セックスレスは離婚理由になる!夫(妻)が拒否する場合の離婚と慰謝料

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セックスレスは離婚や慰謝料請求の理由になる

 夫婦間の性の不一致、とりわけセックスレス・性行為の拒否という問題は、夫婦間で互いに納得する解決方法・解決策が見つからず、解決しないまま夫婦の婚姻関係が破綻して離婚問題に繋がっていきやすい問題です。
 夫(妻)が拒否するためにセックスレスから抜け出せない状況はとても辛いことであり、別れたい・離婚したいとの考えに至ることもあることです。
 裁判例を見ても、セックスレスが原因で夫婦の婚姻関係が破綻して離婚に至る例は数多く存在しています。
 また、その場合には、セックスを拒否した方に拒否をするだけの筋の通った理由がなければ、慰謝料請求が認められる可能性も高いです。
 この記事では、セックスレスや性行為の拒否を理由に離婚する方法と慰謝料の相場金額について解説します。

1.セックスレスとは

セックスレスとは、夫婦間に性交渉がない状況が長期間継続していることを言います。

夫婦間の性交渉は、相互に愛情を伝え合い、相互に愛情を感じ合うことにより、相互間の精神的な結合を深めていくことができるものであり、夫婦の婚姻関係を円満に維持する上で重要な意義を有するものです。

セックスレスになった原因が夫婦の一方からのセックスの拒否にある場合、拒否されている方の配偶者は強い精神的な苦痛を感じ、そのことが夫婦の婚姻関係の悪化を招く要因となる場合もあります

また、夫婦の一方からセックスを拒否されている方の配偶者は、性的な欲求不満を性行為により解消する方法が存在していないという状況に陥ります。

そのような状況は、人によっては配偶者以外の異性に興味を抱くきっかけとなったり、配偶者以外の異性からの誘惑に負けて関係を有してしまう要因となったりする場合があり、浮気・不倫が始まる原因の一つともなり得るものです。

また、子どもを設けるためには性行為を行うことが必要ですが、夫(妻)が性行為を拒否されてしまった場合には、子どもが欲しくてもそれが叶わない状況です。

夫婦間の性の不一致、とりわけセックスレス・性行為の拒否という問題は、夫婦間で互いに納得する解決方法・解決策が見つからず、解決しないまま夫婦の婚姻関係が破綻して離婚問題に繋がっていきやすい問題です。

この記事では、セックスレスや性行為の拒否を理由に離婚する方法と慰謝料の相場金額について解説します。

2.「セックスレス」や「性行為の拒否」を理由に離婚する方法

⑴離婚成立に向けた手続きの流れの概要

協議離婚・調停離婚

性行為を拒否してセックスレスの原因を作った夫(妻)が離婚に合意する場合には、離婚の理由を問わず、協議離婚(離婚すること及び離婚条件について夫婦が話し合って合意して離婚を成立させる離婚の方法)が成立します。

しかし、相手に離婚の希望を伝えても相手が合意せず、離婚の話し合いが難航する場合には、離婚調停を申し立てて裁判所(調停委員会)の仲介のもとで離婚の話し合いを進めていくこととなります。

離婚成立に向けた手続きの流れ

    ↓ 話し合いがまとまらなければ

  • 調停離婚」(特殊なものとして「審判離婚」)

    ↓ 成立しなければ

離婚調停では、調停委員が離婚に合意しない方を離婚に合意させようと必死に検討してくれることもあり、全体の半数近く(離婚調停中に協議離婚が成立した場合も含む)で離婚の合意が成立しており、離婚調停に弁護士が関与している場合にはさらに離婚合意の成立率は高まります。

参照:裁判所・令和4年 司法統計年報(家事編) 

また、同居中であれば、離婚問題を有利に進めるためにも、別居や婚姻費用の請求を検討することも有用です。

離婚紛争における別居することのメリットについては【別居して離婚を考えている】にて詳しく説明していますので、併せてご確認ください。

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離婚する意思が固まっていたとしても、相手が離婚に合意しない場合には、どのように相手に離婚に合意してもらうのかといった困難な問題に直面します…

