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DVの被害を受けた場合(特に身体的DVの被害を受けた場合)は、極めて強い恐怖を感じたり、命の危険を感じたりすることもあるものです。
定期的に暴力を振るってくるDV夫から自身や子供の身を守るための最も有効な手段は、DV夫と別居してDV夫と物理的に距離を置くことです。
ただDVは家庭内で行われる行為であるため、DV夫から逃げたくても逃げられないという状況に陥ることもあります。
そのような場合に利用できるのが、シェルターです。
この記事では、シェルターに入るまでの流れやシェルターに関する重要事項(子供との入所、利用可能期間、利用料金など)について解説します。
このページの目次
1.DV夫から今すぐ逃れる方法
DV(家庭内暴力)は、本来愛し守るべき存在であるはずの配偶者に対して行われる攻撃であり、絶対にあってはならないはずの最悪の行動です。
DVの被害の中でも特に下記のような身体的DVの被害の場合は、極めて強い恐怖を感じたり、命の危険を感じたりすることもあるものです。
身体的DVの具体例
- 殴る、蹴る、小突く、腕をねじる、首を絞める
- 突き飛ばす、階段から突き落とす
- 髪を引っ張る、髪を持って引きずり回す
- 物を投げつける
- 治療を受けさせない
- 包丁などの凶器で切りつける、突きつける
- このような行動をする素振りを見せて脅かす
定期的に暴力を振るってくるDV夫から自身や子供の身を守るための最も有効な手段は、DV夫と別居してDV夫から物理的に距離を置くことです。
しかしながら、DVは家庭内で行われる行為であり、DV被害者はDV加害者と生活の本拠地が同一です。
そのため、家族や友人などに協力(別居先の生活場所の提供)を求めることが難しい場合には、DV夫から逃げたくても逃げられないという状況に陥ることもあります。
特に幼い子供を持つ母親は、DV夫の攻撃から逃れる手段が見つけられず、自分さえ我慢をすれば済むと考えて、DVの被害を受け続けている例も多くあります。
実際、内閣府男女共同参画局が作成した「男女間における暴力に関する調査報告書」によると、DVの被害に遭いながらも「自分さえがまんすれば、なんとかこのままやっていけると思ったから」との理由でDV被害の相談をしない女性の数は全体の33.3%にものぼっています。
ただ、DV夫から速やかに逃れる手段は、常に用意されています。
それは、今すぐにシェルターに逃げ込むことです。
この記事では、シェルターに入るまでの流れやシェルターに関する重要事項(子供との入所、利用可能期間、利用料金など)について解説します。
2.「シェルター」とは?
シェルターとは、配偶者からの暴力(DV)の被害者が、被害から逃れるために一時的に利用することができる避難場所であり、DVシェルターとか、母子シェルターとか、一時保護施設などと呼ばれる場合もあります。
シェルターを利用することで、どんなタイミングでも速やかにDV夫による暴力から逃れることができます。
また、シェルターの種類としては、行政や都道府県などが運営する公的なシェルターと、NPO法人や社会福祉法人などの民間団体が運営する民間シェルターとがあります。
3.シェルターに入るまでの流れ
⑴相談窓口へ相談→シェルターを紹介してもらう
まずは、警察の安全支援課や配偶者暴力支援センターや福祉事務所などにDVの被害の相談をしてみましょう。
相談先が分からない場合には、「DV相談+」や「DV相談ナビ」に電話をすれば、最寄りの相談所を調べて教えてもらえたり、そのまま相談窓口に引き継いでもらえます。
- DV相談+の電話番号
➡️0120−279−889(つなぐ はやく)
- DV相談ナビの電話番号
➡️♯8008(はれれば)
その結果、警察の安全支援課や配偶者暴力支援センターや福祉事務所がすぐに保護する必要があると考えた場合には、その場で即座にシェルターの紹介を受け、DV夫のいる自宅に帰らずにそのままシェルターに入ることもできます。
シェルターに入るためには緊急に保護する必要性(緊急性)が認められることが必要ですが、DV夫から身体的DVや性的DV(性交渉の強要など)の被害を受けている場合には、シェルターに入ることが認められる可能性が高いです。
そして、そのままシェルターに入って「一時保護」を受けることができ、今後の生活の支援を受けることができます。
なお、シェルターによっては、無料で入ることができるシェルターと有料のシェルター(1日1000円程度)がありますので、その点についても相談することで、適切なシェルターを紹介してもらえます。
⑵シェルターに子供と一緒に入れる?
シェルターには原則として子供と一緒に入ることができます。
子供をDV夫のもとに残して自宅から出ていくと、DV夫の攻撃の矛先が子供に向かってしまうことがありますので、子供は連れて行きましょう。
ただし、小学生までであれば問題なくシェルターに入れる場合が多いですが、中学生以上の男児についてはシェルターに入ることができない場合もあります。
また、シェルターに入っている間は、子供は学校に通学することができないこととなることが多いです。
なお、子供と一緒の場合には、シェルターではなく母子生活支援施設などに入ることを勧められる場合もあります。
⑶シェルターにペットと一緒に入れる?
