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DV夫と離婚する際には、DV夫に対する慰謝料請求が認められる場合も多いです。
ただ、DV夫との間で離婚の話を進める前提として、まずはDV夫から自分と子どもの身の安全を確保しなければならない場合があります。
DV夫の暴力から自分と子どもの身を守るための制度として、配偶者暴力防止法(DV防止法)は保護命令という制度を定めています。
この記事では、保護命令の種類や保護命令がどのような仕組みでDV夫からあなたや子どもの安全を確保しているのか(保護命令を獲得した後の流れ)を解説しています。
このページの目次
1.保護命令とはDV夫からあなた自身や子どもを守るための制度です
DVは「ドメスティック・バイオレンス(domestic violence)」の頭文字であり、日本語で言うと「家庭内暴力」です。
DVは本来愛し守るべき存在であるはずの配偶者に対して行われる攻撃であり、絶対にあってはならないはずの最悪の行動です。
配偶者暴力防止法(DV防止法)は、DVの被害から被害者を守るために保護命令という制度を定めています。
保護命令とは、DV夫による暴力から被害者である配偶者などを守るために、裁判所がDV夫に対して出してくれる命令です。
保護命令が出されると、相手方(加害者)はあなた自身や子どもに接近したり連絡したりすることができなくなります。
2.保護命令の種類
保護命令には、以下の5種類があります。
- 接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)
- 子への接近禁止命令(DV防止法10条3項)
- 親族等への接近禁止命令(DV防止法10条4項)
- 電話等禁止命令(DV防止法10条2項)
- 退去命令(DV防止法10条1項2号)
以下で詳しく解説します。
①接近禁止命令(DV防止法10条1項1号)
接近禁止命令は、相手方(加害者)に対して、配偶者(被害者)に接近することを禁止する命令です。
これが出ると、相手方(加害者)は、配偶者(被害者)の身辺につきまとったり、配偶者(被害者)の住んでいる住居や勤務先などの配偶者(被害者)が通常所在する場所の付近をはいかいしたりすることが禁止されます。
②子への接近禁止命令(DV防止法10条3項)
子への接近禁止命令は、相手方(加害者)に対して、子どもに接近することを禁止する命令です。
これが出ると、相手方(加害者)は、子どもの身辺につきまとったり、子どもの住んでいる住居や学校などの子どもが通常所在する場所の付近をはいかいすることが禁止されます。
③親族等への接近禁止命令(DV防止法10条4項)
親族等への接近禁止命令は、相手方(加害者)に対して、配偶者(被害者)の親族等に接近することを禁止する命令です。
これが出ると、相手方(加害者)は、配偶者(被害者)の親族等の身辺につきまとったり、配偶者(被害者)の親族等の住んでいる住居や勤務先などの配偶者(被害者)の親族等が通常所在する場所の付近をはいかいしたりすることが禁止されます。
なお、配偶者(被害者)の親族だけなく、配偶者(被害者)と社会生活において密接な関係を有する者(例えば、配偶者(被害者)の味方をしてくれている友人や勤務先の同僚等)も親族等として保護を受けられる場合もあります。
④電話等禁止命令(DV防止法10条2項)
電話等禁止命令は、相手方(加害者)に対して、下記の行為を禁止する命令です。
- 面会を要求すること。
- 行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又は行動を監視していることを示唆する(行動を監視しているということを知り得る状態に置く)こと。
- 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
- 無言電話をかけたり、止むを得ない事情がないのに必要のないのに連続して電話をかけたりFAX・メールを送信したりすること。
- 止むを得ない事情がないのに午後10時から午前6時までの間に電話をかけたりFAXを送信したりすること。
- 著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物(汚物や動物の死体など)を送りつけたり、見えるところに置いたりすること。
- 名誉を害するようなことを告げたり、名誉が害されている状況にあることを示すなどすること。
- 性的な羞恥心を害する事項を告げたり、そのようなことを示したり、性的な羞恥心を害する文書・図画などの送り付けたり、見えるところに置いたりすること。
⑤退去命令(DV防止法10条1項2号)
退去命令は、相手方(加害者)と同居している場合などの場合に、相手方(加害者)に対して住居からの一時退去を命じる命令です。
これが出ると、相手方(加害者)は、その住居から退去した上、2か月間その住居に戻ってきたりその住居の付近をはいかいすることが禁止されます。
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3.保護命令の流れ
保護命令の流れを説明します。