裁判離婚

離婚調停を実施しても離婚の合意が成立しなかった場合には、離婚するためには、離婚裁判を提起して離婚判決を得る必要があります。

裁判離婚は、唯一相手が離婚に合意せずとも強制的に離婚となるものであり、離婚達成のための最終手段です。

裁判を提起した場合の直近10年間(平成25年〜令和4年)の離婚の成立率(判決離婚又は和解離婚に至る割合)は、合計で80%であり、ほとんどの場合で離婚が成立しています。

参照:裁判所・人事訴訟事件の概況(令和4年1月〜12月)

⑵離婚裁判で裁判所に離婚判決を獲得する方法

「セックスレス」や「性行為の拒否」自体は法定離婚原因ではない

裁判所は、民法770条1項に規定されている離婚原因(法定離婚原因)が存在する場合に離婚判決を出します。

そのため、離婚裁判では、裁判所に法定離婚原因が存在しているということを分かってもらうことが必要です。

法定離婚原因は以下の5つです。

法定離婚原因(民法770条1項)

  1. 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
  2. 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
  3. 「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
  4. 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
  5. 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)

このように、法律には「セックスレス」や「性行為の拒否」自体は離婚原因として規定されていません。

そのため、「セックスレス」や「性行為の拒否」自体が認められたとしても、それだけでは法定離婚原因が存在しているということにはならず、そのことから直ちに離婚が認められることにはなりません

夫婦間に「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在すれば離婚となる

この場合に問題となる法定離婚原因は、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)です。

すなわち、セックスレスや性行為の拒否を理由とする離婚裁判では、裁判所に、セックスレスや性行為の拒否のために夫婦の間に「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在している状況に至っているということを認定してもらうことができれば、離婚判決が出されることになります。

そして、裁判所は、セックスレスや性行為の拒否のために夫婦の間に「婚姻を継続し難い重大な事由」が存在していると言えるかどうかを、セックスレスとなった原因やセックスレスの期間、夫婦間の話し合いの状況などといった夫婦間の様々な事情を総合的に考察・検討して判断します。

セックスレスや性行為の拒否で「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められる方向の事情

  1. 結婚してから1度も夫婦間の性行為がない
  2. セックスレスの期間が相当長期間継続している
  3. 夫(妻)が性行為を拒否する理由が客観的にやむを得ないと思われるもの(例えば、妊娠中、高齢など)ではない
  4. 夫(妻)が性行為を拒否する理由が不明である
  5. セックスレス・性行為の拒否について、拒否されている側に落ち度(特殊な性的嗜好の強要など)がない
  6. セックスレスの理由が性交不能・性的不能にある(性交不能・性的不能であることは婚姻した後に初めて知らされた)
  7. セックスレス・性行為の拒否の理由が同性愛指向にある
  8. 性行為の拒否の理由が他の異性との交際関係・恋愛感情にある
  9. 性行為を拒否しつつ、自慰行為を繰り返している
  10. セックスレスについての話し合いに応じずに、頑なに性行為の拒否を続けている
  11. セックスレス・性行為の拒否が原因で夫婦喧嘩が繰り返された結果、夫婦間の信頼関係が喪失した状況に至っている
  12. 配偶者から暴言(モラハラ)・暴力(DV)を受けている

なお、「婚姻を継続し難い重大な事由」の存否を巡る離婚裁判の特徴や具体的にどのようなことを行っていくこととなるのかについては【離婚裁判で激しい争いとなりやすい典型的な5つのケースを解説します・③「婚姻を継続し難い重大な事由」の存否を巡る争いがあるケース】をご確認ください。

慰謝料請求が認められる可能性がある

夫(妻)から性行為を頑なに拒否されてセックスレスの状況に陥ってしまうことは、精神的に極めて辛いことであり、ましてそれが原因で夫婦の婚姻関係が破綻するにまで至った場合には、性行為を拒否していた夫(妻)に対して慰謝料請求が認められる可能性があります。