飼い犬などのペットと一緒に入ることができるシェルターもありますが、極めて例外的です。
基本的にペットと一緒にシェルターに入ることはできません。
⑷シェルターに入れない可能性のあるケース
DVの種類には身体的DVや性的DVの他、精神的DV(暴言など)、経済的DV、社会的DVなどもあります。
このうち、精神的DVや経済的DVや社会的DVの被害を受けてはいるものの、身体的DVや性的DVの被害は受けていない場合には、シェルターに入ることが認められない可能性もあります。
4.シェルターに関する基本事項
⑴シェルターに入る際に持っていくもの
シェルターに入る際には、そのまま自宅にはもう戻らないこととなる可能性が十分にありますので、可能であれば現金や健康保険証、預貯金通帳・カード・印鑑、その他衣類や生活に必要な物を持っていくことが良いでしょう。
また、今後DV夫との離婚問題・慰謝料請求に備えて、可能であれば、手持ちのDVの証拠は持っていくようにしましょう。
なお、最低限度の生活必需品はシェルターで提供されます。
⑵シェルターに入っていられる期間
シェルターはあくまで次の生活状況に至る準備をするための仮住まいです。
そのため、原則として2週間程度の期間でシェルターから出ることが予定されている場合が多いです。
シェルターから出た後、より長期間入所可能な施設(母子生活支援施設など)に転居することもありますが、基本的に自立が求められます。
シェルターに入っている期間のうちに、シェルターからのサポートを受けながら、シェルターから出た後に生活をする場所を確保する必要があります。
ただし、状況によってはある程度柔軟に入所期間を延長してもらえる場合もありますので、相談してみましょう。
⑶シェルターで受けることができるサポート
シェルターでは、シェルターから出た後の新居探しのサポートや、生活保護の受給手続きのサポートや、就職活動のサポートなどが受けられます。
また、シェルターを出た後に単身で公団住宅に入居することや、公団住宅の優先的に割り当てを受けることができる場合もあります。
その他にも、弁護士やカウンセラーとの相談や紹介を受けることができる場合もあります。
※シェルターによって支援の内容は異なります。
5.シェルターの場所・外部との連絡
⑴シェルターの場所は完全に秘匿されている
DV被害者を匿うシェルターは、その所在地が完全に秘匿されており、外部から探したりすることはできません。
⑵シェルターにDV夫が押しかけてくることはない?
シェルターの場所は完全に非公開とされていますので、DV夫にあなたの所在場所が知られることはありません。
シェルターに入っている間は、シェルターにDV夫が押しかけてくることはまずありません。
⑶シェルターの中から職場や家族などに連絡できる?
シェルターに入っている間は、基本的に職場や学校のみならず友人や家族に対しても連絡をすることができません。
また、シェルターの場所の発覚を防ぐなどのため、携帯電話・スマートフォンの利用は制限・禁止され、外部と連絡を取る際には連絡先を申請して許可を得なければならないとのルールがあるシェルターも多いです。
6.シェルターから出た後の転居先の住民票
シェルターから出た後の転居先に住民票を移動させた場合には、転居先の所在場所をDV夫に知られてしまわないために、役所に対して住民票の閲覧制限の申し出(住民記帳台帳におけるDV等支援措置)をしておくとよいでしょう(住民記帳台帳法12条、12条の2、12条の3、20条)。
当該申し出をすることで、D V加害者やD V加害者が依頼した弁護士があなたの戸籍の附票(除票を含む。)や住民票(除票を含む。)の写しの交付を請求したとしても、それが認められないことになります。
戸籍の附票や住民票の閲覧制限の期間は原則として1年ですが、期間終了前に申し出ることで、閲覧制限の期間を延長することが可能です。
7.DV夫との離婚は弁護士へ相談しよう
夫からのDVの問題を根本的に解決するためには、DV夫との離婚を成立させることが必要です。
そのためには、DV夫との別居を継続しつつ、
- DV夫に対して保護命令を申し立てて身の安全を確実なものとしたり
- 離婚するまでの生活費の問題(婚姻費用)を確保したり
- 離婚調停を申し立てて調停委員を間に入れてDV夫との間で話し合いを進めていったり
することが必要です。
このようなDV夫との離婚問題に関しては、特に弁護士に依頼するメリットが大きいです。
弁護士に依頼をすれば、今後一切DV夫と会うことなく離婚を成立させることも可能です。
DV夫との離婚は、弁護士に依頼をして全ての連絡・交渉・各種手続きの申し立てやサポートを弁護士にしてもらう形がベストでしょう。
レイスター法律事務所では、無料法律相談にて、
- DV夫との離婚問題をどう進めていくことが最も妥当か
- 保護命令を申し立てるべき状況かどうか
- 離婚成立までの間にDV夫から支払ってもらえる生活費(婚姻費用)の金額は具体的にいくらになるか
- 離婚条件として受けられる経済的な給付(財産分与・慰謝料・養育費など)の具体的な金額はどの程度となりそうか
などの事項について具体的かつ詳細にお伝えしています。
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