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「パパ活」とは、一般に、女性が男性と一緒の時間を過ごし、その対価を得る活動のことを言います。
夫がパパ活を利用し、対価を支払って女性とデートしていたことは、妻にとっては許しがたいものでしょう。
夫が妻に隠れてパパ活を利用することは妻の信頼を裏切る行為であり、夫婦の婚姻関係の破綻につながるものであって、離婚問題が持ち上がる十分な理由になるものですし、不倫慰謝料請求ができる場合もあります。
この記事では、そんな隠れパパ活夫に対する慰謝料請求と離婚問題について解説します。
このページの目次
1.パパ活とは
「パパ活」とは、一般に、女性が男性と一緒の時間を過ごし、その対価を得る活動のことを言います。
近年、「パパ活」という言葉が急速に社会に浸透し、パパ活でお小遣い稼ぎをしている女性は急増し、パパ活を利用する男性も増え続けている傾向にあります。
統計上明確な数字が出ているものではありませんが、既婚者である男性の利用者も増え続ける傾向にあることは容易に想定できるところです。
つまり、夫がパパ活を利用して対価を支払って女性と遊んでいる状況にある妻の数が、年々増えているという状況です。
この記事ではパパ活の具体的な内容に触れた上、夫がパパ活を利用していた場合の慰謝料請求・離婚問題について解説します。
2.パパ活の具体的な内容
パパ活は、女性が男性と食事やドライブ、カラオケやテーマパークなどでの遊興(デート)を一緒に行う時間を共有するものです。
利用する男性は女性と様々な経験を共有して楽しむことを目的とし、女性はその対価を得ることを目的としています。
パパ活は、遊興の過程で手を繋いだり、肩を寄せたりということもよくあるようですが、あくまで性行為や性的な接触行為は一切行わないことを前提とした活動のはずです。
パパ活の見返りとして取得する金員は、あくまでもそのような遊興の時間を共有したことの対価としての報酬金です。
この点で、性行為や性的な接触行為の対価を得る活動である売春行為(いわゆる援助交際)とは全く違います。
しかしながら、実態としては、パパ活という名の下で売春行為が行われることも多いです。
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3.パパ活を理由とする不倫慰謝料請求の可否
夫がパパ活を利用していたことが判明した場合、夫の配偶者(妻)は、夫や相手の女性に対して不倫慰謝料請求をすることができるのでしょうか。
⑴夫と女性との間に性行為がない場合
不倫とは配偶者以外の異性と性行為又はその類似行為を行うことを言いますので、夫と女性との間に性行為がない場合には不倫には当たりません。
そのため、そのような場合に、夫や相手の女性に不倫慰謝料を請求することは困難です。
ただし、「性行為があったかなかったか」が争いになった場合には、最終的には性行為の存否は裁判所が判断することとなります。
その際、裁判所は、性行為が存在していた可能性が高いと考えられる状況にあったことが証拠上明らかとなれば、実際には性行為はなかったとしても、性行為が存在していたと認定する可能性があります。
例えば、以下のような証拠が存在している場合には、裁判所は性行為が存在していたと認定する可能性が高いです。
裁判所が性行為が存在していたと認定する可能性が高い証拠の例
- ラブホテルに出入りしていることを証明する写真など
- 2人きりで宿泊を伴う旅行に出かけたことを証明する写真や、旅館・ホテルの領収書など
- いずれかの自宅に長時間滞在・宿泊したことを証明する写真など
このような場合は、本当に性行為をしていなかったとしても、裁判所が性行為をしたものと認定し、不倫慰謝料が認められる可能性があります。
⑵夫と女性との間に性行為がある場合
夫と女性とが性行為をしていた場合には、不倫慰謝料が発生します。
不倫慰謝料の相場金額は、不倫によって夫婦の婚姻関係がどのような状況に至ったのかによって50万円程度から300万円以上までかなりの差があります。
このような大幅な慰謝料金額の差がある理由は、裁判所は個別具体的な増減事由を考慮して不倫慰謝料の金額を決定しているためです。
不倫の慰謝料の金額に関しては、一般に、以下の事情があるケースでは、慰謝料の金額が高額となる可能性があります。
不倫慰謝料の金額が高額となる可能性があるケース