- 警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)などへの相談
- 保護命令の申し立て
- 地方裁判所での審理
- 裁判所による保護命令の発令
- 裁判所から警察本部に連絡
- 警察本部から申立人に連絡・申立人の管轄の警察署に連絡
- 申立人の管轄の警察署が対応の準備・相手方に連絡して指導
- 逮捕・刑事罰(相手方(加害者)が保護命令に違反した場合)
①警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)などへの相談
保護命令の申し立てを行う前に、まずは申立人(加害者)からの暴力被害に関して、警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)などに相談をする必要があります。
②保護命令の申し立て
保護命令は、地方裁判所に保護命令を申し立てることとなります。
保護命令の申し立てに関して詳しくは、以下の記事をご確認ください。
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③地方裁判所での審理
保護命令の申し立てを受けた地方裁判所は、通常、相談先(警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター))などから相談歴などを取り寄せて確認したり、配偶者(被害者)と面接をして事実などを確認したりした上で、相手方(加害者)を裁判所に呼び出します。
そして、相手方(加害者)から事実を聞いたり相手方(加害者)の意向や意見を聞いたりした上で(審尋手続)、保護命令の発令をするかどうかを検討します。
④裁判所による保護命令の発令
地方裁判所が保護命令を発令するべきであると考えた場合には、地方裁判所は、配偶者(被害者)が発令を求めた保護命令の全部または一部について、保護命令を発令します。
なお、保護命令は可能な限り速やかに発令をする必要性が高いため、「裁判所は、保護命令の申立てに係る事件については、速やかに裁判をするものとする。」とされています(DV防止法13条)。
⑤裁判所から警察本部に連絡
地方裁判所は保護命令を発令した後、すぐに警察本部に連絡をして、保護命令の内容を伝えます。
⑥警察本部から申立人に連絡・申立人の管轄の警察署に連絡
地方裁判所から保護命令の内容を伝えられた警察本部は、配偶者(被害者)に連絡して状況を確認した上、申立人(被害者)の居所を管轄する警察署に連絡します。
⑦申立人の管轄の警察署が対応の準備・相手方に連絡して指導
警察本部から連絡を受けた管轄の警察署は、相手方(加害者)に連絡をして保護命令の内容を説明して絶対に守るように強く指導・監視したり、相手方(加害者)が万一申立人(被害者)の別居先に押しかけてきた時の緊急の対応の準備をしたりします。
⑧逮捕・刑事罰(相手方が保護命令に違反した場合)
警察からの指導・監視にも関わらず相手方(加害者)が保護命令に違反する行動をした場合には、相手方(加害者)は逮捕されて刑事罰(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の制裁を受けることとなります(DV防止法29条)。
4.保護命令により相手方(加害者)の行為が禁止される期間
接近禁止命令の禁止の効力は6か月間継続します。
また、子への接近禁止命令、親族等への接近禁止命令、電話等禁止命令(DV防止法10条2項)も、接近禁止命令の禁止の効力の継続期間中は同様に効力が継続します。
他方、退去命令の効力の継続期間は2か月と短く、その2か月の間に相手方(加害者)の知らない場所に引っ越しをするなどして、相手方(加害者)から身を隠す必要があります。
これらの期間の経過後も禁止の効力の継続が必要な場合には、期間が経過する前に改めて警察や配偶者暴力相談支援センター(DVセンター)などに相談をした上で、地方裁判所に保護命令を申し立てる必要があります。
5.DVと離婚問題
DVは夫婦の信頼関係を破壊する行為であり、離婚を決意するに足りる十分な理由になります。
さらに、相手(加害者)に対して慰謝料請求が認められる場合も多いです。
ただ、DV夫との間で離婚の話し合いを進めていくことは精神的にとても辛いことです。
このような相手との離婚問題に関しては、特に弁護士に依頼するメリットが大きいと言えます。
依頼を受けた弁護士は、まずはあなたの日常生活の平穏を確保するために、必要に応じて上記の保護命令を申し立てたり、DV夫に対して、あなたの自宅・実家・職場への連絡・来訪を固く拒否する旨を通告し、今後の連絡は全て弁護士に対してするよう強く要請します。
また、弁護士に依頼をすれば、今後一切DV夫と会うことなく離婚を成立させることも可能です。
レイスター法律事務所では、無料相談にて、DV被害の程度や現在の具体的な状況を踏まえて、早期かつ好条件での離婚成立のために最適な離婚交渉の方針や交渉戦略、離婚成立までの婚姻費用(生活費)の具体的な金額、想定される離婚条件(財産分与・慰謝料・解決金・養育費など)の金額などといった離婚問題全般の見通しなどについて、具体的なアドバイスを行なっています。
配偶者との離婚をお考えの際は、是非、お気軽にこちらからご連絡ください。