離婚しないで別居を続ける理由と別居しつつ離婚しない状況が継続可能な期間を解説

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離婚しないで別居を続ける理由と別居しつつ離婚しない状況が継続可能な期間を解説

別居婚や卒婚という言葉もあるように、夫婦が話し合って納得した上で円満に別居するスタイルの生活を選択している場合もあります。

他方、夫婦の婚姻関係が悪化して別居に至ったものの、離婚をしていない状況の夫婦もいます。

離婚は夫婦が合意すればいつでも成立するものですが、離婚を求めても相手が離婚に合意してくれない場合には簡単には離婚は成立しません。

この記事では、夫婦が話し合って円満に別居を続ける選択をした場合や、別居中の夫婦の一方が離婚に合意しなかった場合に、離婚しないで別居を続ける状況がどの程度継続する可能性があるかを解説します。

1.離婚しないで別居を続ける理由

離婚しないで別居を続ける理由

夫婦が離婚しないで別居を続ける理由は、大きく分けて、以下の2通りがあり得ます。

  1. 夫婦で話し合って別居するスタイルの生活を選択したから
  2. 夫婦の一方が離婚に応じないから

このうち、①の場合は、夫婦が夫婦の形としてお互いに納得して別居を続けることとしている状況であれば、離婚の問題が生じることはないでしょう。

他方、②の場合は、まさに離婚問題に直面している最中であり、いわば夫婦の状況として過渡期ともいえる状況です。

この記事では、①について簡単に触れた上、②の場合を中心として、離婚しないで別居を続ける状況がどの程度継続する可能性があるかを解説します。

2.①夫婦で話し合って別居するスタイルの生活を選択した場合

法律は、夫婦の本質的義務として、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」と規定しています(民法752条)。

  1. 夫婦の本質的義務
  1. 同居義務
    ⇨夫婦は同居するべきである
  2. 協力義務
    ⇨夫婦は共同生活維持のために互いに家事・育児などの協力をし合うべきである
  3. 扶助義務
    ⇨夫婦は互いに扶助(看護・介護・生活費の負担など)をし合うべきである

しかし、法律はそうは言っていますが、そもそも夫婦の在り方にはルールはないはずです。

最近では、夫婦や男女の価値観も多様化し、最初から別居婚(夫婦が同居しないという生活スタイルを選択すること)を選択する夫婦や、卒婚(離婚しないままで同居共同生活を解消すること)を選択する夫婦や、オープンマリッジ(夫婦が相互に他の異性と男女の関係を築くことを認め合っているという夫婦の形)の合意を取り交わす夫婦も増えています。

「夫となった以上は・・・するべきだ」「妻であるならば・・・なのは当然だ」「夫婦とは・・・というものだ」などといった他の誰かの理想の夫婦論・価値観を常にそのまま受け入れなければならないわけではありません。

夫婦となった男女がその形で納得して円満な関係が築かれているのであれば、それで良いはずです。

夫婦の双方がその生活スタイルで納得している以上は、離婚の問題が生じることもないでしょう。

ただ、夫婦のいずれかが納得していないのであれば、夫婦の形に関する価値観の違いは、遅かれ早かれ離婚問題に発展していく可能性があります。

そのため、夫婦の間で認識や考え方の違いが生じていたり、将来の夫婦の在り方に関する価値観の違いが生じていたりする場合には、夫婦で今後のことについて改めてよく話し合って解消していくことが重要です。

離婚問題における「別居」に当たるか

離婚問題における「別居」とは、単純に別の場所で生活をしていること(客観的な状況としての別の場所での生活状況)を意味するのではなく、その生活状況が夫婦としての共同生活を否定するものであること(その状況が継続すれば婚姻関係が破綻していると考えざるを得ないものであること)が必要と考えられています。

そのため、夫婦で話し合って別居を続けるスタイルの生活をすることに決めた上で円満に別居生活を続けている場合は、離婚問題における「別居」には当たりません。

だだし、最初は上手くいっていたものの、夫婦の婚姻関係が悪化してしまい、離婚問題が持ち上がることもあります。

そのような場合には、夫婦の一方が他方に対して離婚を切り出したりした場合など、夫婦の一方が夫婦としての共同生活を否定する意思を有していることが明確となった時点で、離婚問題における「別居」が開始されたと考えることとなります。

