浮気・不倫の示談書に接触禁止の誓約条項と違約金を定める効果

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浮気相手に接触禁止を誓約させて浮気の再発防止

 浮気・不倫の示談書や合意書の中で、配偶者との連絡や接触をしない旨の誓約条項が取り決められることがあります。
 配偶者の浮気・不倫相手に配偶者との連絡・接触禁止の誓約をしてもらうとともに、誓約違反の違約金の取り決めもしておくことで、配偶者との関係を続けることに大きなリスクを課すことができ、そのような大きなリスクのある配偶者との関係を諦めさせることが期待できます。
 この記事では、浮気・不倫の示談書や合意書において接触禁止の誓約条項や違約金を取り決めることの効果について詳細に解説します。

1.接触禁止の誓約条項とは

浮気・不倫の示談書や合意書の中で、配偶者との連絡や接触をしない旨の誓約条項が取り決められることがあります。

配偶者の浮気・不倫の発覚を受け、浮気・不倫をした配偶者と離婚するかしないかを悩んだ末に、離婚しないとの選択をした場合には、配偶者との関係性を修復・改善していくことが必要となります。

配偶者との関係性を修復・改善するためには、まず何より、浮気・不倫の再発防止の誓約をしてもらうことが必要です。

浮気・不倫をした配偶者が以後絶対に浮気・不倫をしないと固く誓約し、その誓約を貫くのであれば再発は起きないでしょう。

しかし、一度浮気・不倫の関係となった異性との関係には一定の特殊性があり、肉体的接触を行うことに対するお互いの心理的なハードルが低い状況ですので、きっかけがあれば再度浮気・不倫の関係に至ってしまいやすいものです。

そのことを防止するためには、配偶者の浮気・不倫相手を配偶者に近寄らせないようにすることが効果的です。

接触禁止の誓約条項は、配偶者の浮気・不倫相手を配偶者に近寄らせないようにして、浮気・不倫の再発を防止するために、配偶者の浮気・不倫相手との間で取り交わす約束事です。

2.接触禁止の誓約条項の例文

接触禁止の誓約条項の具体的な例文は、例えば以下のものです。

接触禁止の誓約条項の例文

 乙(不倫相手)は、正当な権利行使の場合を除いて、丙(あなたの配偶者)と面接、架電、手紙・葉書、電子メール等いかなる手段においても一切連絡・接触しない。

3.接触禁止の誓約条項に違反した場合の効力

⑴接触禁止の誓約条項違反を理由とする慰謝料の請求

配偶者の浮気・不倫相手が接触禁止の誓約条項に違反した場合には、それによって被った精神的苦痛などの損害の賠償(慰謝料)を請求することができます

⑵浮気・不倫が再発した場合の慰謝料の請求が有利になる

万一浮気・不倫が再発した場合には、配偶者の浮気・不倫相手に対して、改めて慰謝料請求をすることができます

その際、接触禁止の誓約条項が存在することによって、以下の2つの効果が期待できます。

不倫再発の際の接触禁止の誓約条項の効力

  1. 慰謝料の金額が増額になる可能性
  2. 慰謝料の金額の減額・慰謝料請求が認められない事態の回避

①慰謝料の金額が増額になる可能性

あえて接触禁止の誓約条項を取り交わしていたにも関わらずあなたの配偶者と接触した上で再度不倫の関係に至ったという点で再度の不倫の悪質性が格段に高まります

そのような事情は不倫の慰謝料の増額事由となりますので、認められ得る慰謝料の金額はその分高額となる可能性があります。

裏を返せば、浮気・不倫が再発した場合の責任が重くなるということですので、そのことは浮気・不倫の再発の防止につながります。

②慰謝料の金額の減額・慰謝料請求が認められない事態の回避

不倫の慰謝料請求は、不倫という行為によって婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益が侵害されたことに対する賠償請求です。

