略奪婚の成功で幸せになれる?後悔しないための重要事項を解説

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略奪婚で幸せに至るか後悔するかを法は決めない

 略奪婚とは、恋人や配偶者がいる異性と恋愛関係となった上、恋人や配偶者から奪い取って結婚することをいいます。
 略奪婚をして幸せとなれるのか、それとも結局別れの苦しみを味わうという因果応報の報いを受ける末路を辿ることとなるのかは、略奪婚だからという理由のみで決まるような単純なものではありません。
 それを決めるのは倫理や道徳ではなく、ましてや法律論でもなく、2人の覚悟と結婚した後の行動が決めることです。
 ただ、略奪婚には慰謝料の請求を受けるなどの法的なリスクが存在していることは事実です。
 また、どうしても略奪婚ができない状況に陥るリスクも存在しています。

1.略奪婚とは

略奪婚とは、恋人や配偶者がいる異性と恋愛関係となった上、恋人や配偶者から奪い取って結婚することをいいます。

略奪婚が倫理的・道徳的に許されるものかどうかは別論として、略奪婚は実際によくある話です。

好きになった人が独身であり婚約者もいない場合には、その人と恋愛関係となった上で結ばれることは自由恋愛の範囲内の出来事です。

さらには、たとえ相手に婚約者や配偶者がいたとしても、そのような人に対して恋愛感情を抱いてしまうことがないわけではありません

また、婚約者や配偶者がいたとしても、心の造りが他の異性に心変わりしない構造に変化したわけではありませんので、他の異性に恋愛感情を抱いてしまうことが絶対になくなるものではありません

毎月のように有名人や芸能人の略奪婚のニュースは流れ、毎年大量の不倫・不貞を理由とする損害賠償請求事件が起こり、多くの夫婦が異性問題で離婚していることからしても、人は、浮気・不倫などの許されない恋に落ちてしまうことがある生き物と言わざるを得ないでしょう。

ただの遊びの浮気・不倫と、不倫相手との結婚にまで至るような本気の不倫のいずれがより不倫として悪質かは議論の余地があるところですが、いずれにしてもそのような本気の不倫は数多く存在しています。

2.略奪婚をして幸せになれるのか

好きになった人と結ばれたい、という思いを抱くことは、人の自然な感情とも言えます。

略奪婚は、そのような思いを貫いた結果であり、それが幸せに繋がっていると信じて覚悟を決めて突き進んだ結果と言えるでしょう。

そのような略奪婚をしてうまくいかないで後悔する例もありますが、略奪婚をして幸せになったいわば略奪婚の成功例もあります。

略奪婚をして幸せになれるのか、それとも結局別れの苦しみを味わうという因果応報の報いを受ける末路を辿ることとなるのかは、”略奪婚だから”という理由のみで決まるような単純なものではありません。

そもそも略奪婚であるか否かを問わず、夫婦は結婚さえすればそれだけで幸せになれるものではなく、幸せな結婚生活は、結婚した後に夫婦の双方が不断の努力と成長を重ねて形成・維持・発展させていくものです。

略奪婚をした後の結婚生活が幸せなものとなるか否かは、結婚に至るまでの過程で決まるものではなく、倫理や道徳が決めるものでもなく、まして法律論が決めるものでもありません。

それは、夫婦が結婚した後にそれを造り上げていくことができるかどうかで決まります。

3.略奪婚の法的なリスク

⑴相手が独身であり婚約者もいなかった場合

相手が独身であり婚約者もいなかった場合には、そのような相手と恋愛関係となって結婚するに至ることも自由恋愛の範囲内の出来事であり、法がとやかく横槍を入れる問題ではありません。

そのような場合であれば、法的なリスクが生じることは通常ありません。

⑵相手に配偶者や婚約者がいた場合

相手に配偶者や婚約者がいる場合には、略奪婚はその配偶者や婚約者の権利を侵害する行為です。

そのため、その配偶者や婚約者から慰謝料を請求されてしまうリスクがあります。

この場合の慰謝料の金額は様々な要素の総合考慮にて決まりますが、相場金額(裁判所が認めている金額)としては概ね150万円〜300万円程度の金額となる場合が多いです。