3.②夫婦の一方が離婚に応じない場合

⑴夫婦の一方が離婚に応じないという状況は過渡期の状況である

夫婦の一方が離婚に応じない場合

離婚は夫婦が離婚に合意すれば理由を問わず成立します。

しかし、夫婦の婚姻関係が悪化して別居の状況に至った上、夫婦の一方が他方に対して離婚を求めたとしても、他方の夫婦が離婚に合意しない場合には、簡単には離婚は成立しません。

その場合には、夫婦は離婚しないで別居のままの状況に至ることとなります。

この場合の夫婦の状況は、このまま延々と生涯別居の状況が続いていくものではなく、今後同居・復縁に至るか、離婚に至るかの最終的な状況に至るまでのいわば過渡期の状況であることが多いです。

⑵離婚に合意しない理由

夫婦が既に別居して離婚問題が持ち上がっている状況に至っている以上、夫婦としての共同生活からもたらされるメリット(特に精神的なメリット)は失われている状況です。

加えて、離婚問題という極めてストレスフルな問題が未解決の状況のままで続いているという状況は、精神的に極めて辛いものです。

それにも関わらず離婚に合意しない理由は些細な理由を含めると実に多様なものですが、主な理由は以下のものであることが多い印象です。

離婚に合意しない主な理由

経済的な理由の例

  1. 離婚すると自分の生活費(婚姻費用)がもらえなくなってしまうから
  2. 離婚すると自分や子供が相手の扶養から外れてしまうから
  3. 相手から伝えられた離婚条件に納得できないから
  4. 離婚する際に相手に財産を渡したくないから
  5. 離婚後の生活が不安だから

経済的理由以外の理由の例

  1. 復縁を諦めきれない、夫婦関係を修復してやり直したい
  2. 子供の養育問題や親権問題
  3. 相手の希望(不倫相手との再婚など)が叶うことが納得いかないから
  4. 世間体
  5. 相手の「離婚したい理由」に納得できないから

離婚は人生に多大な影響を及ぼすものですので、離婚に合意するかどうかの判断が慎重になることは当然です。

離婚に合意することで本当に良いかどうかは、経済的な問題や子供に関する問題など様々なことを十分に検討して考えをまとめていく必要があります。

4.離婚に合意しなかった場合における離婚に至るまでの期間

⑴離婚に合意しなければずっと離婚とはならないのか

離婚する代表的な方法には、協議離婚・調停離婚・裁判離婚の3つの方法があります。

  1. 協議離婚
    ⇨離婚すること及び離婚条件について夫婦が話し合って合意して離婚を成立させる離婚の方法
  2. 調停離婚
    ⇨家庭裁判所で調停委員の仲介のもとで離婚問題について話し合って合意して離婚を成立させる離婚の方法
  3. 裁判離婚
    ⇨家庭裁判所に離婚裁判(離婚訴訟)を提起して離婚判決を得ることにより離婚を成立させる離婚の方法

このうちの協議離婚と調停離婚は夫婦が離婚すること自体及び離婚条件に合意しなければ離婚は成立しません。

そのため、合意さえしなければ協議離婚や調停離婚で離婚が成立することはあり得ませんので、その場合は、裁判離婚が唯一の離婚する方法となります。

つまり、離婚に合意しなかった場合には、離婚裁判で離婚判決が出されるまで離婚となりません

⑵離婚問題が持ち上がってから離婚裁判が開始するまでの目安期間

離婚問題が持ち上がってから離婚裁判が開始するまでの期間は、夫婦の状況や話し合いの状況によって多様です。

中には、夫がある日突然自宅からいなくなって、そのまま数年間音沙汰がなく、その後になって初めて離婚問題が開始されることもあります。

ただ、別居開始後比較的早期に離婚の話し合いが開始された場合における、離婚裁判が開始されるまでの概ねの目安期間は、以下の通りです。

離婚の話し合いが開始されてから離婚裁判が開始されるまでの目安期間

  1. 離婚の話し合いが開始されるまでの期間
    ⇨0か月〜2か月程度
  2. 離婚の話し合いの期間
    ⇨3か月〜7か月程度
  3. 離婚調停の期間
    ⇨4か月〜9か月程度

