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1.貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の具体的な流れ
貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の方法は、大きく分けて以下の2通りがあります。
①交渉で慰謝料請求をする方法
あなたを騙していた交際相手に対して貞操権侵害を理由とする慰謝料請求をすることを告知し、交際相手と交渉(話し合い)を行なって慰謝料の金額や支払方法・支払時期などの合意を取り付けて、交際相手から慰謝料を支払ってもらう。
②裁判で慰謝料請求をする方法請求をする方法
裁判所に対して交際相手を被告とした貞操権・人格権侵害を理由とする損害賠償請求訴訟を提起して、判決で慰謝料請求を認めてもらう。
いきなり②裁判で慰謝料請求をする方法を取ることもできますが、流れとしては、まずは①交渉で慰謝料請求をすることから始まり、相手が貞操権侵害を理由とする慰謝料の支払いに合意しない場合や、相手が合意できるとしている慰謝料の金額や条件に納得ができない場合には、②の裁判で慰謝料請求をする方法に進むとの流れになることが通常です。
2.①交渉で慰謝料請求をする方法のポイント
交渉で慰謝料請求をする方法としては、
・交際相手と対面・電話で口頭にて慰謝料請求をする方法
・交際相手に対して請求する内容を記載した書面を特定記録郵便や内容証明郵便で郵送して慰謝料請求をする方法
が考えられます。このいずれの方法が良いかは、場合によります。
- 交際相手と対面・電話で口頭にて慰謝料請求をする方法
まず、交際相手がすんなりと貞操権侵害を理由とする慰謝料請求に合意するのであれば良いですが、相手にも反論したいことがあったり、慰謝料を支払うこと自体には応じるもののその金額が納得できないと考えたりすることも多いです。
その場合は、交際相手と対面・電話で口頭にて慰謝料請求をする方法では、その場で交際相手からの反論を受け、交際相手と言い争いに発展してしまうこともあります。
その際、あなたが交際相手に言質を取られてしまったり、交際相手に対して感情的になってしまって後々交際相手から脅されたなどと言いがかりをつけらたりするなど、交際相手に付け入る隙を与えてしまうことになってしまう可能性があります。
また、交際相手からしたら、慰謝料請求をしてくるあなたは招かれざる客ですので、交際相手がどのような出方をするかが分からない場合には、交際相手と直接対面をすることはあらぬトラブルに発展してしまうリスクがあります。
- 交際相手に対して書面を郵送して慰謝料請求をする方法
書面を郵送するとの方法を取ることで、後から言った言わない論争に発展することや、聞き間違い言い間違いなどの言い逃れを確実に防止することができます。
加えて、交際相手に対して書面を特定記録郵便や内容証明郵便で郵送することにより、交際相手に郵便が届いた時期が明確となりますので、相手に対する慰謝料請求権の時効の完成が猶予されるとの効果もあります。
更に、弁護士に依頼をする場合には、法律事務所から弁護士名義で記載された書面が届くわけですから、相手に相当なプレッシャーを与えることができ、無視される可能性も低くなります。
そのため、一般論としては、交際相手に対して請求する内容を記載した書面を特定記録郵便や内容証明郵便で郵送するとの方法を取るべきです。
しかしながら、交際相手が家族と同居している場合には、交際相手の自宅に書面を郵送することで、交際相手の妻・夫に交際の事実が発覚するきっかけとなってしまう可能性があります。
交際相手の妻・夫が交際の事実を知った場合は、あなたに慰謝料請求をしてくる可能性がありますので、あえてそのようなリスクを犯すことは得策ではありません。
そのため、貞操権侵害を理由とする慰謝料請求の依頼を受けた弁護士としては、まずは交際相手にメールやショートメッセージなどで連絡して、慰謝料請求をする内容の書面を郵送する予定である旨を告知した上で希望の郵送先を聴取したり、交際相手に対して書面をメールで送付したりという方法を取る場合も多いです。
3.②裁判で慰謝料請求をする方法のポイント
裁判で慰謝料請求をする方法としては、
- 請求する金額が140万円以下の場合には簡易裁判所
- 請求する金額が140万円以上の場合には地方裁判所
に訴状を提出して、訴訟を提起することとなります。
ただし、裁判を行うことは相当な時間と労力がかかりますし、裁判での失敗は後から取り返すことが極めて困難な場合もありますので、裁判に踏み切る前に弁護士に相談することを強くお勧めします。