更新日:
不倫で夫婦が離婚した場合の不倫慰謝料の相場
不倫慰謝料の金額が最も高額になるのは、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合です。
不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合の裁判例には、既に離婚が成立している場合の裁判例と、未だ離婚が成立していない場合の裁判例があります。
この記事では、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合のうち、既に離婚が成立している場合の裁判例を紹介しながら、その場合の不倫された妻・夫から不倫相手に対する慰謝料の相場金額と慰謝料の増減事由を説明します。
1.不倫が原因で離婚に至った場合が最も高額の慰謝料が認められている
不倫とは配偶者以外の異性と性交渉又はその類似行為をすることいい、法律上は「不貞」と言います。
不倫された妻・夫が被った損害が大きい場合には不倫慰謝料の金額は高額になります。
そして、不倫された妻・夫が被った損害が最も大きい場合とは、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合です。
この場合の不倫慰謝料の相場金額(裁判所が認めている金額)は、150万円〜300万円程度となる場合が多いです。
ただし、具体的に裁判所が認める不倫慰謝料の金額は、個別具体的な増減事由によりかなりの幅があり、上記相場以上の金額が認められているケースも数多く存在しています。
また、不倫した配偶者との間での離婚問題と、不倫相手に対する慰謝料を巡る争いが別に進む場合も多いです。
そのため、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合の不倫慰謝料請求訴訟の裁判例には、以下の2通りが存在しています。
- 婚姻関係が破綻しており既に離婚が成立している場合の裁判例
- 婚姻関係が破綻しているものの未だ離婚が成立していない場合の裁判例
この記事では、不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻した場合のうち、①既に離婚が成立している場合の裁判例を紹介しながら、その場合の不倫された妻・夫から不倫相手に対する慰謝料の相場金額と慰謝料の増減事由を説明します。
なお、夫婦が同居を続けた場合の不倫慰謝料の相場金額に関しては、【【不倫慰謝料の相場】夫婦が同居を続けた場合に裁判所が認めている金額】をご確認ください。
2.不倫が原因で離婚が成立している場合の不倫慰謝料の金額
⑴慰謝料金額が100万円未満となったケース
(⑴-1)慰謝料50万円(東京地裁平成21年6月4日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約2年
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:1人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・不貞行為又は婚姻関係破綻の主たる責任は配偶者(妻)にあり、不貞行為等の相手方(男性)の責任は副次的なものにとどまるところ、夫は、妻との離婚の際に、妻に対する慰謝料請求権を放棄し、妻の慰謝料債務を免除していた
・夫による男性に対する慰謝料訴訟が、妻との離婚が裁判上の和解で解決してから約2年後に提起されている
・夫が男性に慰謝料請求訴訟を提起した背景事情に、面会交流が実施されていないことへの不満があった
認められた慰謝料の金額
50万円
(⑴-2)慰謝料50万円(東京地裁平成21年9月28日判決)
妻から、夫と不貞行為した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約23年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・不貞開始当時の夫婦関係が必ずしも円満ではなかった
・妻が夫に対して署名押印した離婚届を交付したことが、夫が女性と交際継続を決定した一因となっている
認められた慰謝料の金額
50万円
(⑴-3)慰謝料60万円(東京地裁平成21年8月31日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約13年
不倫の期間:約半年
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・不貞開始時点で夫婦の婚姻関係は相当程度悪化していた
・不貞関係の開始について、妻が職場の上司の男性に対して、夫との夫婦関係の相談を持ちかけていたという経緯がある
・不貞が離婚の要因の一つではあるが、主たる原因とまではいえない
・不貞関係が解消している
認められた慰謝料の金額
60万円
(⑴-4)慰謝料70万円(東京地裁平成23年2月24日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約1年3か月
不倫の期間:1回のみ
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・不貞行為が1回のみであった
・(妻は男性から強姦されたと主張したが)強姦とはいえない
・離婚の原因が本件不貞のみとは言えない
・婚姻期間が比較的短い
・男性は、夫に対して自己の非を認めて陳謝している
認められた慰謝料の金額
70万円
(⑴-5)慰謝料80万円(東京地裁平成22年1月27日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約1年
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・女性は、妻のモデル仲間であった(夫とモデル仲間の双方に裏切られた妻の精神的苦痛は多大) - 【減額事由】
・不貞開始の際の夫婦の婚姻関係は必ずしも円満な状態にあるとは言えなかった(夫のみならず妻からの説明によって女性もそのように認識していた)
・夫は、心の病に罹患し嫌がる女性に執拗かつ強引に性的関係を結ぶよう求めて、女性はやむを得ずに応じたものであった
・不貞関係の継続について、夫が主導的であり、女性は専ら従属的な立場にあった ・夫は、妻に対して、離婚調停において離婚に伴う慰謝料として200万円の支払いを約束しており、その支払準備も完了していた
