更新日:
「夫と離婚したい!離婚の理由は夫が嫌いだから!」―――
夫と離婚したいと考える理由は、何十年も前から「性格の不一致」(性格が合わない)との理由が最多数となっています。
ただ、夫と離婚したいと思い、夫に離婚を切り出したものの、夫がどうしても離婚に応じてくれない場合もあります。
この記事では、嫌いな夫と離婚したいものの、夫にこれといった問題点や非がなかったり、明確な離婚原因(離婚の理由)がない場合に、「性格の不一致」(性格が合わない)という理由で夫と離婚する方法を詳細に解説します。
このページの目次
1.「性格の不一致」は最も多い離婚理由
司法統計によると、離婚したいと考える理由は何十年も前から「性格の不一致」(性格が合わない)という理由が最多数となっています。
最新の司法統計(令和4年度)でも、夫と離婚したい妻の約38.6%、妻と離婚したい夫の約60.1%が「性格の不一致」(性格が合わない)との理由で離婚したいと考え、離婚調停を申し立てています。
このように、多くの夫婦は「性格の不一致」という離婚の理由で離婚しています。
2.離婚に至るほどの「性格の不一致」とは
夫婦は、共同生活を重ねる中で、日常的な多種多様な意思の疎通やすれ違いの擦り合わせの他、家事・出産・育児・仕事(単身赴任・転職・休職・失業など)・趣味・両親との関係(介護問題や同居問題など)といった問題について、夫婦で話し合ってちょうど良い状況を探って、乗り越えていかなければなりません。
ただ、その中で相手の言動に対して大小様々な違和感・わだかまり・不平不満感や、価値観の違いを感じ、我慢やストレスが積み重なっていったりすることもよくあることです。
「性格の不一致」とは、このような夫婦として共同生活を重ねる中で現れた違和感・わだかまり・不平不満感などが溜まっていく「箱」のようなものです。
そして、「性格の不一致」という「箱」が限界まで溜まってふとしたきっかけで溢れた時に、夫の言動や夫の存在自体に嫌気が差し、「夫が嫌い」「夫と一緒にいたくない」「夫が気持ち悪い」「夫が生理的に無理」などと感じるようになり、夫との離婚の検討につながっていきます。
「性格の不一致」という「箱」に溜まっていく事情の具体例
- 夫の幼稚な側面
普段は特に問題がない夫でも忙しい時や虫の居所が悪く機嫌が悪い時、夫婦喧嘩をした時に幼稚としか言いようがない一面を覗かせ、あなたを落胆させるかもしれません。
- 夫の無配慮・頼りない側面
病気などの問題に直面した時に、夫の無配慮な側面や頼りない側面を認識することとなるかもしれません。
- 妊娠中の言動
夫から、妊娠中に無配慮な言動を受けて悲しい思いをさせられることもあるでしょう。
- 育児への不参加・非協力
子どもの出産後に育児に主体的に参加しない夫に不信感を抱いたりすることもあるでしょう。
- プライベートな事柄に介入してくる・束縛してくる
夫がプライベートな事柄に対して必要以上に根掘り葉掘り聞き出そうとしてきたり、友人や職場での人間関係に口を出してきたり、束縛してきたりして、うんざりさせられることもあるでしょう。
- 夫婦や家族の将来についてしっかりと考えてくれない
夫が夫婦・家族・子どもの将来のことをしっかりと考えてくれていなかったり、どこか他人事のように考えており、話し合おうにも真面目に向き合ってくれないこともあります。
- 金遣いや時間の使い方
夫の金遣いや時間の使い方に関しても、家計が厳しい時や子どもが生まれた後も自分の趣味や遊びや人間関係を優先して、浪費をしたり家族や家庭のために時間を使ってくれなかったりして、そのような自己中心的な夫にうんざりさせられることもあるでしょう。
- 共同生活上のルールを守らない
夫婦で話し合って決めた共同生活上のルールは当たり前のように破られ、開き直られてしまい、それが常態化してしまうケースもよくあります。
- 意見・考えを尊重してくれない
夫と話し合おうにも、結局いつも自分の意見・考えが先にありきな対応をされ、こちらの意見や考えを全く尊重してくれなかったり、そもそもちゃんと解ろうとしてくれなかったりすることもよくある話です。
- 話し合えない・自分の非を認めない・謝らない・機嫌が悪くなる・すぐにキレる・高圧的な行動をする
夫の間違いを指摘しても、夫は非を認めたり謝ったりすることはなく、むしろ機嫌が悪くなってキレたり威圧的な行動を取ったりされるため、夫との言い争いのストレスを回避するために、夫と話し合うことをせずに一方的に我慢するようになっている人もいるでしょう。
- 性交渉に関する感覚のズレ
性交渉についても、夫との間での感覚のズレに悩まされることもあるものです。
- 人として小さい・尊敬できない
人として小さい・尊敬できないと感じるような言動をする夫に悲しい気持ちにさせられたり、外出先で恥ずかしい思いをさせられたりすることもあるかもしれません。
- 夫婦・家族の将来に直結する事項に関する感覚のズレ
夫との間で、仕事・収入の将来の見通しや両親の介護問題、子どもの将来や教育方針に関する事項などといった夫婦・家族の将来像に直結する事項に関する考え方に感覚のズレがあって、違和感や不安感を拭えない状況に陥ることもあります。
- 夫婦関係の円満性を維持・継続していく意識の低さ
夫婦関係を円満に維持するためには夫婦の双方の配慮や努力が必要ですが、夫からそのような視点・意識が全く感じられず、気が付けば自分ばかりが夫に合わせて夫の生活や心情に一方的に配慮しているような状況の人もいるでしょう。
