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夫が風俗に通っていたことが発覚した場合、今後の夫との婚姻関係をどうするか考えなければなりません。
夫を信じて婚姻関係を続けることとするか、夫との離婚を決意するかは、夫の態度やあなたの気持ち次第でしょう。
あなたが夫との離婚を決意した場合には、夫が風俗嬢とした行為が「不貞」に該当するかどうかで、離婚問題の進め方や慰謝料に関する事情が変わってきます。
このページの目次
1.性風俗通いをする夫を信じるかどうか
⑴安からぬ対価を支払って性風俗に通う夫たち
夫がソープランドやファッションヘルスなどの性風俗に通っていることが発覚した場合、それはとてもショックなことでしょう。
夫は、もしかしたら軽い気持ちで性風俗に通っていたのかもしれません。
このような「性風俗通い」は、「特定の異性との間における浮気や不倫」よりも倫理的なハードルが低くなっている夫が多い印象です。
しかしながら、夫が性風俗通いをしていたということは、つまり、夫があなた以外の女性と(程度の差はあれ)性的な関係を持ち、しかもそのために安からぬ対価を支払っていたということです。
結婚して大切な家族や家庭があるにも関わらず、バレないように自分の性欲を満たそうなどとする夫に対して、妻としては、絶対に許せないと感じたり、もうまったく信用できないといった気持ちになったり、嫌悪の感情を抱いたりすることも当然でしょう。
そのまま夫のことを放置していると、夫は今後も性風俗に通い続け、安からぬ性サービスの対価を支払い続けるかもしれません。
⑵夫を信じるかどうか、という問題
あなたが夫の性風俗通いを受け入れられない場合は、夫としっかりと話し合い、夫に反省してもらい、今後は絶対にそのような店には行かないことを誓約してもらう必要があるでしょう。
夫が反省して、今後は絶対にそのような店には行かないと誓ってくれるのであれば良いですが、開き直って「これは浮気や不倫ではない」と言い訳をし始めることもよく聞く話です。
また、もし夫がもう絶対にそんなお店には行かないと誓ってくれたとしても、夫の生活を全て監視することはできません。
夫があなたに隠れて性風俗に定期的に通い続けていたとしても、それに気が付けるとは限りません(慎重に隠されてしまったらなかなか気が付けないものです。)。
性風俗依存症という言葉があるくらい、性風俗通いはいったん癖になるとなかなか辞められないものだという話もあります。
結局は、夫が約束したことをちゃんと守ってくれることを信じるしかありません。
そう考えると、この問題は、夫婦の信頼関係次第、あなたが夫をどこまで信じてみることとするかという問題になってきます。
2.夫の性風俗通いを理由とした離婚は認められる?
夫が性風俗に通って、見知らぬ女性と性行為や性的な接触行為を行なっていた場合、夫のことを許せないと思い、離婚を考えることもあり得るものです。
以下では、性風俗を利用していた夫との離婚の進め方・夫への離婚慰謝料請求の可否について、説明します。
⑴「不貞」は法定離婚原因として定められている
離婚裁判では、裁判所が法定離婚原因が存在していると判断すれば離婚判決が出されます。
法定離婚原因は、以下の5つです。
法定離婚原因(民法770条1項)
- 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
- 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
- 「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
- 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
- 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)
このように、民法770条1項1号には①「配偶者に不貞な行為があったとき」を離婚原因と規定しています。
そのため、性風俗通いが「不貞」に該当するのであれば、あなたが望めば離婚ができますし、慰謝料を請求することもできます。
このように、性風俗通いが「不貞」に該当するかどうかで、あなたがとり得る選択肢が変わってきます。
⑵性交渉があれば「不貞」に該当する!