認められた慰謝料の金額
80万円
⑵慰謝料金額が100万円〜150万円となったケース
(⑵-1)慰謝料100万円(東京地裁平成22年12月22日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約7年
不倫の期間:約3年
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・女性が夫との間の子どもを妊娠・出産した - 【減額事由】
・妻と夫の間には離婚に伴う慰謝料として1500万円の支払義務があることの公正証書による合意が存在しており、既に465万円が支払われていた
※ただし、当該慰謝料には財産分与としての性質も含まれていると認められること、慰謝料に充当すべき金額が不明であることから、夫から妻に対して支払われた465万円が女性が妻に対して追うべき慰謝料の金額に補填されているとは認められない、と判断された。
認められた慰謝料の金額
70万円
(⑵-2)慰謝料100万円(東京地裁平成22年2月3日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約2年10か月
不倫の期間:約1年10か月
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・不倫の期間が比較的長い - 【減額事由】
・夫婦の婚姻期間が比較的短い
・夫婦の間に子どもがいない
認められた慰謝料の金額
100万円
(⑵-3)慰謝料100万円(東京地裁平成24年7月31日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約17年
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・男性が、不貞行為を否認するだけでなく、夫の男性に対する損害賠償請求訴訟自体が不法行為であるとして反訴を提起したこと - 【減額事由】
・夫も過去に不貞行為をしたことがあり、それによる妻の夫に対する不満や不信が妻と男性の不貞行為につながっていたこと
・夫が、不貞発覚後、妻に対して暴力を振るったり、妻を何日も非難したりするなど、妻を精神的に苦しめる行動をとったこと
・不倫の期間が短い
認められた慰謝料の金額
100万円
(⑵-4)慰謝料100万円(東京地裁平成28年6月30日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約18年
不倫の期間:約2年9か月
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・不倫の期間が長い - 【減額事由】
・不貞開始時点の夫婦の婚姻関係が相当程度悪化していたこと
認められた慰謝料の金額
100万円
(⑵-5)慰謝料140万円(東京地裁平成22年7月28日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約10年6か月
不倫の期間:約1か月
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・夫が妻からの離婚の求めに応じたのは、夫が過去に不貞行為をしたことにも原因がある(そのため、離婚の原因の全てが本件不貞にあるとはいえない)
・不倫の期間が短い
認められた慰謝料の金額
140万円
(⑵-6)慰謝料150万円(東京地裁平成19年9月14日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約6年
不倫の期間:約1年7か月
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・妻が男性との不貞関係解消後に夫との婚姻関係の修復を求め、夫から暴力を振るわれたりしても耐えていたが、夫が婚姻関係を修復しようという姿勢を見せなかった
認められた慰謝料の金額
150万円
(⑵-7)慰謝料150万円(東京地裁平成20年10月28日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約7年
不倫の期間:約2か月
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・女性が、妻から夫に会わないように言われていたにも関わらず、夫と会って不貞に及んだ - 【減額事由】
・不倫の期間が短い
認められた慰謝料の金額
150万円
(⑵-8)慰謝料150万円(東京地裁平成21年12月22日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約1年半
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・女性は、夫との親密な交際が妻に発覚した後も、互いの自宅を訪問し合うような交際を続けた(婚姻関係の平穏に対する違法な干渉がある)
・婚姻期間が長い
・不倫の期間が長い - 【減額事由】
・妻は、夫から、離婚に伴う解決金50万円を受け取っている(当該解決金50万円は不貞行為による精神的苦痛を慰謝する趣旨のものであったというべきである)
認められた慰謝料の金額
100万円
※ただし、夫から受け取った50万円を既払金として差し引いている
(⑵-9)慰謝料150万円(東京地裁平成22年12月21日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約4年
不倫の期間:約2年
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・妻が、不貞発覚直後に、夫婦間のストレス状況の影響による反応性うつ病との診断を受け、体調不良のために勤務先を退職し、その後も反応性うつ病の通院治療を継続している状況にある
・不倫の期間が長い - 【減額事由】
・妻は、離婚時の財産分与として分与を受けた不動産を売却して、住宅ローンを清算した残額として1100万円を確保した
・妻は、夫から、離婚時の解決金として150万円の支払いを受けた
認められた慰謝料の金額
150万円
