配偶者がいる人との内縁関係(重婚的内縁)の保護や慰謝料・認知などを解説

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不倫相手と同棲している場合など、男女の同居生活の形には様々な状況があります。

近い将来の結婚に至るまでの期間限定のステップとして男女が同じ方向を向いて同居生活を続けている状況であればまだしも、なかなか結婚に至れない理由がある場合もあります。

そのような場合、いつまでも男女が同じ方向を向いて同居生活を続けていける保証はなく、男女の間での温度差や将来像・本心の所在地が異なっていき、法律的にも人間関係的にも難しい問題が持ち上がってくる可能性があります。

この記事では、配偶者がいる相手と同居生活をしている場合に生じ得る問題やそのような同居生活に対して認められる法律上の権利、相手の配偶者からの慰謝料請求や、子どもを妊娠した際の認知の問題などについて解説します。

1.配偶者がいる異性と同居生活をしている男女の次のステップ

配偶者がいる異性と同居生活をしている男女の次のステップ

男女の共同生活の形は、実に様々な状況があります。

同棲を始めたばかりのカップルもいますし、長年の結婚生活を送ってきた熟年の夫婦もいます。

DV夫から避難してきた女性を保護している友人の男性もいるでしょうし、不倫関係の男女が同居生活をしている場合もあります。

ただ、不倫関係の男女が同居生活をしている場合、その男女の同居生活の状況は、次の状況に至るまでの過渡期であることが多いです。

同居生活をしている不倫関係の男女が至り得る次の状況は、大部分が、

  1. 現在の配偶者と離婚して、再婚する
  2. 不倫関係を解消する

の2パターンになります。

しかしながら、数は少ないながら、③現在の配偶者と離婚をしないまま同居生活を続けるとの状況が固定化される場合も存在しています。

この記事では、そのような配偶者がいる相手と同居生活をしている場合に生じ得る問題やそのような同居生活に対して認められる法律上の権利、相手の配偶者からの慰謝料請求や、仮に子どもを妊娠した際の認知の問題などについて解説します。

2.同居生活をしている不倫相手が配偶者と離婚してくれない理由

2.同居生活をしている不倫相手が配偶者と離婚してくれない理由

不倫関係の男女が同居生活をしている場合、不倫相手とその配偶者との間の婚姻関係は最悪の状況でしょう。

もはや不倫相手とその配偶者との間の婚姻関係は有名無実化しており、完全に破綻して形骸化している状況である可能性もあります。

それにも関わらず離婚していない理由として最も多いのが、配偶者が離婚に合意しないために離婚したくても離婚することができない状況に陥っているというパターンです。

離婚は夫婦の双方が離婚に合意すれば即座に協議離婚が成立しますが、夫婦間に離婚の合意が成立しない場合には、離婚裁判にて離婚判決を勝ち取らなければ離婚は成立しません

そして、通常の場合であれは、一定程度の別居期間が存在していれば、他に特段見るべき事情がなかったとしても、家庭裁判所は離婚判決を出します。

しかしながら、離婚を求めている配偶者が有責配偶者(夫婦の婚姻関係の破綻に主な責任を負う配偶者)である場合は、裁判所は下記の厳格な例外要件を充足しない限り離婚判決を出しません。

有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件

  1. 婚姻期間と比較して相当長期の別居の継続
  2. 未成熟の子がいないこと
  3. 離婚によって他方配偶者が精神的・経済的に苛酷な状況におかれないこと

そのため、離婚を求めている配偶者が有責配偶者である場合は、どれほど離婚したいと思っても離婚することができないという状況が延々と続いてしまうことがあります。

その結果、同居生活をしている不倫相手はいつまで経っても配偶者と離婚することができず、不倫相手とその配偶者との間の法律婚関係が延々と続いてしまうこととなるのです。


他方、同居生活をしている不倫相手とその配偶者との間の婚姻関係が破綻した理由が不倫ではない場合(例えば不倫関係となった際に既に離婚を前提とした別居状況に至っていた場合など)もあります。

その場合は、一定程度の別居期間が存在していれば、他に特段見るべき事情がなかったとしても、配偶者がいくら拒絶しても離婚裁判を提起すれば離婚判決を得られる可能性が高いです。

そのような状況でもなお不倫相手が配偶者と離婚しないというのであれば、そこには法律論では解決できないような夫婦の関係性・子どもとの関係性・男女の関係性などから生じる複雑な理由があるところでしょう。

3.同居生活をしている不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされた場合

同居生活をしている不倫相手の配偶者から慰謝料請求をされた場合

同居生活をしている不倫相手とその配偶者との間の婚姻関係が破綻して形骸化した主な理由が不倫にある場合には、不倫相手の配偶者から慰謝料請求を受ける可能性があります。

その場合の慰謝料の相場金額に関しては【【不倫慰謝料の相場】裁判で最も高額の不倫慰謝料が認められ得るパターン】をご確認ください。

他方、同居生活をしている不倫相手とその配偶者との間の婚姻関係が破綻して形骸化した理由が不倫にない(不倫の開始時に既に夫婦の婚姻関係が破綻していた)場合には、不倫を理由とした慰謝料請求を受けるいわれはありません。

その場合は、たとえ不倫相手の配偶者からの慰謝料請求を受けたとしても、慰謝料を一切支払うことなく速やかに弁護士に相談して今後の対応を検討することを強くお勧めします。

4.同居生活をしている不倫相手が離婚しなければ結婚できない?