セックスレス・性行為の拒否が原因で夫婦の婚姻関係が破綻して離婚に至った場合の慰謝料の相場金額は50万円〜200万円程度の金額が多いですが、具体的な事情次第ではそれ以上の金額が認められる場合もあります。

裁判所がどのような事情を考慮してその程度の金額の慰謝料を認めているのかについては、後述します。

3.「セックスレス」や「性交渉の拒否」に関連する判例・裁判例

⑴最高裁判所の判例

最高裁判所判決昭和37年2月6日

「・・・夫婦の性生活が婚姻の基本となるべき重要事項である・・・」

最高裁判所判決昭和62年9月2日

「婚姻の本質は、両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思を持って共同生活を営むことにある」

⑵婚姻関係の破綻・慰謝料請求が認められた裁判例

①慰謝料50万円(東京地方裁判所判決平成29年8月18日)

事案:夫の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 夫婦間には一度も性行為がなく、それのみならずキスや抱擁などの身体的接触すらなかった
  2. 妻はそのような夫の態度により夫婦の関係について相当の不安を感じており、そのことを夫に伝えたが、夫の態度に特段の変化はなく、夫は、身体的な接触や言葉を交わすなどして夫婦間の精神的結合を深めるということさえも行う兆しを見せなかった

裁判所の判断のポイント

  1. 精神的結合のもとに成り立つ肉体的結合により更に精神的な結合が深まるというところに、夫婦間の性的接触の重要な意義がある
  2. 性行為等を含む夫婦間の性的な営みについては、元よりそれを想定せずに婚姻をしたなどの特段の事情のない限り、婚姻関係の重要な基礎となるものであるから、これを軽視することは相当ではないが、単なる性的欲求の解消というようなものではないのであるから、肉体的結合の有無ということのみを殊更重視するというのもまた相当とは言い難い
  3. 一度も性行為がないということは、婚姻後間もない夫婦の在り方としては一般的とは言い難い
  4. 妻が夫に不安を感じていることを伝えても夫の態度に特段の変化がなかったことに起因して、夫との婚姻関係の継続を断念するに至ったという妻の心情は首肯(納得)できる
  5. 夫が妻に対する性的関心を示さない、又は妻においてこれ(夫が自分に性的関心を示していること)を感じることができるような態度を示さないことにより、夫婦間の精神的結合にも不和を来たし、婚姻関係の破綻に至ったということができる

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料50万円の請求が認められた

②慰謝料100万円(横浜地方裁判所判決昭和61年10月6日)

事案:夫の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 夫婦は見合い結婚であるところ、結婚式をあげた当夜に羽田東急ホテルに泊まった際も、その後の新婚旅行の際も性行為はなく、そればかりかキスや抱擁などもなく、そのような行為をしない理由についての説明もなかった
  2. 妻は、夫の態度に不安を感じたり、疑問を抱いたりして、新婚旅行の終わりごろには神経性の胃炎にかかってしまい、その後病院に通院した
  3. 夫婦は新婚旅行の後に夫が購入していた新居にて同居生活を始めたが、それ以降も性行為がないばかりか、同じ布団で就寝することも、抱擁したりすることもなかった
  4. 妻はこのような生活に堪り兼ねて母親に事情を打ち明け、妻の両親が夫に事情を確かめたものの、夫は理由らしい理由を述べなかったため、妻は実家に帰り、別居が開始された
  5. 夫は別居開始当日に別居開始後に包茎の手術を受け、それを知った妻は夫が性行為を持たなかった理由(恐らく自分が包茎であることを気にしたため)を漠然と察したことから、正式に結婚すればやり直せるかもしれないと思い、夫婦で婚姻届を提出することとした
  6. しかし、夫は、妻に対して手術の話や性行為を持たなかった理由を打ち明けたりすることはなく、また夫の実家に挨拶に行くこともしなかったので、妻はそのまま実家に留まり、その後夫婦の間で離婚の話し合いが進められることとなった
  7. 夫はクリスチャンで、神経質な性格の持ち主であり、性行為をした経験がなかったが、性的機能には(包茎であったこと以外には)異常はなく、健康程度も普通であった
  8. 妻も性的な関係の経験はなく、女性としてためらいがあったため、妻から積極的に夫を性行為に誘うような態度をとったことはなかった

