離婚問題のポイント
POINT 離婚問題を有利に進めるためのポイント
離婚するためには、相手との話し合いや
交渉のステップが必要となります。
あなたは離婚する意思が固まっていたとしても、相手が離婚に合意しない場合には、どのように相手に離婚に合意してもらうのかといった困難な問題に直面します。 離婚自体の合意を得て、ようやく離婚に向けて話し合いが進み始めたとしても、その先には、財産分与、離婚慰謝料、養育費、婚姻費用、親権、面会交流の条件などといった「離婚条件」をどうするのかといった問題が控えています。 そして、離婚するまでの間に、それらの問題点の一つ一つについて、相手との話し合いや交渉のステップが必要となります。 さらには、相手が離婚すること自体に合意しなかったり、離婚条件について合意が形成できなかったりする場合には、離婚調停の申立てや離婚訴訟の提起を検討しなければなりません。
POINT 01
離婚問題の全体像を把握する
「離婚問題」「離婚争い」と言葉で言われても、その全体像が分からなければいつまでも漠然とした不安が拭えません。
そのため、離婚問題を進める際に問題となり得る点(相手と話し合って合意していかなければならない点)の全体像を把握しておくことは極めて重要です。
子供に関すること
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未成年の子供の親権者
離婚のときには、未成年の子供の親権者を必ず夫婦のいずれか一方に決めなければなりません。 家庭裁判所に離婚調停(夫婦関係調整調停)を申し立てていた場合にも、親権をどちらが持つかが話し合いで決まらない限りは、調停は不成立で終了してしまいます。 調停が不成立となった場合は、離婚訴訟を提起して、最終的には裁判官が夫婦のいずれを親権者にするかを指定することになります。 なお、子供の年齢が15歳に近くなればなるほど子供の意思が尊重されるようになり、15歳以上の場合には子供の意思が最も重要な要素となります。 (逆に子供の年齢が低い場合には子供の意思はあまり尊重されない傾向にあります。)
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面会交流の条件(面会条件)
面会交流とは、子供と離れて暮らしている父母の一方(別居親)が子供と会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙などの方法で交流することをいいます。 そして、離婚の際には、別居親となる親と子供とがどのような条件で交流するかを話し合って決める必要があります。 夫婦で話し合って、子供にとって良く、かつ、現実的に実施可能な面会交流の形を検討していくこととなります。 夫婦で話し合いがつかなければ、家庭裁判所へ面会交流調停を申し立てることで、最終的には家庭裁判所調査官による調査を経て、裁判官が審判で面会交流の条件を決定することとなります。
お金に関すること
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財産分与
財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産(夫婦共有財産)を離婚の際に分け合う制度をいいます。 夫婦のいずれの名義の財産であっても、それが婚姻生活の中で築かれたものであれば夫婦共有財産として財産分与の対象となります。 夫婦で金額などの話し合いがつかず離婚条件の合意ができない場合には、話し合いは決裂し、離婚調停を申し立ててもなお合意できない場合には、離婚調停は不成立で終了することとなります。 その場合は、離婚訴訟を提起して、離婚裁判の中で双方が財産資料を提出し合った上で分与金額について争うこととなります。 ただし、離婚条件において財産分与の点のみが争いとなっており、他の条件については合意が成立している場合であれば、離婚のみ先行させる(「離婚は調停で合意するが、財産分与については別途財産分与調停を申し立ててそこで今後も話し合う」という方法を採用する)場合もあります。 その場合は、財産分与調停での話し合いが決裂したとしても、そのまま自動的に財産分与審判に移行して、財産分与の金額について裁判官が判断することとなります。
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婚姻費用(離婚までの間の生活費)
婚姻費用とは、夫婦が通常の社会生活を維持するために必要な費用(生活費、居住費、食費、医療費、学費など)のことをいいます。
別居中、収入が多い方の配偶者(義務者)は収入が少ない方の配偶者(権利者)に対して、婚姻費用を支払う義務を負います。 婚姻費用の具体的な額の算定は、家庭裁判実務上、婚姻費用算定表をベースとした金額で合意が成立することが圧倒的に多数です。 ただし、婚姻費用算定表はあくまでオーソドックスなパターンを想定して作成されていますので、婚姻費用算定表のみでは算定できない場合も多々あります。このような算定表で計算できないパターンに当てはまる方は、離婚問題に精通した弁護士へ相談されることを特におすすめします。 -
離婚慰謝料
離婚を求めている配偶者が、離婚を求められている配偶者から「離婚に合意するとしても慰謝料は支払ってもらいたい」と離婚慰謝料を請求されることはよくあります。 この場合は、離婚を求めている配偶者からすれば、 ①離婚慰謝料請求を突っぱねて離婚訴訟において離婚慰謝料の支払いのない形での離婚成立を目指すか、 ②一定の金員の支払いに合意して早期に離婚を達成するか といった判断が求められる場合もあります。 離婚するまでの期間が長くなれば長くなるほど支払わなければならない婚姻費用の総額が膨らんでいくという問題も踏まえ、複雑な判断が求められる場合も多いです。
