財産分与の割合の「2分の1ルール」の例外を解説!有利な財産分与のために検討しよう

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財産分与の割合を支配する「2分の1ルール」は大原則ですが、例外があります。

財産分与の割合が「2分の1」以外の割合となり得る場合には、概ね5つのパターンがあります。

それは、①協力扶助義務の分担状況の大きな不均衡がある場合、②夫婦の一方の特殊な才能により形成された財産が含まれている場合、③夫婦に同居していない期間が存在している場合、④夫婦の一方が著しい浪費によって夫婦共有財産を減少させていた場合、⑤夫婦財産契約(婚前契約)で財産分与の割合が取り決められていた場合です。

1.「2分の1ルール」には例外が存在する!

「2分の1ルール」には例外が存在する!

財産分与の割合は、「2分の1ルール」が大原則であり、離婚調停でも調停委員はこの「2分の1ルール」が絶対普遍のルールであるかのように接してきます。

確かに、家庭裁判実務では、財産分与の割合の「2分の1ルール」はよほどのことがない限り、貫かれています。

ただし、この「2分の1ルール」は法律で規定されているものではなく、「2分の1」でなければならないという制限はありません。

裁判所も、財産分与の割合を「2分の1」とすることが当事者にとってむしろ不公平・不平等と考えられる場合には、財産分与の割合を「2分の1」以外の割合とすることもあります。

つまり、「2分の1ルール」は絶対不変のルールではなく、例外が存在しているのです。

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2.「2分の1ルール」の例外が認められ得る事情

「2分の1ルール」の例外が認められ得る事情としては、以下の5つがあり得ます。

「2分の1ルール」の例外が認められ得る事情

  1. 協力扶助義務の分担状況の大きな不均衡がある場合
  2. 夫婦の一方の特殊な才能により形成された財産が含まれている場合
  3. 夫婦に同居していない期間が存在している場合
  4. 夫婦の一方が著しい浪費によって夫婦共有財産を減少させていた場合
  5. 夫婦財産契約(婚前契約)で財産分与の割合が取り決められていた場合

①協力扶助義務の分担状況の大きな不均衡がある場合

夫婦は「同居し、互いに協力し扶助」する義務(同居義務・協力義務・扶助義務)を負っています(民法752条)。

そして、この協力扶助義務の実際の分担状況に夫婦の間で大きな隔たりがあった場合、それにも関わらず財産分与の割合を「2分の1」とすることが、むしろ夫婦間で極めて不公平であると考えざるを得ないこともあります。

例えば、夫婦が共働きであるにも関わらず、夫が家に寄り付かず、家事や育児を一切やらず、生活費も一切負担せず、遊び呆けてほとんど貯金がなかったとします。

他方において、妻は自分の稼ぎのみで家計をやりくりしつつ、家事育児を全てやり、それに加えて仕事を頑張って将来の子どものための資金をコツコツと貯蓄していた。

それにも関わらず、離婚する際に妻が夫に対してコツコツ貯めていた貯蓄の2分の1を分与しなければならないというのであれは、それはそれで不公平でしょう。

このような場合に、裁判所は、その他の様々な事情も併せて考えた上で、財産分与の割合を「2分の1」ではなく、妻6:夫4などと変更してくれる場合があります。

関連裁判例:東京家庭裁判所平成6年5月31日審判

芸術家夫婦の離婚において、妻が約18年間専ら家事労働に従事していたことや、当事者双方の生活費の負担割合・収入状況などを総合考慮した上で、夫婦共有財産の形成に対する夫婦の寄与の割合を妻6:夫4とした

②夫婦の一方の特殊な才能により形成された財産が含まれている場合

夫婦の一方の特殊な才能により形成された財産が含まれている場合

夫婦の一方が高収入であり、夫婦共有財産の形成に経済的には多大な貢献をしていたとしても、それだけで「2分の1ルール」が修正されるわけではありません。

ただし、その夫婦の一方の高収入が特殊な技術・資格・能力などに基づいており、かつ、その収入によって極めて高額の資産が形成されていた場合、それでも財産分与の割合を「2分の1」とすることはむしろ不公平であると考えざるを得ない場合もあります。

また、その高収入を得るための技術・資格などを納めたのが独身時代であったのであれば、その独身時代の努力(多大なる精神力・時間・費用等を費やしたものかも知れません)に配偶者の貢献はありません