裁判所の判断のポイント

  1. 夫婦は生殖を目的とする結合であるから、夫婦間の性行為は極めて重要な意味を持つものであり、それは結婚届前の事実上の夫婦についても異なるところはない
  2. 夫婦間、特に新婚当初の夫婦間に性行為が相当期間全くないのは極めて不自然、異常である
  3. 夫婦間に性行為がないことがもっぱら夫の意思に基づく場合には、妻に対し理由の説明がなされるべきである。理由いかんによっては妻の協力が得られることがあるであろうし、なんといっても妻の不安、疑問、不満を除くために説明が必要である
  4. 夫は恐らく自分が包茎であることを気にしたために性行為を持たなかったと考えられるが、このような場合こそ理由の説明が必要であり、また理由の説明で解決がはかられる場合である
  5. 新婚初夜以来、夫が何らの理由の説明なしに、性行為をなさず、そのため妻が不安を募らせ、別居に至り、そして婚姻破綻に至ったものであり、夫婦の婚姻関係が破綻した主な原因は夫側にあると言わざるを得ない

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料100万円の請求が認められた

③慰謝料120万円(福岡高等裁判所判決平成5年3月18日)

事案:夫の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 夫は、妻に対して十分な説明をしないまま、生活費が不足しているにも関わらず、「交際」と称して出歩くことを繰り返しており、妻は、そのような夫の態度に思いやりのなさを感じていた
  2. 夫は、家庭を顧みて妻の不満を解消するに十分な努力をしていなかった
  3. 夫婦の間には子どもが1人いる
  4. 夫婦の性行為は、入籍後5か月内に2、3回程度と極端に少なく、それ以降は全く性行為がない状態に至っていた
  5. 反面、夫はポルノビデオを見て自慰行為をしていた
  6. 夫は、妻からの指摘を受けて一旦は改善を約束したもの、結局は改めなかった

裁判所の判断のポイント

  1. 性生活に関する夫の態度は、正常な夫婦の性生活からすると異常というほかはない
  2. 夫は改善を約束しながら結局は改めなかった
  3. 以上からすれば、夫婦の婚姻関係は既に破綻しているものと言わざるを得ず、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると認められる

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料120万円の請求が認められた

④慰謝料150万円(岡山地方裁判所津山支部判決平成3年3月29日)

事案:妻の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 妻が夫との性行為を「異性に身体を触られると気持ちが悪い」などといった理由で拒否しており、夫婦喧嘩が絶えない状況だった
  2. 妻には身体的な異常はなかった
  3. 妻は、妻と仲の良い夫の親戚から性行為は夫婦生活にはなくてはならないものだから応ずるようにとの説得を受けても、妻の性行為の拒否の態度は改善しなかった

裁判所の判断のポイント

  1. 婚姻は一般には子孫の育成を重要な目的としてなされるものであることは常識であって、夫婦間の性行為もその意味では通常伴うべき婚姻の営みであり、当事者がこれに期待する感情を抱くのも極当たり前の自然の発露である
  2. 夫婦の婚姻関係は、妻の男性との性行為に耐えられない性質から来る夫との性行為拒否により夫婦の融和を欠いて破綻するに至ったものと認められる
  3. 妻は、夫と婚姻しながら性行為の拒否をし続けた等の言動により夫婦の婚姻関係を破綻させたものであり、夫に対して、不法行為責任に基づいて夫に被らせた精神的苦痛を慰謝すべき義務を負う

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 夫から妻への慰謝料150万円の請求が認められた

⑤慰謝料200万円(京都地方裁判所判決昭和62年5月12日)