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養育費
離婚により子供の親権を失った方の親(非親権者)が子供の生活のために負担するべき費用のことを養育費といいます。 養育費の具体的な額の算定は、家庭裁判実務上、養育費算定表をベースとした金額で合意が成立することが圧倒的に多数です。 ただ、養育費算定表で基準となる双方の収入金額や、養育費の支払いの期間(終期)などをめぐって争いが激化してしまう場合もあります。 あなたが親権者であり、養育費を受け取れる立場である場合には、あなたの子供のためにも、現在支払われている養育費や今後支払われる予定の養育費の金額が果たして適正であるのか、一度弁護士へ相談されることを強くお勧めします。
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年金分割
年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の払込分を夫婦で分割する制度です。 この制度を利用することで、他方配偶者の厚生年金の払込実績の一部を自分のものとすることができ、将来もらえる年金の金額を増額させることができます。 年金分割の割合は極めて例外的な場合を除いて2分の1となり、この点を争うことは現実問題として難しいでしょう。 また、年金分割の手続きをするためには、年金分割の割合を定めた公正証書・調停調書・審判書が存在する場合でない限り、元夫婦がそろって必要書類を年金事務所に直接持参して手続きを行うことが必要となります。 そのような事態を避け、年金分割を求める者のみで手続きを行えるようにするべく、年金分割の割合に関する合意内容を公正証書にしたり、年金分割の割合を調停や審判で定めたりする場合もあります。
POINT 02
離婚の同意の有無
相手が離婚に同意している(離婚する意思がある)場合には、あとは離婚条件について冷静に話し合いを進めることで、早期に協議離婚が成立する可能性があります。他方、相手が離婚を考えていない(離婚する意思がない)場合やむしろ離婚を拒否している場合は、相手にどうにか離婚に合意してもらわなければ、離婚訴訟で勝訴する以外に離婚することはできません。
そのため、相手が離婚を考えていない(離婚する意思がない)場合や離婚を拒否している場合は、弁護士などの第三者を間に入れて交渉を進めるか、離婚調停を申し立てるかして、相手との離婚の話を前に進めていくことが必要となります。 離婚調停においても相手が離婚に合意しないのであれば、後は離婚訴訟を提起して離婚を求めるか、現状のまましばらく動かないかの選択をせざるを得ないことになりますので、まずはどうにかして交渉・調停段階までで相手に離婚に合意してもらいたいところでしょう。 離婚するまでの期間が長くなれば長くなるほど支払わなければならない婚姻費用の総額が膨らんでいくという問題もあります。 調停段階までで相手からの離婚の同意を得るために、どの程度のコスト(慰謝料・解決金など)をかけることができるかという点の検討を求められることも多いです。
POINT 03
別居のタイミング
別居開始のタイミング
別居のタイミングは一般的に早ければ早い方が離婚問題を有利に進めることが可能です。 家庭裁判所は、離婚訴訟において、不倫やDVなどといった明確な離婚の理由が存在していなかったとしても、別居期間が概ね2年半〜3年以上に及んでいる場合には、「婚姻を継続に難い重大な事由」が存在するとして、離婚判決を出す場合が多いです。 逆に、家庭裁判所は、離婚訴訟において、夫婦が同居中の場合は、何らかの明確な離婚原因がない限り、なかなか離婚判決を出しません。
別居することの効果
また、別居することにより、婚姻関係からもたらされる精神的なメリットは喪失し、事実上離婚後・独身であるのと同じ生活が開始されるということです。 離婚を拒否している相手としては、そういった独身状態の生活が続くことによって、今後離婚を拒否し続けても決して同居・復縁となるものではないとの諦めが生じ、離婚に向けて気持ちが傾くこともあります。 離婚を求めている方としても、日々の生活状況は離婚したのと変わらない状況となるわけですから、同居中の状況よりも気持ちにも余裕が出てきます。 このように、離婚の進め方としては、早めに別居を開始することが極めて有用です。
DECISION POINT
決断のポイント
離婚裁判に進む前に、改めて自分の心を決める
相手が離婚すること自体には合意したものの、離婚条件を巡って対立が生じて離婚の合意が成立しない場合、最終的には離婚訴訟を提起して、離婚判決を求めて争っていくことが必要となります。ただ、相手との離婚条件を巡る話し合いが煮詰まり離婚の話し合いの最終局面に至った場合は、離婚訴訟に踏み込むのか、それとももう一つ譲歩して話し合いでの解決を目指すのかの点について、あらためて冷静になって自分の心を決めるべき時です。相手と対立しているポイントが離婚条件であり、しかも経済的な問題点のみであるならば、極論を言えば、相手が提示している離婚条件(相手が離婚に合意できるとしている離婚条件)を飲めば直ぐにでも離婚が成立するということです。しかし、それができないからこそ、ここまで争ってきたものでしょう。その結果、離婚を巡る話し合いは最終局面に至り、後は話し合いが決裂し、離婚調停が不成立となり、離婚訴訟を提起するかどうかの瀬戸際まできています。ここが、最後の分かれ道です。離婚訴訟を提起した場合のメリット・デメリットと、相手が提示している離婚条件に合意することのメリット・デメリットを、今一度冷静に検討してください。その上で、やはり相手が提示している離婚条件に合意できない場合には、腹を決め、離婚訴訟にて徹底的に戦っていきましょう。