助義務。民法752条)を負っているため、病気の夫を残して離婚することに裁判所が消極的に考えることもあり得ます。

そのため、アルコール依存症というだけで離婚判決を出してもらうことは容易ではありません

ただ、あなたが離婚を決意するまでに追い詰められしまった経緯や、これまでの献身的な努力、別居の期間や夫の言動(仕事をしない、暴言・暴力を振るう、モラハラ・DVなど)といった具体的な事情次第では、「婚姻を継続し難い重大な事由」の存在が認められ、離婚判決が出される可能性も十分にあります。

特に、夫から暴力やモラハラDVを受けていた場合や、悪意の遺棄ないしその類似行為を受けていた場合には、その可能性が高いです。

アルコール依存症の夫との離婚を考えている場合は、離婚問題をどのように進めていくことが良いかについて、ご相談ください。

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