不倫の慰謝料の金額に関しては、一般に、以下の事情があるケースでは、慰謝料の金額が高額となる可能性があります。

不倫慰謝料の金額が高額となる可能性があるケース

  1. 不倫前の夫婦関係の状況が円満であるケース
  2. 不倫開始時点での婚姻期間が長いケース
  3. 不倫の期間が長いケース
  4. 夫婦間に幼い子どもがいるケース
  5. 不貞発覚後に被害者に対して不誠実な対応(謝罪しない、開き直る、攻撃的な態度をとるなど)をしたケース
  6. 相手の子どもを妊娠しているケース

他方、一般に、以下の事情があるケースでは、不倫慰謝料の金額が減額される可能性があります。

不倫慰謝料の金額が減額される可能性があるケース

  1. 婚姻期間が短いケース
  2. 不倫の期間が短いケース
  3. 既に不倫の関係を清算しているケース
  4. 不倫をした配偶者が不倫関係に積極的であったケース
  5. 不倫をした配偶者が上司・先輩など目上の存在であったケース
  6. 不倫をした配偶者が相当に年上であったケース
  7. 不倫発覚後に誠実に謝罪をしていたケース
  8. 不倫の開始の時点で既婚者であることを知らなかったケース
  9. 不倫慰謝料が不倫をした配偶者には請求されていないケース
  10. 不倫をした配偶者が既に不倫慰謝料を支払っているケース
  11. 不倫慰謝料の請求者が社会的相当性を欠く行為(脅迫や名誉毀損行為など)をしているケース
  12. 不倫の開始の時点で夫婦の婚姻関係が円満ではなかったケース
    ⇨特にこの[12]に関する事情次第で大幅な不倫慰謝料の減額を認める場合がある

ただし、実際には、裁判所は、これ以外にも実に様々な事情を拾い上げて不倫慰謝料の金額の増減を調整しています。

なお、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合に裁判所が認めている慰謝料の具体的な金額や裁判所がどのような事情を慰謝料の増額・減額の事情として判断しているのかについて詳しくは、以下の記事をご確認ください。

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⑶略奪するつもりがなかった場合

恋人に配偶者や婚約者がいることを知らずに付き合っていた場合にも慰謝料責任は発生するのでしょうか。

この場合は、客観的には恋人の配偶者や婚約者の権利を侵害するような行為をしている状況ですが、そのような行為をしているという認識(不法行為の故意)がありません。

そのため、この場合は、慰謝料責任は発生しません

ただ、本来であれば当然配偶者や婚約者がいることを認識できて当然であると言い得る状況であったにも関わらず不注意で配偶者や婚約者がいることを認識していなかったという場合もあります。

いわば、配偶者や婚約者の権利を侵害していることを過失によって知らなかった場合です。

この場合は、慰謝料責任は発生することとなります。

まとめますと、恋人に配偶者や婚約者がいることを知らなかったり、恋人には配偶者や婚約者などはいないと認識していたことに過失がなかったりする場合には、慰謝料を支払う責任はありません。

略奪の事実に対する認識と慰謝料責任

恋人の配偶者や婚約者の権利を侵害したことに故意・過失がなければ慰謝料責任は発生しない

⇨恋人に配偶者や婚約者がいることを知らなかったり、恋人には配偶者や婚約者などいないと認識していたことに過失がなかったりする場合には、慰謝料責任なし

アドバンスな交渉戦略

「略奪婚のパートナーが既婚者であること」を知らないままで結婚するに至ることは、例としてはかなり珍しいことだと思われますが、「そのパートナーと男女の関係となった際には既婚者であることを知らなかった」ということはあり得ることです。