.同居生活をしている不倫相手が離婚しなければ結婚できない?

同居生活をしている不倫相手が配偶者と離婚していなかったとしても、重ねて婚姻届を提出することは認められるでしょうか。

日本では重婚(配偶者がいる人が他の異性と結婚をすること)は認められていません(民法732条)。

そのため、同居生活をしている不倫相手が配偶者と離婚していない以上、不倫相手との婚姻届を提出することはできず、そのような婚姻届を役所は受理しません

民法732条

配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。

重婚の状況は、役所のミスで婚姻届が受理された場合や、離婚が無効・取り消しになった場合など極めて例外的な場合でなければ成立しません。

また、仮に重婚の状況が発生した場合は、再婚は取り消され得る状況となりますし(民法744条)、さらには重婚罪(刑法184条)という犯罪で重婚した者もその再婚相手も処罰される可能性さえあります。

刑法184条

配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、2年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。

5.不倫相手との同居生活は内縁関係(重婚的内縁)として保護されるか

不倫相手との同居生活は内縁関係(重婚的内縁)として保護されるか

離婚届の提出が認められず法律婚が成立しないのであれば、内縁関係(事実婚)はどうでしょうか。

例えば、妻のいる男性と夫婦同然の暮らしをしている女性は、その男性の内縁の妻としての法律上の保護を受けられるでしょうか。

配偶者がいる異性との間で内縁関係が成立するとなれば、その異性は配偶者との法律婚を継続しつつ、それに重ねて別の異性との間に事実婚(内縁関係)の状況に至ることとなり、いわば重婚的な状況となります。

そのため、このような配偶者がいる異性との間における内縁関係のことを重婚的内縁といいます。

以下で重婚的内縁に法律上与えられる保護について解説します。

⑴内縁関係(事実婚)に法律上与えられる保護

内縁関係(事実婚)とは、事実上夫婦としての共同生活の実態がある場合を言います。

内縁の夫と内縁の妻は婚姻届の提出をしていないだけでその生活実態は婚姻届を提出した夫婦と全く変わるところはありません

内縁関係の場合は、戸籍、子どもの戸籍・親権、相続、税法上の優遇措置など、住民票の「続柄」の記載の点で婚姻届を提出している法律婚の場合とは異なる取り扱いを受けます。

しかしながら、法律婚の場合と内縁関係(事実婚)の場合とで夫婦の生活や人生を守らなければならない要請は何ら変わらないため、内縁関係(事実婚)にも法律婚に準じた法律上の権利・義務が認められています。

具体的には、内縁関係(事実婚)の場合も、法律婚の場合と同様に、以下の権利・義務が発生します。

内縁関係の場合に発生する権利・義務

  1. 貞操義務(他の異性と性的な結合関係を結ばないという義務)
  2. 同居・協力・扶助義務
  3. 婚姻費用の分担
  4. 慰謝料請求
  5. 財産分与請求

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⑵配偶者がいる異性との間における内縁関係(重婚的内縁)の法律上の保護

  • 原則として重婚的内縁は法律上保護されない

上述した通り、日本では重婚を禁止しており、刑事罰まで規定されています。

夫婦の婚姻関係に与えられる法律上の保護に関しても、法律婚が継続している以上は、第一に保護されるべきは法律婚の関係であると考えられています。

そのため、配偶者がいる異性との間における内縁関係(重婚的内縁)は通常の内縁とは異なり、原則として法律上の保護は受けられません

  • 例外的に重婚的内縁が法律上保護される場合もある

法律婚の夫婦が既に夫婦としての実態を失っており、完全に破綻して形骸化していた場合には、そこには法律上の保護を与えることで守るべき利益は存在しません。

その場合は、守られるべきは、重婚的内縁の関係にある夫と妻の生活であり、人生です。

そのため、法律婚の夫婦の婚姻関係が完全に破綻して形骸化している場合であれば、たとえ離婚が成立していなかったとしても、重婚的内縁の関係は法律上の保護を受けることができると考えられています。

このことについて、裁判例は、以下の事情など様々な事情を総合的に検討して、重婚的内縁の関係を法律上保護するべきかどうかを判断しています。

重婚的内縁が保護されるとの方向の事情の例

  1. 法律婚の夫婦の間で共同生活の実態がない
  2. 法律婚の夫婦の間で関係性断絶の合意が存在している
  3. 別居の状況が長期間継続している
  4. 法律婚の夫婦の間に安定的な経済的依存関係が存在していない
  5. 法律婚の夫婦の間に継続的な連絡・接触がない