性風俗は、あくまでも業務上のサービスの提供として行われるものです。
しかしながら、提供される性的なサービスの内容が性交渉そのものである場合には、当然に「不貞」に該当します。
ただし、夫が性風俗に通っていたとしても、性交渉やその類似行為をしていなかったとすれば「不貞」にはなりません。
例えば、女性が「性」を利用したサービスを提供していたとしても、キャバクラやスナックなどの接客を中心としたサービスの提供であったり、ストリップやのぞき部屋などの主に閲覧をさせるとのサービスの提供であったりした場合には、「不貞」には該当しません。
また、夫が通っていた風俗が性交渉(いわゆる本番行為)までは行わない性的サービスである場合(ヘルスや俗にいうピンサロ、セクキャバ、オナクラ、イメクラなど)には、「不貞」とまでは言えない場合が多いです。
さらに、夫が女性から性交渉の類似行為(オーラルセックス(フェラチオなど)や男性を射精に導くような手淫など)といった性サービスの提供を受けていたとしても、それがほんの数回に過ぎない場合には、「不貞」に該当しないとされる場合が多いです。
ただし、夫の風俗での行為が「不貞」には該当しない場合でも、⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」との離婚原因(民法770条1項5号)に該当することを理由に、離婚が認められる可能性は十分にあります。
⑶性風俗通いを理由とする「不貞」の特殊な点
性風俗通いの場合は、通常の浮気や不倫とは異なり、特定の異性との間で相互に恋愛感情を持ち合っていたり、精神的な繋がりを築いていたりするものではありません。
それゆえ、性風俗通いは、通常の浮気や不倫の場合と比べれば夫婦関係の破綻に寄与する程度が低いと考えられています。
そのため、夫が性風俗に通っていた回数が少なく、夫にも一定の事情があり、夫が誠実に反省をしているような場合には、あなたが離婚を求めても裁判所が⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」とまでは認定せず、離婚を認められない可能性もあります。
ただ、夫がどれほど誠実に反省していたとしても、あなたが夫を許せなければ、その後の夫婦関係が上手くいくはずはありません。
夫の風俗通いがきっかけとなって夫婦関係が冷え切ってしまい、別居になったり、信頼関係が大きく崩壊して回復することがなかったりした場合には、結局は、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」との離婚原因(民法770条1項5号)に該当することを理由に離婚が認められ得ることになります。
3.夫の性風俗通いを理由とした離婚慰謝料請求は認められる?
⑴性交渉そのものがあった場合には離婚慰謝料請求可能
性風俗店で提供される性的なサービスの内容が性交渉そのものである場合には、当然に「不貞」に該当し、離婚慰謝料請求も可能になります。
配偶者の不貞(不倫)が原因で婚姻関係が破綻した場合には、概ね200万円〜300万円程度の離婚慰謝料の請求が認められる場合が多いです。
他方、配偶者が不貞(不倫)を開始した時点において、客観的に見て婚姻関係が既に破綻していたと考えられる場合には、離婚慰謝料請求が認められない場合もあります。
ただ、交渉次第では高額の離婚慰謝料請求を認めさせることができる場合もありますので、最初から離婚慰謝料請求を諦める必要はありません。
また、風俗嬢が勤務先の店舗から離れて個人的に夫と連絡を取り合って、夫とホテルなどに行って肉体関係を結んでいた場合には、不倫慰謝料請求が認められる可能性が高まります。
さらにこの場合は、夫だけでなく相手の女性(風俗嬢)に対する慰謝料請求が認められる可能性もあります。
⑷性風俗通いや不貞の事実を証明する証拠が必要
裁判所に当事者間で存否の争いがある事実を「存在する!」と認定してもらうためには、その事実が存在していることが分かる証拠が必要となります。
あなたが夫との夫婦関係の継続を諦め、離婚の道を選択する場合には、夫からの言い逃れを許さないために、
- 性風俗店のスタンプカード・ポイントカード
- 性風俗店の会員証・名刺
- 性風俗店のレシートやクレジットカードの履歴
- 性風俗店のサイトの予約・利用履歴
などの証拠をしっかりと集めておくと良いでしょう。
証拠があるかどうかで、離婚問題や慰謝料請求の進め方は相当異なってくることがあります。
その他にも、夫に離婚を切り出す前に、具体的な離婚慰謝料の金額、養育費・財産分与などの離婚条件や、証拠の収集方法についてもよく把握しておくことが有用です。
特に、夫への慰謝料請求の可否については個別の事情による難しい判断となることが多いので、検討されている場合には一度離婚問題に精通した弁護士へ相談されることをおすすめします。
レイスター法律事務所では、手持ちの証拠の状況や別居できる状況にあるかどうかなど、個別具体的な事情に基づいて、経済的利益を最大化するためにはどのような視点で離婚問題を進めることが最も良い方法かなどについて、具体的かつ実践的なアドバイスを行なっています。
夫の性風俗通いに起因した離婚問題でお悩みの際は、一人で悩まず、こちらからお気軽にご連絡ください。
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