通算期間:7か月〜1年6か月程度

離婚に合意しなければ、当然ながらこの期間に離婚は成立しません。

⑶離婚裁判で離婚判決が出されるかどうか

  • 離婚判決が出されるかどうかは法定離婚原因が存在するかどうかで決まる

離婚裁判が提起されても、離婚判決が出されなければ離婚は成立しません。

そして、裁判離婚では、法律に定められている離婚原因(法定離婚原因)が存在しているかどうかが審理され、それが存在している場合に限り離婚判決が出されることとなります。

法定離婚原因とは、以下の5つです。

法定離婚原因(民法770条1項)

  1. 「配偶者に不貞な行為があったとき」(1号)
  2. 「配偶者から悪意で遺棄されたとき」(2号)
  3. 「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」(3号)
  4. 「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」(4号)
  5. 「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(5号)

そのため、離婚を求められている方が①不倫・不貞行為をしていたり、離婚を求められている方が②「悪意の遺棄」をしていたりした場合には、基本的には裁判所は離婚判決を出します。

そのような事情がない場合は、⑤「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因が存在しているかどうかが争いとなります。

裁判所が「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因が存在していると判断すれば離婚判決が出されますし、存在していないと判断すれば離婚判決は出されません(離婚請求を棄却する判決が出されます)。

そして、離婚を求められている方がモラハラやDVを行っていた場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因が存在すると判断されて、離婚判決が出される可能性が高いです。

他方、夫婦の関係が悪化したこれといった明確な原因がない場合には、裁判所が、当該夫婦の間に存在している様々な事情・要素を総合的に考慮して、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因が存在するかどうかを判断することとなります。

  • 「婚姻を継続し難い重大な事由」の判断では別居期間が重要となる

「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因の存否を巡る争いで極めて重要な意味を有しているのが別居期間です。

裁判所は、夫婦が同居中の場合は、余程の事情がない限り、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因の存在を認めません。

他方、夫婦が別居している場合には、別居以外に特段の事情がなかったとしても、別居の期間によっては「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」という法定離婚原因の存在を認め、離婚判決を出します

別居期間と離婚判決に関する裁判例の傾向は、概ね以下の通りです。

別居期間と離婚判決が出る可能性
同居中 ほとんど離婚判決が出ない
別居期間2年半未満 離婚判決が出る可能性は少ない
別居期間2年半以上 離婚判決の可能性が上がってくる
別居期間5年以上 離婚判決の可能性が高い

つまり、特に夫婦関係が悪化したこれといった明確な原因が存在していなかったとしても、別居の状態が2年半以上に至っている場合には徐々に離婚判決が出される可能性が上がっていき、別居期間が5年以上となっている場合には離婚判決が出される可能性が高い状況に至ります。

なお、離婚裁判の期間は、第一審が概ね1年〜1年半程度の期間を要し、控訴審が概ね4か月〜7か月程度の期間を要することが多いです。

そして、別居期間は、離婚裁判の開始の時点ではなく、審理の最終日(口頭弁論の終結の時点)までの期間で検討されることが通常です。

  • 離婚を請求している配偶者が有責配偶者である場合の別居期間

有責配偶者とは、夫婦の婚姻関係の破綻に主な責任を負う配偶者をいい、その典型例は不倫をした配偶者です。

裁判所は、有責配偶者からの離婚請求は原則として認めません。

たとえ夫婦の婚姻関係が破綻した状況に至っていたとしても、その夫婦の婚姻関係を破綻させた主な責任を負っている有責配偶者は、原則として離婚裁判において離婚判決を出してもらって離婚することはできません。

裁判所が有責配偶者からの離婚請求を認める場合もありますが、そのためには以下の厳格な例外要件を充足することが求められています。

有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件

夫婦の婚姻関係が破綻していること
    +

  1. 婚姻期間と比較して相当長期の別居の継続
  2. 未成熟の子がいないこと
  3. 離婚によって他方配偶者が精神的・経済的に苛酷な状況におかれないこと

そして、裁判所は、①の別居期間の要件の検討においては様々な夫婦間の事情を総合的に考慮して判断していますが、少なくとも6年〜10年程度の期間がなければ離婚を認めておらず、長いと20年を超える別居期間が存在していたとしてもなお離婚を認めていない例もあります。

