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1.不倫の代償
人の心には恋をする能力が備わっており、その能力は結婚しても失われるものではありません。
また、人には生殖本能がありますので、異性との性交渉の誘惑に心を惑わされてしまうこともあり得るところです。
実際、世の中には驚く程に数多の不倫が溢れています。
ただ、つい出来心で不倫してしまったものの、その後冷静になり、不倫したことを強く後悔する方もおられます。
また、配偶者以外の異性と不倫の関係にあったものの、目が醒め、心を入れ替えて、不倫関係を解消して、良き妻・良き夫となろうと考えるに至る方もおられます。
このような場合、あなたの不倫が配偶者に発覚していなければ、あなただけの問題として静かに終わらせることもできたでしょう。
しかし、あなたの不倫が配偶者に発覚してしまった場合には、今後の婚姻関係について、あなたの配偶者もあなた自身も決断を迫られることになります。
あなたの配偶者があなたとの離婚を決断した場合、あなたは配偶者と離婚しなければならないのでしょうか。
2.配偶者との離婚を受け入れる場合
あなたが配偶者からの離婚要求を受け入れる場合には、まずは配偶者があなたに求めている離婚条件を改めてよく把握しましょう。
配偶者があなたに求めている離婚条件が法律上妥当な範囲内であれば問題は少ないのですが、往々にして法外な要求を突きつけられる場合があります。
配偶者は、あなたの不倫を知ってあなたとの離婚を決断したものですから、あなたに対する強い憤りを有していることが多いです。
そして、配偶者は、そのあなたに対する強い憤りを、離婚条件という形であなたにぶつけてくるのです。
そして、時折、配偶者に対する申し訳なさや反省の念から、離婚条件として極めて法外に高額な経済的給付の合意をしてしまう方もおられます。
しかし、配偶者と離婚する場合には、離婚条件の合意をする前に、一旦冷静になり、離婚後のあなた自身の人生をしっかりと考える時間を意識的に作ることが重要です。
確かに、あなたの不倫により婚姻関係は破綻し、あなたの配偶者は傷ついてしまったのかもしれません。
しかし、不倫をした責任は、法律上は、配偶者に対して離婚慰謝料を支払うことにより果たされます。
有り体に言えば、法律上は、配偶者に対して心から謝罪をすることも、心から反省をすることも求められてはいませんし、離婚後の配偶者の生活の面倒を見続けることや、まして配偶者が傷ついた分だけあなたが傷つくことは全く必要ありません。
そして、その離婚慰謝料には相場があります。
また、離婚慰謝料以外の離婚条件(財産分与や養育費)にも一定の算定方法が存在しています。
つまり、あなたは、離婚する配偶者に対して、法律上、離婚慰謝料の相場金額や、算定方法に基づいて計算された財産分与・養育費の金額などを超えた経済的な給付をする義務を負っていません。
離婚する配偶者に対して、それを超える経済的な給付をするかどうかは、最終的にはあなたの考え方次第です。
しかし、まずは自身が法律上配偶者に対してどのような経済的な給付をする義務を負っているのかをしっかりと把握しておくべきです。
配偶者と離婚した後には、あなたの新たな生活・新たな人生がスタートします。
しかし、離婚の際に合意してしまった離婚条件を後から変えることは極めて困難です。
あなたの新たな生活・新たな人生にとって、大きな足枷となるような離婚条件での合意はするべきではありません。
ご自身の人生のため、離婚条件は慎重に検討するべきです。
3.配偶者との離婚を受け入れたくない場合
不倫はそれだけで婚姻関係を破綻させるものと考えられており、法律上も、「配偶者に不貞な行為があったとき」という事情をそれ単体で離婚原因(裁判で離婚が認められる事情)になると規定しています(民法770条1項1号)。
そのため、あなたが決して離婚に合意せず、強く離婚を拒否し続けたとしても、あなたの配偶者が離婚を望む場合には、最終的には裁判所が離婚判決を出してしまいます。
そうならないようにするためには、相手に離婚を思いとどまってもらうしかありません。
しかしながら、一度本気で離婚の決断をした後に思い直して離婚を思いとどまることは滅多にありません。
特に離婚調停の申し立てが行われたり、相手が弁護士を付けて離婚を求めてきたりするに至っている場合には、そこから最終的に復縁との結論に至る例はほとんど見られません。
ただ、これはあくまで一般論であって、数は少ないながらも最終的に配偶者と復縁に至っている場合もありますし、あなたの場合に復縁ができないと最初から決まっているわけではありません。
そのため、最初から復縁を諦めるのではなく、相手にあなたの反省・謝罪の意思や相手に対する愛情を伝え、強く復縁を希望していることをしっかりと分かってもらいましょう。
その上で、相手を批判するのではなく、あなたと離婚するよりも復縁の方が相手にとっても人生にプラスになることを分かってもらえるよう、我慢強く説得していくしかありません。
相手が自宅から出て行ってしまっている状況であるならば、相手に対していつでも帰ってくる場所がしっかりと確保されていることや、同居に戻った後の生活について具体的に考えていることを伝えましょう。
また、相手に対して、経済的合理性の観点からすれば、ここで離婚をするのではなく、同居生活をする方が経済的にメリットが大きいことを丁寧に説明することも有効です。
子どもがいるのであれば、両親が離婚をすることの子どもに与えるマイナスの影響や、子どもの健全な成長・発達のためには両親が揃って愛情を注いであげることが極めて重要であることを、相手に分かってもらうことも必要です。
相手に対して繰り返し再考を促し、時間をかけてじっくりと、相手に再検討の機会と期間を与えられるように試みましょう。
相手が離婚調停を申し立ててきているのであれば、こちらから円満調停を申し立てることで復縁の意思が強いことを示すことも有用です。
ただ、どうしても相手の離婚意思が固い場合には、離婚調停が不成立となって紛争が離婚訴訟に至る前に復縁を諦め、できるだけ有利な条件で離婚する方向で交渉を進めることも検討せざるを得ないところです。
離婚訴訟にまで至っている状況からの復縁の例は限りなくゼロに近いですし、その復縁の例も気持ちの変化などではなく特殊な対外的要因が起因していることがほとんどです。
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