このように、夫と離婚したいと考えるに至ることは、夫の浮気・不倫、暴言(モラハラ)・暴力(DV)などのような明らかな夫側の問題点や非があったり、明確な離婚原因(離婚の理由)が存在している場合だけではありません。
むしろ、夫と離婚したいと考えているものの、その背景に明らかな夫側の問題点や第三者が納得できるような明確な原因があるわけではないことの方がよくあることです。
そして、上述したように、実際に、多くの夫婦が、相手に明らかな問題点や非がなくても、明確な離婚原因(離婚の理由)が存在していなくても、「性格の不一致」という理由で離婚するに至っています。
3.「性格の不一致」で離婚する方法
⑴夫と話し合って離婚する方法(協議離婚・調停離婚)
- 圧倒的大多数の夫婦が協議離婚で離婚している
離婚の種類には、夫婦の合意により離婚が成立する協議離婚・調停離婚と、裁判所が判決で離婚を成立させる裁判離婚があります。
そして、圧倒的大多数の夫婦が、協議離婚(離婚すること及び離婚条件について夫婦が話し合って合意して離婚を成立させるとの離婚の方法)で離婚しています。
あなたが夫に対して離婚を決意するほどの「性格の不一致」を感じているような状況である場合には、実は夫としても夫婦の間に「性格の不一致」があること感じており、夫婦の間に乗り越え難い問題が存在していることを認識している場合もあります。
そのため、夫に離婚を切り出してみれば、夫も離婚することに応じる可能性も十分にあります。
夫婦の間で離婚すること自体には合意がある状況であれば、あとは夫との間で離婚条件を1つ1つ話し合いをして決めていくことで、協議離婚という離婚の方法によって早期に離婚が成立する可能性があります。
なお、協議離婚で離婚の合意ができた場合には、離婚後のトラブル防止のため、離婚届を提出する前に、離婚条件を記載した書面(離婚協議書・公正証書)を作成しておくことが重要です。
- 夫が離婚に合意しない場合
離婚する際には、子どもの親権を夫婦のどちらにするか、離婚後に子どもと離れて暮らすことになる親と子どもとの面会交流の条件、養育費・財産分与・年金分割などといった様々な離婚条件を取り決める必要があります。
しかしながら、「性格の不一致」は、浮気・不倫、暴言(モラハラ)・暴力(DV)などのようないわば分かりやすい問題点が存在しているわけではありません。
そのため、あなたがどれほど強く夫との離婚を決意していたとしても、夫があなたの離婚の決意を軽く見てくることもあります。
夫は、あなたの「離婚したい!」という思いに対して、「たかがそんなことで離婚なんておかしい」「妻が本気で離婚したいと考えているとはとても思えない」「妻も落ち着いたら目を覚ますだろう」「まだ十分にやり直せる」「結局時間が経てばどうにかなる」などと考えているわけです。
そうなると、夫との間での離婚の話し合いは紛糾し、長期化してしまいます。
夫がまともに話し合いに応じてくれなかったり、離婚すること自体を拒否していたり、離婚条件を巡って対立が生じて話し合いが進まない場合には、弁護士に夫との交渉の間に入ってもらったり、離婚調停の手続きを利用して離婚の話し合いを進めることを検討するべきでしょう。
離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てると、裁判所から調停の相手方(夫)に対して調停期日の呼出状が郵送され、指定された調停期日の日時において、当事者双方が家庭裁判所に赴いて、調停委員を間に入れて話し合いが行われることになります。
夫としても、弁護士から強く離婚を迫る内容の連絡を受けたり、家庭裁判所から離婚調停の期日の呼出状が届いたりすれば、あなたが本気で離婚を望んでいることを否応がなく認めざるを得ないでしょう。
そのため、夫の認識としても、夫婦の婚姻関係を改善して復縁することは極めて困難であることを前提とした上での検討をせざるを得ないことになるでしょう。
離婚調停では、調停委員が離婚に合意しない方を離婚に合意させようと必死に検討してくれることもあり、全体の半数近く(離婚調停中に協議離婚が成立した場合も含む)で離婚の合意が成立しています。
離婚調停に弁護士が関与している場合には、さらに調停での離婚合意の成立率は高まります。
なお、同居中であれば、離婚問題を有利に進めるためにも、別居や婚姻費用の請求を検討することも有用です。
⑵離婚裁判で夫と強制的に離婚する方法
離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てて調停期日で離婚の話し合いを重ねても夫が頑なに離婚に合意しない場合には、最終的には調停は不成立となり、終了します。
その場合には、離婚するためには離婚裁判(離婚訴訟)を提起して離婚判決を得る必要があります。
裁判離婚は、唯一相手が離婚に合意せずとも強制的に離婚となるものであり、離婚達成のための最終手段です。
離婚裁判は離婚達成のための最終手段!手続きの流れや期間・要件などを解説
- 離婚裁判では高確率で離婚が成立している
離婚裁判を提起した場合の直近10年間(平成25年〜令和4年)の離婚の成立率(判決離婚又は和解離婚に至る割合)は、合計で80%であり、ほとんどの場合で離婚が成立しています。
離婚裁判合計件数 | 離婚成立件数 | 離婚成立率 | |