そして、そのような男女の関係を続けるうちにパートナーが既婚者であること(実は自分は不倫をしていたということ)を知るに至ることもあります。

ただ、それを知ったとしても、そのことでスパッと恋心を清算して切り替えられないこともあるものです。

そのようなパートナーが既婚者であることを知ったにもかかわらずそのまま関係を続けて略奪婚をするに至った場合には、少なくとも知った時点からは配偶者や婚約者の権利を侵害していることを認識した上で不倫を続けていることとなりますので、慰謝料責任は発生することとなります。

ただ、そのような事情(不倫開始時点で既婚者であることを知らなかったとの事情)は、慰謝料の減額事由として考慮される場合があります

なお、既婚者であることを隠されて不倫の関係に至った場合には、不倫の相手に対して貞操権(誰と性交渉をするかを選択する権利)の侵害を理由として慰謝料請求をすることができる場合があります。

関連記事: 「既婚」を隠されて交際した場合の慰謝料請求について

他方、パートナーに婚約者がいることを知らずにそのまま結婚に至ることは時折見られますし、独身同士の交際関係の際に交際相手が婚約しているかどうかを確認しなかったとしてもおかしなことではありません。

その場合は、婚約者の権利を侵害したことに故意も過失もなく、慰謝料責任が発生しない場合も十分にあり得ます。

4.略奪婚に至るためのステップ

略奪婚に至るためには、恋人に婚約者がいる場合には婚約の取り消しを、恋人に配偶者がいる場合には離婚をしてもらうことが必要です。

その際の注意点について、説明します。

⑴婚約の取り消しに関する注意点

婚約を取り消す方法としては、婚約相手と話し合って合意の上で婚約を取り消す方法(婚約解消)と、一方的に婚約を取り消す方法(婚約破棄)があります。

婚約を取り消す方法

  1. 婚約相手と話し合って合意の上で婚約を取り消す方法(婚約解消)
  2. 一方的に婚約を取り消す方法(婚約破棄)

ただし、婚約破棄の場合には、婚約破棄をした者は、婚約破棄をされた側である婚約相手に対して慰謝料を支払わなければならない場合があります。

特に、婚約破棄の理由が他の異性との関係にある場合、そのような婚約破棄には正当な理由があるとは言えませんので、婚約相手に対して慰謝料を支払わなければならない可能性が高いです。

婚約破棄に正当な理由がない場合の慰謝料の相場金額(裁判所が認めている金額)は30万円〜200万円程度ですが、その理由が他の異性との関係にある場合には300万円を超える慰謝料が認められている場合もあります。

婚約破棄に正当な理由がない場合の慰謝料の金額に関しては、一般に、以下の事情があるケースでは、慰謝料の金額が高額となる可能性があります。

高額の慰謝料が認められる可能性があるケース

  1. 婚約が成立するまでの交際期間が長いケース
  2. 婚約成立から婚約破棄までの期間が長いケース
  3. 結婚目前のタイミングで婚約が破棄されたケース
  4. 婚約相手の子どもを妊娠・出産しているケース
  5. 結婚・新生活に向けて退職・転職しているケース
  6. 婚約破棄の理由が婚約相手の浮気・暴力(DV)・モラハラなどにあるケース

他方、以下の事情があるケースでは、一般に、婚約破棄を理由とする慰謝料の金額が減額される可能性があります。

慰謝料が少額にとどまる可能性があるケース

  1. 婚約が成立するまでの交際期間が短いケース
  2. 婚約成立から婚約破棄までの期間が短いケース
  3. 婚約破棄の理由がお互い様といい得るケース

さらに、婚約破棄によって財産的な損害が発生していた場合には、婚約相手に対して財産的損害を賠償する責任も生じる場合があります。

賠償責任が生じ得る財産的損害

  1. 婚約指輪や結婚指輪の購入費用
  2. 結婚式場のキャンセル料金
  3. 結婚後の住居や家具・家電類の購入費用
  4. 退職・転職による減収分(逸失利益)