簡単にいうと、不倫されたせいで夫婦の円満な関係性がダメージを受けたことに対する損害賠償です。

そのため、不倫されたとしても、不倫が開始した時点で既に夫婦の婚姻関係が円満ではなかった場合には、そのような事情は慰謝料の金額が減額される事情と考えられています。

また、不倫が開始した時点で既に夫婦の婚姻関係が破綻していた場合には、不倫の慰謝料請求が認められなくなる場合があります。

例えば、一度目の浮気・不倫を受けて夫婦の婚姻関係が完全に破綻していた場合には、それ以降に始まった再度の浮気・不倫に対する慰謝料請求は認められない可能性が高いです。

ここで、一度目の不倫の示談書の中に接触禁止の誓約条項が存在していたとすれば、一度目の浮気・不倫の際には未だ夫婦の婚姻関係は破綻しておらず夫婦の婚姻関係を継続していくことを選択したものであろうことが客観的に推測することができます。

そのため、接触禁止の誓約条項が存在していない場合よりも存在していた場合の方が、浮気・不倫が再発した場合に、慰謝料の金額が減額されにくくなりますし、慰謝料請求が認められないことともなり難いといえます。

裏を返せば、浮気・不倫が再発した場合の責任を回避し難いということですので、そのことは浮気・不倫の再発の防止につながります。

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4.接触禁止の誓約条項に違反した場合の違約金を定めよう

⑴違約金を定めることで浮気・不倫の再発防止の効力が大幅にアップする

配偶者との関係性を修復・改善するために最も重要なことは、配偶者の浮気・不倫相手に接触禁止の誓約を破らせないことです。

そのために極めて有効なのが、接触禁止の誓約条項に違反した場合の違約金を定めることです。

具体的な接触禁止の誓約条項違反の違約金の例文は、以下のものです。

接触禁止の誓約条項の違約金の例文

 乙(不倫相手)は、●項(接触禁止条項)に違反した場合には、甲(不倫された配偶者)に対して、違約金として、以下の金員を支払う。
・連絡した場合 1回につき10万円
・接触した場合 1回につき50万円

このような違約金の定めは、法律上、損害賠償額の予定であると考えられており、裁判所は基本的に定められた通りの損害賠償金額を認めます (民法420条)。

民法420条

1項
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。

2項
賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。

3項
違約金は、賠償額の予定と推定する。

上述したように、配偶者の浮気・不倫相手が接触禁止の誓約条項に違反した場合には、違約金の定めが存在していなかったとしても、接触禁止の誓約条項の違反によって被った精神的苦痛などの損害の賠償を請求することができます。

ただ、その場合の損害の金額がいくらであるのかは、損害賠償請求をする方が主張して裁判所に分かってもらわなければなりません。

その際に、違約金の定めが存在している場合であれば、その損害の金額は事前に定められた違約金の金額であるということになります

その結果、あなたは、接触禁止の誓約条項に違反した配偶者の浮気・不倫相手から「接触禁止の誓約条項には違反したけれど別に連絡を取っただけでそんな高額の慰謝料の請求が認められるはずはない」などといった言い逃れを受けることなく、約束した通りの違約金を受け取ることができるようになるわけです。

具体例で解説 

事例

  1. 配偶者の浮気・不倫相手との間で、「連絡した場合 1回につき10万円」「接触した場合 1回につき50万円」との接触禁止条項の違約金を取り決めていた
  2. それにも関わらず、配偶者の浮気・不倫相手が、配偶者と5回連絡を取っており、2回一緒に食事に出かけていたことが発覚した
  3. ただし、再度不倫した(肉体関係を持った)わけではなかった