---|---|---|---|
平成25年 | 9573 | 8156 | 85.2% |
平成26年 | 8912 | 7498 | 84.1% |
平成27年 | 9114 | 7670 | 84.2% |
平成28年 | 8812 | 7322 | 83.1% |
平成29年 | 8796 | 7269 | 82.6% |
平成30年 | 8419 | 6876 | 81.7% |
令和元年 | 7830 | 6237 | 79.7% |
令和2年 | 7268 | 5442 | 74.9% |
令和3年 | 8167 | 5854 | 71.7% |
令和4年 | 8118 | 5713 | 70.4% |
合計 | 85009 | 68037 | 80.0% |
- 裁判所は「性格の不一致」という理由で離婚判決を出してはくれない
離婚裁判で裁判所に離婚判決を出してもらうためには、法律に定められている離婚原因(法定離婚原因)が存在していることが必要です。
法定離婚原因は以下の5つです。
法定離婚原因(民法770条1項)
- 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
- 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
- 「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
- 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
- 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)
例えば、①夫に不貞行為(不倫)があり夫が有責配偶者に該当する場合(民法770条1項1号)や、②夫から悪意で遺棄された場合(民法770条1項2号)には、法定離婚原因が存在していますので、裁判所に離婚判決を出してもらうことが十分に期待できます。
他方、法律には「性格の不一致」という離婚原因は規定されていません。
そのため夫婦の間に「性格の不一致」があること自体が認められたとしても、そのことから直ちに裁判で離婚が認められることにはなりません。
- 裁判所に「婚姻を継続し難い重大な事由」があることを分かってもらおう
裁判所に夫婦の間に「性格の不一致」があるために、もはや「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)が存在している状況に至っていることを認定してもらうことができれば、裁判で離婚が認められることとなります。
「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻関係が既に破綻しており、修復することが不可能と思わざるを得ない事由をいいます。
そして、「性格の不一致」はこの「婚姻を継続し難い重大な事由」という離婚原因の存在を基礎付ける重要な要素の一つとなります。
つまり、裁判所は、夫婦の間に「性格の不一致」などの事情が存在しているために「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在していると判断できる場合であれば、離婚を認める判決を出します。
裁判所に「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在していることを分かってもらうためには、裁判所に対して、
- 「性格の不一致」があるためにもはや夫婦間の信頼関係・情緒的結合関係は完全に失われていること
- もう夫とやり直すことは心情的に絶対にあり得ないとの確固たる思いがあることなどといった自身の正直な気持ち
等を、夫の発言・行動などといった具体的なエピソードを交えて詳細に説明することが重要です。
4.性格の不一致で夫と離婚したい方へ
夫と結婚したものの、結婚後に気づいた「性格の不一致」に悩み、離婚するかどうか、今後の人生をどうするかといった難しい問題に悩まされている女性の数は少なくありません。
夫のことが嫌いで夫との共同生活に苦痛を感じている場合には、そのような夫と今後も(それこそ人生の最後まで)共同生活を続けていくことは、幸せなこととはいえないでしょう。
夫との間に夫と離婚したいと考える程の「性格の不一致」が存在している場合には、夫との離婚交渉や離婚に関する手続きを離婚問題に精通した弁護士に依頼すれば、時間的・精神的な負担を軽減させつつ、高確率で離婚の成立に至ることができます。
また、夫と別居しているのであれば、弁護士に依頼してサポートを受けることで、夫と直接話をすることなく、夫と一切顔を合わせることもなく、適正な金額の離婚するまでの間の生活費(婚姻費用)を確保しつつ、夫との離婚を成立させることが可能な場合も多いです。
レイスター法律事務所では、無料相談にて、同居・別居の別や子あり・子なしの別などの具体的な状況を踏まえて、
- 早期かつ好条件での離婚成立のために最適な離婚交渉の方針や交渉戦略、離婚成立までの婚姻費用(生活費)の具体的な金額
- 想定される離婚条件(財産分与・慰謝料・解決金・養育費など)の金額
などといった離婚問題全般の見通しなどについて、具体的なアドバイスを行なっています。
夫と離婚したいとお考えの際は、是非、お気軽にこちらからご連絡ください。
こちらも読まれています