そして、重婚的内縁の関係を法律上保護するべきである場合には、通常の内縁関係の場合と全く同じ状況ですので、法律上の保護の程度も通常の内縁関係の場合と全く同じです。

すなわち、その場合は、重婚的内縁の関係にある夫婦相互間で①貞操義務(他の異性と性的な結合関係を結ばないという義務)、②同居・協力・扶助義務、③婚姻費用の分担、④慰謝料請求、⑤財産分与請求などの権利・義務が発生することとなります。

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6.重婚的内縁関係にある者同士でトラブルが発生した場合

重婚的内縁関係にある者同士でトラブルが発生した場合

重婚的内縁の関係にある相手と同居して夫婦として円満な共同生活を続けている状況であれば、重婚的内縁の関係にある夫婦間で大きな法律上のトラブルが発生することはあまりないでしょう。

法律婚も事実婚も、ただそのような制度となっているというだけであり、当事者である男女の心の中まで介入してくるものではありません。

たとえ法律婚はしていなかったとしても、当事者である男女が同じ方向を向いて共同生活を続けているのであれば、その男女間で大きな法律上の紛争は発生しないでしょう。

他方、重婚的内縁の関係の夫婦間の関係性が悪化して、その関係性が破綻しないし破綻に瀕した際には、重婚的内縁の関係の法律上の保護が問題となってきます。

内縁関係の解消の際には、その内縁関係が法律上の保護を受けられるものである場合には、慰謝料や財産分与の請求ができることとなります。

そのため、そのような場合には、慰謝料や財産分与が認められると損をする方の当事者が、内縁ではなかったとか、重婚的内縁であって法律上の保護は受けられないなどといったことを言い出してきて、争いとなってしまうのです。

そのような際に、当事者間で話し合いがつかなければ、家庭裁判所に内縁関係調整調停を申し立てることができます。

内縁関係調整調停を申し立てることにより、調停委員を間に入れて、今度の夫婦の形(内縁関係を継続・再構築するか解消するかなど)や、内縁関係を解消する際の解消条件(慰謝料や財産分与など)についての話し合いを進めることが可能です。

裁判所・裁判手続案内・裁判所が扱う事件・家事事件・内縁関係調整調停

調停委員はトラブルの解消に向けて様々な工夫を凝らして尽力してくれますので、当事者間での話し合いが難航した際には、内縁関係調整調停を申し立てて話し合いを進めることは有効な手段です。

7.配偶者がいる男性の子どもを妊娠した場合

配偶者がいる男性の子どもを妊娠した場合

同居生活をしている不倫相手の子どもを妊娠した場合は、まずは速やかにその子どもを産むか産まないかを決断しなければなりません。

そして、不倫相手との間の子どもを産む決断をした場合には、その子どもはその不倫相手の男性(生物学上の父親)に扶養してもらうべき子どもです。

ただし、その不倫相手の男性との間で法律婚をしていない状況では、その子どもとその不倫相手の男性との間で法律上の親子関係は発生しません。

そのため、その不倫相手の男性に子どもに対する法律上の扶養義務を負ってもらうためには、その不倫相手の男性に子どもを認知してもらって、不倫相手の男性と子どもとの間に法律上の親子関係を発生させる必要があります。

認知することで不倫相手の男性と子どもとの間に法律上の親子関係が発生すれば、不倫相手の男性は子どもに対する扶養義務が発生しますので(民法877条1項)、たとえ不倫相手の男性と離れて暮らすこととなったとしても不倫相手の男性に対して法律上養育費を請求することができるようになります。

認知を行う必要がある場合や認知により生じる権利・義務及び認知の種類や認知の方法について詳しくは【認知とは?結婚していない父親から養育費をもらうための手続きを解説】をご確認ください。

8.同居生活中の結婚できない男女の状況は複雑である

同居生活中の結婚できない男女の状況は複雑である

同居生活中の相手が配偶者と離婚をして、法律婚の成立に至ることができれば良いですが、様々な事情からそれがいつまで経っても困難な場合もあります。

そのような場合に内縁関係(重婚的内縁)としての法律上の保護を受けられるかどうかは、具体的な状況によってまちまちであり、単純明快に結論が出るものではありません。

さらに、内縁関係(重婚的内縁)が法律上の保護を受けられる場合であったとしても、内縁関係(重婚的内縁)にある夫婦間でトラブルが発生した場合には、相互の思惑が絡み合い、話し合いが極めて複雑化かつ難航する可能性があります。

しかも、内縁関係は夫婦としての共同生活の実態が解消されれば解消されてしまいますので、法律上相手に同居を求めたり、相手に対して生活費(婚姻費用)を請求したすることなどはできなくなります。

そのため、法律婚とは異なり、内縁関係(事実婚)からは、逃げようと思えば容易に逃げることができる状況です。

レイスター法律事務所では、無料法律相談において、現在置かれた状況を踏まえどのような法律上の主張が可能であるのか、法律婚に至るためにはどのようなステップが必要でありそのためには何をしていくべきか、今後発生し得るリスクを最低限度にとどめるために今からどのようなことを実施していくべきか、仮に相手との関係を解消することとなる場合にどのような内縁解消条件(慰謝料や財産分与など)となることが見込まれるのかなどについて具体的なアドバイスを行なっています。

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この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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