(⑵-10)慰謝料150万円(東京地裁平成24年11月22日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約3年10か月以上
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・男性が不貞関係に積極的 - 【減額事由】
・不貞行為又は婚姻関係破綻の主たる責任は配偶者(妻)にあり、不貞行為等の相手方(男性)の責任は副次的なものにとどまるところ、夫は妻に対する慰謝料請求の意思がなかった(夫と妻との離婚調停の調停条項において、慰謝料に関して定めは存在せず、他方、他に債権債務が存在しないことを確認する清算条項は存在していた)
認められた慰謝料の金額
150万円
(⑵-11)慰謝料150万円(東京地裁平成21年4月20日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約16年
不倫の期間:約1年半
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【減額事由】
・不貞開始時点で夫婦の婚姻関係が完全に円満で安定したものであったかどうか疑問
認められた慰謝料の金額
150万円
⑶慰謝料金額が150万円を超えたケース
(⑶-1)慰謝料170万円(東京地裁平成22年9月9日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約9年9か月
不倫の期間:約5年
夫婦間の子ども:3人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・不倫の期間が長い
・女性は夫から相当額の金銭やプレゼントをもらっていた - 【減額事由】
・不貞が夫の一方的意思により開始した(後に女性も不貞関係維持の意思を有するようになった)
・女性には夫婦の婚姻関係を故意に崩壊させることを意図していたとはいえない
認められた慰謝料の金額
170万円
(⑶-2)慰謝料200万円(東京地裁平成19年2月21日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約2年
不倫の期間:約1年3か月
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・男性が不貞関係に積極的だった
・男性は夫から何度も妻と別れるよう申し向けられていたにも関わらず、自分からは別れる気がないと開き直った上、妻に対する誘惑を続け、妻に自分を選択するように積極的に求め続けていた
・夫は、食欲不振、睡眠不足等に陥った
・妻と男性の交際開始前の婚姻関係は円満だった
・離婚について夫に落ち度がない - 【減額事由】
・夫は離婚時に妻から男性との不貞行為を理由とする慰謝料として70万円を受け取っていた
認められた慰謝料の金額
130万円
※ただし、妻から受け取った70万円を既払金として差し引いている
(⑶-3)慰謝料200万円(東京地裁平成21年3月27日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約3年
不倫の期間:約1か月
夫婦間の子ども:無し
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・男性は、妻との初めての不貞行為の際に避妊していたとはいえ膣内射精をした(それは射精障害のために夫が行い得なかったことであった)
・男性は、妻から夫との離婚の相談に乗り、離婚後間もない時期に妻と同居を開始し、現在まで同居を続けている
・男性には離婚経験があった(離婚経験を通じて夫婦間の情愛の機微に通じている男性であった)
・不貞開始時の夫婦関係は円満であった - 【減額事由】
・婚姻期間が比較的短い
・夫婦の間に子どもがいない
認められた慰謝料の金額
200万円
(⑶-4)慰謝料300万円(東京地裁平成27年1月30日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約8年
不倫の期間:約1か月(不適切な関係は4か月)
夫婦間の子ども:2人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・男性と妻との不貞関係が、夫が仕事を辞めざるを無くなった原因の一つであること
・夫が精神的苦痛から数度自殺を図ったり、心労で倒れて救急車で運ばれたりたりしたこと
・夫が、男性と妻の不貞の調査のために探偵事務所に調査費用を支払うなどしていたこと
・男性は誠意が伝わるような対応をしていない
認められた慰謝料の金額
300万円
(⑶-5)慰謝料350万円(東京地裁平成21年11月26日判決)
夫から、妻と不貞した男性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約2年8か月
不倫の期間:約1か月
夫婦間の子ども:幼い子ども1人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・離婚の際に、妻が離婚の原因は自身の不貞にあることを認める内容の合意書に署名押印している
・幼い子ども1人がいる
・夫が医学部に通学する学生であった妻を経済的に支えている状況の中で不貞が行われていた
・夫には、妻と男性との不貞関係に比肩するほどの落ち度はない - 【減額事由】
・婚姻期間が長期間ではなかった
・夫は妻から離婚に伴う慰謝料300万円を受け取っている(妻の夫に対する慰謝料支払義務は専ら男性との不貞による婚姻関係の破断を理由とするものであると推認できる)
認められた慰謝料の金額
350万円
※ただし、妻から受け取った300万円を既払金として差し引いている
(⑶-6)慰謝料350万円(東京地裁平成21年5月13日判決)
妻から、夫と不貞した女性に対する慰謝料請求
不貞開始時点での婚姻期間:約14年
不倫の期間:約3年〜4年
夫婦間の子ども:1人
慰謝料金額に影響を与えた主なポイント
- 【増額事由】
・女性は、妻に対して夫との親密な交際状況を示すなどの嫌がらせをするようになり、夫婦仲を引き裂こうとした
・妻は、抑うつ状態となって、不眠や自殺念慮の症状が生じた
・妻は、夫との別居、就労不能、離婚後の養育費の未払いなどのため、極めて逼迫した経済状況に陥った
認められた慰謝料の金額
350万円
3.実は離婚が成立していた方が裁判所の認める慰謝料金額は減少する!?