違約金の発生

⇨具体的な損害額を立証することなく、配偶者の浮気・不倫相手に対して、原則として、以下の損害賠償金を請求することができる

  1. 5回の連絡×10万円=50万円
  2. 2回の食事×50万円=100万円
    合計:150万円

配偶者の浮気・不倫相手に対して、配偶者との関係を継続することにこのような大きなリスクを課すことで、配偶者との関係を諦めさせることが期待できます。

このように、接触禁止の誓約条項に違反した場合の違約金を定めておくことで、接触禁止の効力を大幅にアップさせることができます

⑵違約金の金額が高額すぎると無効になることがある

違約金の金額は、配偶者の浮気・不倫相手が合意するのであれば、1000万円でも1億円でも合意したということにはなります。

しかしながら、あまりにも高額すぎる違約金の定めは、法律上、公序良俗に違反しているという理由で、一定額以上の金額が無効(民法90条)となる可能性があります

裁判例の概ねの傾向としては、連絡行為については総額で50万円〜100万円程度、接触行為については総額で100万円〜150万円程度であれば、公序良俗に違反するとはされ難いと思われます。

ただ、裁判所では、当事者の関係性や合意の経緯(当事者のいずれが違約金の金額を提示したものかなど)、浮気・不倫相手の資金力などの経済的状況など様々な事情を踏まえて判断しますので、一概にどの程度の金額までであれば認められるのかが決まっているものではありません。

裁判例

東京地方裁判所判決平成17年11月17日

事案
今度不倫したら5000万円を支払うとの合意が存在していた

裁判所の判断
1000万円を超える金額は公序良俗に違反するために無効である(1000万円の限度で効力を認める)と判断した


東京地方裁判所判決平成25年12月4日

事案
連絡や面会などをしたら1000万円を支払うとの合意が存在していた

裁判所の判断
連絡や面会などに対する損害賠償金額はその態様が悪質であってもせいぜい50万円〜150万円程度であると考えられるから、150万円を超える金額は公序良俗に違反するために無効である(150万円の限度で効力を認める)と判断した

⑶接触禁止の誓約条項に違反したという事実を示す証拠が必要

配偶者の浮気・不倫相手が接触禁止の誓約条項に違反したとしても、その誓約違反の証拠がなければ言い逃れをされてしまいかねません

特に、一旦浮気・不倫が発覚し、しかも接触禁止の誓約条項や違約金の合意までしている状況であれば、その上であえて接触行為を行う際は、極めて慎重になり、接触行為が発覚しないように重々注意して行うものです。

そのため、浮気・不倫の再発を防止するためには、配偶者の浮気・不倫相手に対して、万一配偶者と連絡・接触をした場合にはその証拠を確保できる状況を整えているということを理解させておくことが重要です。

浮気・不倫相手に対して、その真偽はともあれ、配偶者と連絡をしたり接触をしたりした場合にはそのことが発覚してしまう可能性があると思わせるだけで、配偶者との連絡や接触を差し控える強い抑止的効果が期待できます

なお、実際に配偶者の浮気・不倫相手から配偶者に対する連絡・接触行為の証拠を確実に確保するためには、配偶者の協力が必要です。

ここで注意が必要なのは、例えばあまり強く配偶者の生活などに制約を課す(例えば自由に使えるお金を全く持たせない、仕事中にも関わらす連絡・報告を徹底させる、パソコンやスマホなどを徹底的に管理するなど)ことをしてしまうと、配偶者との関係性を修復・改善することができなくなるばかりか、むしろ夫婦の婚姻関係がどんどん悪化していってしまう可能性があるということです。

浮気・不倫をしていた配偶者としても、最初は本気で夫婦の関係性を修復・改善したいと考えて努力をしていたとしても、いつまでも責められ、ギスギスした窮屈な暮らしに耐えかね、いつまでも修復・改善しそうもない夫婦の状況に精神的に追い詰められて、夫婦の関係性の修復・改善を諦め、自宅に帰宅しなくなったり、別居に及んだりする例も少なくありません。