- 不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻したケース
- 不倫前の夫婦関係の状況が円満であるケース
- 不倫開始時点での婚姻期間が長いケース
- 不倫の期間が長いケース
- 夫婦間に幼い子どもがいるケース
- 不貞発覚後に被害者に対して不誠実な対応(謝罪しない、開き直る、攻撃的な態度をとるなど)をしたケース
- 相手の子どもを妊娠しているケース
また、一般に、以下の事情があるケースでは、不倫慰謝料の金額が減額される可能性があります。
不倫慰謝料の金額が減額される可能性があるケース
- 夫婦の婚姻関係が破綻していないケース
- 婚姻期間が短いケース
- 不倫の期間が短いケース
- 既に不倫の関係を清算しているケース
- 不倫発覚後に誠実に謝罪をしていたケース
- 不倫慰謝料の請求者が社会的相当性を欠く行為(脅迫や名誉毀損行為など)をしているケース
- 不倫の開始の時点で夫婦の婚姻関係が円満ではなかったケース(特に事情次第で大幅な不倫慰謝料の減額を認める場合がある)
- (女性に対する請求)不倫をした配偶者が不倫関係に積極的であったケース
- (女性に対する請求)不倫をした配偶者が上司・先輩など目上の存在であったケース
- (女性に対する請求)不倫をした配偶者が相当に年上であったケース
- (女性に対する請求)不倫の開始の時点で既婚者であることを知らなかった(後から知ったが不倫関係を継続した)ケース
- (女性に対する請求)不倫慰謝料が不倫をした配偶者には請求されていないケース
- (女性に対する請求)不倫をした配偶者が既に不倫慰謝料を支払っているケース
ただ、実際には、裁判所は、これ以外にも実に様々な事情を拾い上げて不倫慰謝料の金額の増減を調整しています。
不倫が原因で離婚した場合に裁判所が認めている慰謝料の金額や、裁判所がどのような事情を慰謝料の増額・減額の事情として判断しているのかについて詳しくは、以下の記事をご確認ください。
裁判所が認めている金額や増減事情
① 夫婦が同居を続けた場合
【不倫慰謝料の相場】夫婦が同居を続けた場合に裁判所が認めている金額
② 夫婦の婚姻関係が破綻した場合
- 夫婦が離婚した場合
【不倫慰謝料の相場】不倫が原因で離婚した場合に裁判所が認めている金額 - 未だ離婚していない状況にある場合
【不倫慰謝料の相場】裁判で最も高額の不倫慰謝料が認められ得るパターン
性行為の相手が既婚者だと知らなかった場合の不倫慰謝料責任
性行為を行なった相手が既婚者であることを知らず(故意がない)、かつ、既婚者ではないと信じたことが不注意とも言えない(過失がない)場合は、不倫慰謝料責任は発生しません。
そのため、夫のパパ活の相手女性が、夫が既婚者であることを知らず、かつ、夫が既婚者ではないと信じたことが不注意とも言えない場合には、相手の女性に対して不倫慰謝料請求をすることはできません。
他方、女性に対して不倫慰謝料請求ができない場合であっても、性行為をした夫に対する不倫慰謝料請求は当然認められます。
4.パパ活を利用していた夫との離婚の進め方
夫がパパ活を利用して女性と遊んでいたことは、妻としては大変なショックを受けることです。
夫が女性と性行為に及んでいた場合には、夫は違法な売春行為に手を染めたということであり(売春防止法3条)、さらに夫の相手の女性が未成年者であった場合には、夫は未成年者誘拐罪(刑法224条)・わいせつ目的誘拐罪(刑法225条)・青少年健全育成条例、児童買春禁止法、児童ポルノ禁止法、児童福祉法など様々な法律・条例に違反する行為となる可能性のある行為を行なったということです。
もしかしたら夫は女性の保護者や配偶者(女性が既婚者であった場合)から慰謝料請求を受けているかもしれません。
夫が女性と性行為や性的な接触行為を行なっていた場合にはもちろんそうですが、夫がそのような行為を行なっていなかったとしても、夫のことを許せないと思い、離婚を考えることもあり得るものです。
以下では、パパ活を利用していた夫との離婚の進め方について、説明します。
⑴協議離婚
夫が離婚に合意している場合には、夫と離婚条件などを話し合って、協議離婚(離婚すること及び離婚条件について夫婦が話し合って合意して離婚を成立させる離婚の方法)の形で離婚問題を解決することで目指すことで良いでしょう。
また、夫との直接のやり取りをしたくない場合には、弁護士に依頼をすることで、夫と直接やり取りをすることなく協議離婚を成立させることが可能です。