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⑵離婚に関する注意点

離婚に関して、略奪婚の際に特に注意を要すべき点は、離婚裁判で離婚判決を得ることができない可能性が存在しているという点です。

不倫していた配偶者は有責配偶者の典型であり、有責配偶者に当たる場合には原則として離婚裁判で離婚判決を得ることができなくなります

この点について詳しくは【離婚裁判で激しい争いとなりやすい典型的な5つのケースを解説します・②不倫した配偶者からの離婚請求のケース】をご確認ください。

このような場合は、離婚裁判では離婚判決が出されない状況にあるため、離婚するためには配偶者に離婚に合意してもらう必要があります。

ただ、相手の配偶者としても、離婚した後に不倫相手との再婚を希望していることを知っている場合には、心情的にも離婚することには応じたくはないものです。

配偶者が意地でも絶対に離婚にしない(自分の人生を使って相手の人生を縛り続ける)との意思を固めてしまうことも、時折みられる状況です。

そのため、離婚紛争が長期化したり、配偶者に離婚に合意してもらうための経済的な負担が増大したり、結局離婚に合意してもらえずに離婚ができない状況に陥ったりする可能性があります。

5.相手に子どもがいる場合の注意点

相手が婚約者との婚約を取り消したり、配偶者と離婚したりすれば、その時点で相手と婚約者・配偶者とは法律上完全に他人になります。

そのため、婚約取り消しや離婚をした以降は、元婚約者や元配偶者に対する何らかの法律上の義務や経済的な負担が続くことは通常ありません。

ただ、相手と元婚約書・元配偶者との間に子どもがいた場合は、略奪婚を成功させた後も、相手と子どもとの関係は生涯継続します

そのことは、特に以下の2点で、略奪婚をした後の生活にも影響を及ぼすこととなります。

  1. 養育費の支払いが継続する
  2. 面会交流の実施が継続する

①養育費の支払いが継続する

離婚した後も、子どもが未成熟子である間は、養育費を支払う義務が続きます。

なお、略奪婚(再婚)をしたり、相手との間の子どもが産まれたりすることで、養育費の金額の減額が認められる場合もあります。

関連記事

再婚により養育費が打ち切り・減額になる場合とならない場合を解説

養育費とは、離婚により親権を失った方の親(非親権者)が子どもの生活のために負担するべき費用のことを言います(民法766条、877条)…

②面会交流の実施が継続する

面会交流とは、子どもと離れて暮らしている父母の一方(別居親)が子どもと会って話をしたり、一緒に遊んだり、電話や手紙などの方法で交流することをいいます。

面会交流の実施が強制されることはありませんが、離婚した後も定期的な面会交流が実施されることも珍しいことではありません。

6.略奪婚の道を進んでいくか断念するか

略奪婚は決して手放しに許されるものではありません。

しかし、誰かを好きになる気持ちは驚くほどに強いものですし、その恋心をどうしても拭い切れなくなってしまうこともよく聞く話です。

好きな人と結ばれたいと考えることはそれはそれで自然な心情とも言えるところであり、そのような気持ちを根本的に抑えることはなかなか困難なこともあるでしょう。

その恋の先に人生の幸せがあると感じた場合には、その獲得のために突き進むこともまた、人の心情とも言えるかもしれません。

しかし、略奪婚には様々な困難があり、高額の慰謝料などの経済的な負担が必要となる可能性があり、また、結局離婚が成立せずに略奪婚ができないまま終わる可能性もあります

人生は一度きりであり、かつ、進んできた道を後戻りすることはできず、常に前に進み続けるしかありません。

後悔のない人生のためにどのような道を進むこととするかは、結局法律論ではなく、あなたの判断でしょう

その判断の前提となる法律論や離婚・慰謝料問題が開始された場合に実際にどのような状況が待ち受けているのかの具体的な見通しなどについてお悩みの際は、是非、レイスター法律事務所の無料法律相談をご利用ください。

     

この記事の執筆者

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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