事案:夫の性的不能が原因でセックスレス

  1. (様々な事情を総合考慮すると)夫は性的不能であり、夫婦間には約3年半の同居期間中、性行為は一度もなかったと推認できる
  2. 夫は性的不能であることを婚姻前に妻に告げていなかった(なお、夫は性的不能ではないと争っていたものと考えられる)

裁判所の判断のポイント

  1. 夫の性器系に器質的異常は認められなかったが、性的不能は性器系の器質的異常以外の原因でも生じ得るものであるから、器質的異常が認められないということのみによっては夫が性的不能であるとの推認は覆らない
  2. 「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、婚姻中における両当事者の行為や態度、婚姻継続の意思の有無など、当該の婚姻関係にあらわれた一切の事情からみて、婚姻関係が深刻に破綻し、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込がない場合をいう
  3. 婚姻が男女の精神的・肉体的結合であり、そこにおける性関係の重要性に鑑みれば、病気や老齢などの理由から性関係を重視しない当事者間の合意があるような特段の事情のない限り、婚姻後長年にわたり性行為のないことは、原則として、婚姻を継続し難い重大な事由に当たるというべきである

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料200万円の請求が認められた

⑥慰謝料500万円(浦和地方裁判所判決昭和60年9月10日)

事案:夫の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 夫婦の間には未成年の子どもが2人いる
  2. 夫は、ポルノ雑誌に異常な関心を示すようになり、ポルノ雑誌(いわゆるビニ本)を買い漁っては一人で部屋に閉じこもり、ポルノ雑誌を見ながら自慰行為に耽り、妻との性行為を拒否するようになった
  3. そのため、長男出生後は夫婦間の性行為はほとんど行われていない
  4. 二男妊娠のときは、妻はどうしてももう一人子どもが欲しかったために受胎可能時に夫に頼んで性行為に応じてもらったものであった
  5. 妻は、夫に対して、正常な性生活をするよう何度も哀願したが、夫は改めないどころか、遂には妻と同室で寝ることすら拒否するようになった
  6. 夫は、いわゆるキセル乗車をしたり、ごみ箱を漁って物を拾ってきたり、他人の物を盗んだり、落ちているガムを拾って子どもに与えたりしたため、妻は子どもへの影響を配慮して夫に何度もやめるよう言ったが、夫は改めようとしなかった
  7. 妻が夫との生活に耐えられなくなり、夫に離婚を切り出したところ、夫は妻に対してこれまでの生活を改めることを約束した
  8. しかし、結局夫は生活を改めなかったので、妻は子ども2人を連れて別居を開始した

裁判所の判断のポイント

  1. 夫婦の婚姻関係は夫の異常な性癖によって完全に破綻しており、その責任は一方的に夫に存することは明らかである

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料500万円の請求が認められた

⑦慰謝料500万円(京都地方裁判所判決平成2年6月14日)

事案:夫の性行為の拒否が原因でセックスレス

  1. 夫婦の間には、結婚した後一度も性交渉がなかった
  2. 夫は、妻との性交渉に及ばなかった理由について、当初妻の生理で出端(出鼻)をくじかれたとか、妻が睡眠薬を服用していたことから子どもが出来た場合に奇形児出生の危険があると考えたためなど、様々な理由を述べていた
  3. 夫は、妻が性行為のないことで悩んでいたことを全く知らなかった
  4. 妻が、夫に対して、なぜ一度も性行為をしないのかと直接確かめたことはなかった
  5. 感情的になった妻が自宅に二度と戻らないなどと夫との離婚を求めるものと受け取られかねないことを発言したことが、離婚の直接の契機となっていた