不倫が原因で夫婦の婚姻関係が破綻して離婚が成立している場合は、その離婚の際に取り決められた離婚に伴う慰謝料が既に支払われている場合があります。
この場合は、既に支払われている慰謝料の金額分は、不倫の相手に対して二重に請求することはできません。
具体例で説明
事例
夫は、女性Aとの不倫関係が妻に発覚し、妻から離婚を求められてそれに応じ、離婚した。
夫は、妻に対して、離婚の際に、不倫の慰謝料として300万円を支払った。
その後、妻は、夫と不倫した女性Aに対して、不倫の慰謝料を請求する損害賠償請求訴訟を提起した。
解説
この場合、裁判所は、妻の女性Aに対する慰謝料請求権は、既に夫から300万円分は支払ってもらっていると判断します。
そのため、妻の女性Aに対する慰謝料請求権が総額で300万円以下であれば、妻の女性Aに対する請求は認められないという結論となります。
そのため、離婚に伴って支払ってもらったお金の性質が「不倫の慰謝料」であるのか、それとも財産分与・離婚後の生活扶助・子どもの教育資金の援助などの「不倫の慰謝料」以外の性質を有するものなのかが争われる場合があります。
また、逆に離婚に伴って「不倫の慰謝料」を支払ってもらっていないとした場合は、不倫をした配偶者に対して「不倫の慰謝料」を請求していない理由が問題となる場合があります。
なぜなら、裁判所は、不倫により婚姻関係が破綻したことに対する主たる責任は配偶者に対して貞操義務(他の異性と性的な結合関係を結ばないという義務)を負っている者(夫・妻)にあり、不倫相手の責任は副次的なものにとどまるとの考えから、その主たる責任を負っている者(夫・妻)に対して「不倫の慰謝料」を請求していない場合には、そのことを不倫慰謝料の減額事由として考慮する場合があるからです。
不倫の責任論からの不倫慰謝料の減額
不倫した妻・夫 | →主たる責任がある |
不倫相手 | →副次的な責任があるにすぎない |
↓
主たる責任がある妻・夫に対して「不倫の慰謝料」の請求をする意思がなかったり、既に請求ができない状況であったりすることが、副次的な責任を負うにすぎない不倫相手に対する「不倫の慰謝料」の減額事由とされる場合がある
このような不倫の慰謝料の減額事由は、②婚姻関係が破綻しているものの未だ離婚が成立していない場合には通常問題となりません。
そのため、①婚姻関係が破綻しており既に離婚が成立している場合の裁判例の方が、②婚姻関係が破綻しているものの未だ離婚が成立していない場合の裁判例よりも、一般的に認められている不倫の慰謝料の金額は少額にとどまる傾向があります。
不倫慰謝料の金額にはおおよその相場金額はありますが、個別具体的な事情次第では、実際に自分の場合にその相場金額通りの判断がされる保証はありません。
また、不倫慰謝料の争いは、大部分が裁判に至る前に話し合い(交渉)でまとまることが多いところ、話し合い(交渉)で合意が成立している不倫慰謝料の金額は、裁判所が認めた不倫慰謝料の金額以上に幅があります。
レイスター法律事務所では、無料法律相談において個別具体的な事情に基づいて、想定される不倫慰謝料の具体的な金額の幅について、交渉にて解決した場合と裁判の判決に至った場合とに分けて、できる限り具体的にお伝えしていますので、是非ご利用ください。