それにも関わらず、財産分与は「2分の1」とされることは、納得できないものでしょう。

他方において、婚姻後における高収入の維持・継続・増加に対しては、配偶者の貢献が認められます

裁判所も、(その他の事情をも総合的に考察した上で)特殊な事情がない限りは「2分の1ルール」の例外を認めていません。

この点については、大阪高等裁判所平成26年3月13日判決が、以下の判断を示した上で、財産分与の割合を夫6:妻4としたことが注目されています。

関連裁判例:大阪高等裁判所平成26年3月13日判決

<事例>
医師である夫が、婚姻前からの勉学等の努力を婚姻前からしてきたことや、婚姻後にその医師の資格を活用して多くの労力を費やして高額の収入を得ていた。
なお、妻は、家事・育児に加えて、夫の診療所の経理なども一部担当していた。

<結論>
財産分与の割合を夫6:妻4とした。

大阪高等裁判所が示した注目するべき判断内容
原則論(「2分の1ルール」の確認)
「民法768条3項は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ、離婚並びに婚姻に関する事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば、原則として、夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当である」

「2分の1ルール」の例外が認められる場合の具体例
例えば以下のような事情がある場合には、そのような事情を考慮して「2分の1ルール」を変更しなければ、むしろ「財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい」

「夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合」

「高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合」

③夫婦に同居していない期間が存在している場合

離婚の前に別居していた場合は、財産分与は別居時を基準として、その時点における夫婦共有財産を分け合うこととなります。

ただし、ここにいう「別居」というためには、単純に別の場所で生活をしていること(客観的な状況としての別の場所での生活状況)ではなく、その生活状況が夫婦としての共同生活を否定するものであること(その状況が継続すれば婚姻関係が破綻していると考えざるを得ないものであること)が必要です。

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そのため、仮に夫婦の一方が婚姻してから単身赴任などのために長期間別の場所で生活をしていたとしても、その期間に形成された財産は、夫婦共有財産に該当することが大原則です。

しかしながら、その別の場所で生活をしていた期間は、同居している場合と比べて、夫婦の生活の維持・資産の形成に対する相互の貢献は希薄であったと言えます。

夫婦によっては、その別の場所で生活をしていた期間、相互に経済的な協力関係(生活費の支払いなど)もほとんどなかったり、全くなかったりする場合もあるでしょう。

このような場合に、稀に「2分の1ルール」の修正が行われる場合があります。

アドバンスな交渉戦略①

このような場合は、一般的に、財産形成に対する寄与度の問題として、財産分与の割合の修正をするべきかどうかという形で議論される例が多い印象です。

ただ、当該別の場所で生活をしていた際に形成した資産は、そもそもその名義人の特有財産であるとも言えそうです。

財産分与の割合を修正するという処理をするか特有財産として処理するかの違いは、以下の点にあります。

特有財産であるとなった場合
当該別の場所で生活をしていた際に形成した資産は財産分与の対象から除外される。

財産分与の割合が修正された場合
当該別の場所で生活をしていた際に形成した資産も夫婦共有財産を構成するものとして財産分与の対象となる。その上で、財産分与の割合を修正する。

この2つの処理のうち、いずれがより自分に有利な処理なのかは、別の場所で生活をしていた際に形成した資産の価値や夫婦共有財産の総額などを考察した上で、じっくりと検討しなければ分かりません。

そのため、離婚調停などでは、この両方を主張しつつ、財産資料が出揃って夫婦共有財産の総額がおおよそ正確に判明した段階で改めて検討するなどの対応があり得るでしょう。

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④夫婦の一方が著しい浪費によって夫婦共有財産を減少させていた場合

夫婦の一方が著しい浪費によって夫婦共有財産を減少させていた場合

夫婦の一方が浪費したために夫婦共有財産が失われた場合には、そのことを考慮して「2分の1ルール」が修正される場合があります。

金銭の消費は、夫婦共有財産を減少させる行為です。

その金銭の消費が何らかの合理的な理由に基づいて行われているのであれば問題は少ないかも知れません。

しかし、その金銭の消費が何らの合理性もない無駄遣いであって、浪費としか言いようのない場合は、問題があります。

例えば、夫婦の一方が、他方の配偶者に隠れて高額の遊興を繰り返していたり、不倫相手との豪遊を繰り返していたりして、その結果、夫婦共有財産がほとんど消費されていた場合は、大いに問題です。

このような合理的な理由のない不誠実かつ著しい浪費が行われていた場合は、裁判所は、浪費をしていた配偶者に不利なように「2分の1ルール」を修正する場合があります

具体例で説明

家計を管理していた専業主婦の妻が、夫に隠れて不倫相手の男性と高級リゾート旅行に何度も行ったり、毎日のように高級なランチに行ったりしていた。
このような妻の浪費の結果、本来であれば妻名義の貯蓄口座には2000万円ほどの預金が存在していたはずのところ、実際には妻名義の貯蓄口座には10万円しか預貯金が入っていなかった。
他方、夫は、堅実に自分の小遣いをコツコツと貯めており、夫名義の預貯金は300万円存在していた。