裁判所の判断のポイント

  1. 夫の主張する妻との性行為に及ばなかった理由は、いずれも性行為の拒否の理由とはなり得なかったり、真の理由であるとは到底思えなかったりするものであり、結局、夫が性行為に及ばなかった真の理由は判然としない
  2. 夫が夫婦間に性行為が存在していないにも関わらず、妻がそのことで悩んでいたことを全く知らなかったことからすれば、夫としては夫婦というものでありながら妻と性行為をすることに思いが及ばなかったか、もともと性行為をする気がなかったか、あるいは夫は性的能力について問題があるのではないかと疑わざるを得ない
  3. 妻の言動(離婚を求めるものと受け取られかねないような言動)は、本件の事実経過のもとではある程度やむを得ないことであるといわなければならない
  4. 夫の言動は、真面目に結婚生活を考えていた者のそれとは到底思えない
  5. 夫婦の婚姻関係は妻の言動で破綻したものではなく、もっぱら夫の行動によって離婚することとなったものといわざるを得ない
  6. 本件離婚により妻が多大の精神的苦痛を被ったことは明らかであり、夫は妻に対し慰謝料の支払をする義務がある

結論

  1. 夫婦の婚姻関係の破綻が認められた
  2. 妻から夫への慰謝料500万円の請求が認められた

4.セックス観も夫婦の婚姻関係の状況も人それぞれ

人生における性行為の意義や重要性の程度(いわばセックス観)は人それぞれでしょう。

性行為がなければないでへっちゃらな人もいるでしょうし、セックスのない人生なんて考えられないという人もいるでしょう。

そして、夫婦といえども別の人格を有する存在であり、性別も別であって、身体的な作りや性欲の寡多、性的な能力や老化の程度なども別ですから、夫婦相互のセックス観にズレが存在している場合があることは、いわば当然ともいえます。

確かに、夫婦間で性行為という愛情を確かめて深め合う行為がないことにより、相互に愛情が薄れていってしまうこともあり得ることです。

しかしながら、愛情と性行為は単純にイコールで結ばれるものではありません。

人は「愛している=性行為を行いたいと思っている」などといった単純な精神構造を持っているものではありませんし、愛情は「性行為をしない=愛していない」などといった単純な物差しで測れるものでは決してありません

夫婦である以上は嫌々ながら性行為に応じ続けなければならないというものではないでしょうし、性行為を行う気にはなれないものの夫(妻)のことをしっかりと愛しているという人だって当然います。

問題なのは、夫婦相互のセックス観にズレがあって、そのような夫婦間の性的な不一致が原因で夫婦の婚姻関係に亀裂が入ってしまい、それを解消することができないまま亀裂がどんどん広がっていき、夫婦の婚姻関係が破綻してしまうことです。

セックスレス・性行為の拒否で深く悩み、離婚についても真剣に検討している場合、その気持ちをありのままにパートナーに切り出すことで、夫婦の婚姻関係に入った亀裂が解消することもあります。

ただ、パートナーに対して離婚を検討するほどに深く悩んでいることを伝えたとしても、夫婦間のセックス観のズレを埋め合って夫婦が互いに納得できる形での解決に至れないこともありますし、そもそもパートナーが自身が主体的に取り組むべき問題として真剣に取り合ってくれないこともよくある話です。

また、既に夫婦の婚姻関係に入った亀裂が大いに広がった末に離婚を決意している場合には、もはや問題の本質はセックスレス・性行為の拒否ではないこともあるでしょう。

離婚を切り出されたパートナーが今更になって性行為の実施を申し出てきたとしても、一旦失った精神的な繋がりや愛情はそう単純に戻るものではありませんので、パートナーとの関係の修復に向けて努力するのではなく、パートナーとの関係を解消して別の道を歩むとの選択もあり得る考えです。

レイスター法律事務所では、無料相談にて、同居・別居の別や子あり・子なしの別などの具体的な状況を踏まえて、早期かつ好条件での離婚成立のために最適な離婚交渉の方針や交渉戦略、離婚成立までの婚姻費用(生活費)の具体的な金額、想定される離婚条件(財産分与・慰謝料・解決金・養育費など)の金額などといった離婚問題全般の見通しなどについて、具体的なアドバイスを行なっています。

セックスレス・性行為の拒否で離婚を検討している際は、是非、こちらからお気軽にご連絡ください。

     

この記事の執筆者

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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