やや古い裁判例になりますが、中には、別居期間が20年を超えていてもなお離婚請求を認めていない例もあります。

つまり、離婚を請求している配偶者に夫婦の婚姻関係が破綻した主な原因がある場合には、別居期間が6年〜10年以上の長期間に及んでいたとしても、離婚判決が出されない可能性があるということです。

⑷まとめ

離婚を請求している側が有責配偶者ではない場合は、特段の事情がなかったとしても、別居期間が概ね2年半以上に至っている場合には離婚判決が出される可能性があり、別居期間が5年以上となると離婚判決が出される可能性が高いといえます。

他方、離婚請求をしている側が有責配偶者である場合は、別居期間が6年〜10年以上に及んでいたとしてもなお、離婚判決が出されない可能性があります。

つまり、それまでの期間は、離婚に合意さえしなければ離婚とならずにいられるということです。

4.離婚を求められた場合の選択肢

別居中の配偶者から離婚を求められている場合の選択肢

離婚に合意しない理由のうち、経済的理由以外の理由は実に多様であり、しかも法律論での解決が難しかったり、そもそも法律論で解決するような問題ではなかったりする場合があります。

また、離婚に合意しない理由のうちの経済的な理由について考えると、特に婚姻費用の支払いを受けられる方からすれば、離婚に合意することは経済的にマイナスとなることです。

離婚を積極的に希望しているのであればまた別の話ですが、離婚を積極的に希望していないにも関わらず、離婚に合意して経済的なマイナスを受け入れる気にはなれないことも当然あるところでしょう。

他方、離婚を請求している側からすれば、離婚裁判を提起しても離婚判決が出されない可能性が高い状況であれば、早期に離婚に至るためには、どうにかして相手に離婚に合意してもらわなければなりません。

そのため、離婚を請求する側としては、いわば相手に離婚に合意してもらうための一定のコストを負担しなければならない理由があり、その一定のコストを負担する覚悟があり得る状況です。

ただ、別居期間が長期化して離婚裁判を提起すれば離婚判決が出されるであろう状況に至っている場合であれば、もう相手に離婚に合意してもらうために経済的な譲歩をする必要はないと考える人もいるでしょう。

離婚裁判を提起すれば離婚判決が出される可能性が極めて高いという状況であれば、なにも離婚条件としての一定の追加コストを負担せずとも、相手が離婚に合意しないのであればさっさと離婚裁判を提起して離婚判決を出してもらって離婚すれば良いということとなります。


このことを、離婚請求を受けている側から見れば、別居期間が短くて離婚裁判で離婚判決が出されることはないと思われる時点で離婚の話し合いを進めた方が、経済的なメリットのある離婚条件(離婚に合意するコスト分だけ上乗せされた経済的な給付など)での合意が成立する可能性が高い状況ともいえます。

そのため、このまま別居の状況を続けていてもいずれ離婚判決で離婚になるのであれば、一定程度の上乗せされた経済的にメリットのある離婚条件で早期に離婚に合意する方が、いずれ離婚判決で離婚となるよりも人生に与える代償が少なく、かつ、経済的にもメリットが大きいと考えられる場合もあります

どのような決断をするにせよ、別居中の配偶者から離婚を求められている場合は、今後の対応をしっかりと検討して決めていかなければなりません。

レイスター法律事務所では、無料相談において、現在の状況を踏まえ、

  1. 離婚に合意する場合と離婚に合意しない場合とのそれぞれのメリットやデメリット
  2. 今後相手がどのような行動に出てその結果どのような状況に至る可能性があるのか
  3. 仮に離婚条件次第では離婚に合意して良いと考えた場合にどの程度の追加の経済的な給付であれば合意にメリットがある水準であるのか

などといった事情について、具体的なアドバイスを行なっています。

別居中の配偶者から離婚を求められている際は、一人で悩まず、こちらからお気軽にご連絡ください。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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