目標はあくまでも配偶者との関係性の修復・改善ですので、やり過ぎには注意です

5.配偶者と離婚した場合の効果

配偶者の浮気・不倫相手との間で接触禁止の誓約条項や違約金の合意をしていたとしても、その効力が続くのは配偶者との婚姻期間中だけに限られます。

配偶者と離婚した場合は、夫婦は相互に貞操義務(他の異性と性的な結合関係を結ばないという義務)を負わなくなりますので、配偶者の他の異性との関係を制限することや、配偶者に接触してくる他の異性の行動を制限することの根拠を失うこととなります。

そのため、たとえ離婚した後も接触を禁止するとか、離婚した後も交際を禁止するとか、離婚した後に再婚をすることを禁止するなどとの誓約条項を定めていたとしても、そのような誓約条項は無効であると考えられています。

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6.配偶者の浮気・不倫相手との交渉により見えてくる本心を受けて

配偶者の浮気・不倫相手は、あなたからの慰謝料請求を受けて、あなたに対して一見して誠実に謝罪をしてくるかもしれません。

しかし、配偶者の浮気・不倫相手の謝罪の言葉ははただの言葉に過ぎず、本当のところ浮気・不倫をしてしまったことを心から反省をしているとは限りません

配偶者の浮気・不倫相手の本心としては、往々にして慰謝料をできるだけ減額したいとしか考えていなかったり、ほとぼりを早く冷ましたいとしか考えていなかったりするものです。

さらには、配偶者の不倫相手があなたの配偶者に対して恋愛感情を有していた場合には、今後は絶対にバレないようにもっと慎重に浮気・不倫の関係を続けようとか、バレない連絡手段をどうやって確保しようかとか、この機会に略奪婚に至るべくどうにか離婚させられないかなどと知恵を巡らせているかもしれません。

そこで、配偶者の浮気・不倫相手に対して、接触禁止の誓約条項の取り決めや違約金の合意を強く求めてみることで、配偶者の浮気・不倫相手の本心をある程度推し量ることが可能です

特に配偶者の浮気・不倫相手が高額の違約金にまで特段の異議を述べることなく二つ返事で合意するのであれば、本当に今後は配偶者と接触したり連絡をしたりする気持ちがないと考えることもできるでしょう。

ただ、時折、何かと理由を付けて接触禁止の誓約条項の取り決めに応じなかったり、接触禁止の誓約条項の取り決めには応じるものの違約金の合意だけは絶対に応じなかったりする場合があります。

その場合は、裁判所は接触禁止の誓約条項や違約金の取り決めをしてくれませんので、相手が合意しない以上は接触禁止の誓約条項も違約金の取り決めも実現しません。

そのような場合は、そのような配偶者の浮気・不倫相手との交渉により見えてきた本心を踏まえて、配偶者を信じて配偶者とやり直していくために自分にとって必要なことや、配偶者との間で今後の生活において必要なルールについて検討しなければならないでしょう。

7.夫婦の関係性を修復・改善するためにはやり過ぎに注意!

浮気・不倫をしていた配偶者との関係性の修復・改善のためには、浮気・不倫の再発の防止は当然必要なことです。

ただし、他方において、配偶者に対して過度の制約を課すようなことは、夫婦の関係性の改善には繋がらず、むしろ悪化していく原因となりかねないものですので、注意が必要です。

浮気・不倫をした配偶者もやり直したいと考えており、浮気・不倫をされた配偶者もやり直したいと考えているのに、どうにもうまく行かず、夫婦間の溝が広がってしまい、最終的には夫婦の婚姻関係が完全に破綻してしまうことは本当に多いことです。

レイスター法律事務所では、無料相談において、配偶者の浮気・不倫が発覚した場合に何をするべきか、どのような選択肢が存在しているか、理想の将来を実現するためにできることは何か、注意するべき点は何かなどについて、現在の状況を踏まえて、具体的なアドバイスを行なっています。

配偶者の浮気・不倫が発覚してお悩みの際は、一人で悩まず、是非こちらからお気軽にご連絡ください。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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