この場合、夫婦共有財産は310万円(妻名義の口座+夫名義の口座)であるため、原則通りに「2分の1ルール」を適用すると、夫から妻に145万円を分与することとなる。
つまり、この場合は、妻は、2000万円分遊び耽った上で、さらに夫から夫が小遣いを積み立ててコツコツと貯めていた預貯金をほぼ半分もらえるわけである。
このような結論は、夫は納得できないだろう。

ここで、「2分の1ルール」を修正し、夫8:妻2の割合で財産分与をすることになれば、夫から妻に支払うべき分与金は52万円となる。
52万円でも夫は納得できないだろうが、まだ幾分マシであろう。

アドバンスな交渉戦略②

夫は、同居中、妻に家庭の全資産の管理を任せており、妻はコツコツと貯蓄していくことを約束していました。

しかし、夫は、いざ離婚の話し合いとなり、妻から提出された預貯金の通帳を見て、愕然とします。

妻から提出された通帳には、ほとんど預貯金がありませんでした。

夫は、妻を問い質しますが、妻は開き直って言い訳ばかりで誠実に回答しません。

そのため、夫は、裁判所に対して、妻は別の通帳に資産を移動させて隠し財産を設けている可能性が高いことを指摘し、妻の持ち出し金も夫婦共有財産として存在しているはずであるため、財産分与の対象とするべきであると主張しました。

しかし、裁判所は、妻が別の場所に資産を隠している証拠はないとして、夫の主張を退けました。

ただ、仮に妻が隠し財産を設けていないのであれば、それは妻がその分の夫婦共有財産を消費してしまったということです

そのため、裁判所は、そのような妻の行為は夫婦共有財産を著しく減少させる行為であると認定した上、「2分の1ルール」を夫に有利なように大きく変更しました。

⑤夫婦財産契約(婚前契約)で財産分与の割合が取り決められていた場合

夫婦財産契約(婚前契約)とは、結婚する前に夫婦で財産などに関するルールを取り決めておく契約です。

この夫婦財産契約は、結婚する前にしか締結することができず(民法755条)、かつ、結婚した後には原則として内容を変更することができないという(民法758条、民法759条)、極めて特殊な契約です。

この夫婦財産契約(婚前契約)において財産分与の割合を取り決めていた場合は、その取り決めは「2分の1ルール」よりも優先されます

なお、離婚の際の話し合いで、夫婦が夫婦財産契約(婚前契約)で取り決めた割合とは異なる割合で合意した場合には、その合意の方が優先されます。

3.「2分の1」で納得できなければしっかりと主張していこう!

「2分の1」で納得できなければしっかりと主張していこう!

このように、「2分の1ルール」には例外が存在しています

「2分の1ルール」にも例外が存在しているということは、財産分与の割合を巡って相手と交渉することで、より有利な財産分与の勝ち取ることができる可能性があるということです。

そもそも、財産分与は夫婦で築いてきた財産を離婚の際に公平に分け合う制度です。

ならば、当該夫婦にとっての公平が「2分の1」ではないと感じたのであれば、そう感じた理由を主張して分与の割合を争ってはならないということはないはずです。

主張した方が全体としても有利な結論に至れる可能性が少しでも上がるのであれば、何も主張せずに「2分の1ルール」を受け入れるのではなく、「2分の1ルール」の例外を積極的に主張する方向を検討することも有益でしょう。

アドバンスな交渉戦略③

財産分与以外の様々な問題点との兼ね合いで、最終的に少しでも有利な結論に至るためにはむしろ財産分与の割合は争わない方がベターであると考えられる場合も多いです。 

どう考えても「2分の1ルール」の例外が認められないような場合であれば、その点を争うことで紛争の激化・長期化を招く、むしろ損をしてしまう可能性もあります

特に婚姻費用の支払いをしている側としては、離婚紛争が激化・長期化することは、婚姻費用を支払う期間が長期化し、経済的な負担が増大してしまうことを意味します。

財産分与の割合を争うか争わないかの判断は他の離婚条件や当事者双方の状況などが複合的に絡み合った専門的かつ難しい判断になりますので、是非、レイスター法律事務所にご相談ください。

レイスター法律事務所は、離婚問題のプロフェッショナルとして、あなたにとってのベストな交渉戦略を徹底的に検討いたします。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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