なお、夫が離婚に合意しなかったり、離婚条件に関して夫との話し合いが難航しそうであったりする場合には、別居ができる状況であれば早めに別居を開始することが良い場合が多いです。
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ただし、離婚を成立させる(離婚届を提出する)前に、離婚条件は明確に取り決めておく(離婚条件の合意が成立した後に離婚届を提出する)ことを、強くお勧めします。
また、離婚条件の取り決めは、書面(離婚協議書)により行い、可能な限り公正証書にしておくことを強くお勧めします。
⑵調停離婚
夫が離婚を拒否していたり、離婚条件についての話し合いがまとまらなかったりする場合には、離婚調停を申し立てて、調停委員を間に入れて離婚の話し合いを進めていくこととなります。
離婚調停では、調停委員が離婚に合意しない方を離婚に合意させようと必死に検討してくれることもあり、全体の半数近く(離婚調停中に協議離婚が成立した場合も含む)で離婚の合意が成立しており、離婚調停に弁護士が関与している場合にはさらに離婚合意の成立率は高まります。
⑶裁判離婚
離婚調停で話し合ってもなお夫との間で合意が成立しなかった場合には、離婚するためには離婚裁判を提起することが必要です。
離婚裁判では、裁判所が法定離婚原因が存在していると判断すれば離婚判決が出されますし、裁判所が法定離婚原因が存在していないと判断すれば離婚請求の棄却判決が出されます。
法定離婚原因は、以下の5つです。
法定離婚原因(民法770条1項)
- 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
- 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
- 「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
- 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
- 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)
この中で、夫がパパ活をしていた場合に問題となり得る離婚原因は、以下の2つです。
①「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
⑤「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)
夫がパパ活で女性と性行為を行なっていた場合には、①「不貞な行為があったとき」(1号)との法定離婚原因が存在していますので、夫がどれほど離婚を拒否していたとしても、離婚判決が出されることとなりますし、慰謝料請求も通常認められることとなります。
他方、夫が女性と性行為をしていなかった場合には⑤「婚姻を継続し難い重大な事由」(5号)との離婚原因が存在するかどうかの争いになります。
5.「パパ活」なのか不倫なのかが分からないことも多い
パパ活は本来、性行為や性的な接触行動を前提としない活動ですが、側から見ればそれがパパ活なのか「パパ活」という名の売春行為なのかが分からないような状況も多々あります。
夫が女性とデートを繰り返していたことが判明した際、夫は実際には女性と性行為を行なっていたとしても、夫から「パパ活であって不倫などしていない!」「ただ一緒に遊んだだけだ!」「相談に乗ってあげていただけだ!」などと言い訳を言われる場合も想定されるところです。
そのような疑わしい行動をしている夫に愛想が尽き、離婚を決意した場合に問題となってくることが、「不貞」(配偶者以外の異性と性交渉又はその類似行為を行うこと)の証拠の有無です。
裁判所が「不貞」の事実を認めてくれるだけの証拠があるかどうかで、離婚問題や不倫慰謝料請求の進め方は相当異なってくることがあります。
レイスター法律事務所では、手持ちの証拠の状況や別居できる状況にあるかどうか、婚姻費用の金額などの状況がどのようなものかなどの個別具体的な事情に基づいて、経済的利益を最大化するためにはどのような視点で離婚問題を進めることが最も良い方法かなどについて、具体的かつ実践的なアドバイスを行なっています。
夫のパパ活でお悩みの際は、一人で悩まず、こちらからお気軽にご連絡ください。