養育費の相場計算に必要な算定表の計算方法(標準算定方式)について弁護士が詳しく解説

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養育費の相場計算に必要な算定表の計算方法(標準算定方式)について弁護士が詳しく解説

養育費には相場金額(養育費算定表により計算された金額)があり、その養育費の相場金額の範囲内の金額で合意が成立することが圧倒的に多数です。

ただし、養育費算定表には、養育費の義務者が子供と生活をしているパターンや、給与を得つつ自営での稼ぎもあるパターンや、収入が2000万円を超えているパターンが記載されていません。

その場合は、養育費算定表の考え方(標準算定方式)にまで遡って養育費の相場金額を計算する必要があります。

この記事では、養育費算定表の考え方(標準算定方式)に遡って養育費の金額を計算する方法について、具体例を用いて解説します。

1.養育費算定表だけで計算できない場合

養育費算定表だけで計算できない場合

養育費とは、離婚により親権を失った方の親(非親権者)が子供の生活のために負担するべき費用のことを言います(民法766条、877条)。

養育費の具体的な金額は、家庭裁判実務上、養育費算定表に基づいて計算されています。

ただ、養育費算定表はあくまでオーソドックスなパターンしか記載されていません

具体的には、養育費算定表に記載されているのは、以下のパターンのみです。

子供・1人〜3人の場合
・権利者(受け取る側)が子供全員の親権者である場合のみ
年収・給与所得0円〜2000万円の場合
・事業所得0円〜1567万円の場合

これ以外のパターンは、養育費算定表に記載されていませんので、養育費算定表をいくら見ても養育費の相場金額は分かりません。

養育費算定表だけからでは養育費の相場金額が分からないパターンとして、例えば以下のような場合があります。

  1. 子供の人数が4人以上いる場合
  2. 双方が子どもの親権者となっている場合(例えば長男は元妻が親権者であり二男は元夫が親権者となっている場合)
  3. 給与所得と自営業(事業所得)の両方の収入がある場合
  4. 給与所得が2000万円を超えている場合
  5. 自営業者で所得1567万円を超えている場合

そのような場合は、養育費算定表の考え方(標準算定方式)にまで遡って計算をする必要があります。

標準算定方式を用いた養育費の計算の流れについて、以下で詳しく解説します。

2.算定表の考え方(標準算定方式)

養育費算定表は、「標準算定方式」という計算方法に基づいた計算結果を表にまとめたものです。

「標準算定方式」では、養育費の金額を以下のように計算します。

「標準算定方式」の計算方法

  1. 計算の前提となる夫婦の収入を確定
  2. 夫婦それぞれの基礎収入金額を計算
  3. 仮に養育費の支払い義務者が子どもと同居していた場合の子どもの生活費を生活費指数に基づいて算定
  4. ③で計算した子どもの生活費を夫婦それぞれの基礎収入にて按分比例して養育費の支払い義務が実際に負担するべき子どもの生活費の年額を算定
  5. ④で算定した子どもの生活費の年額を月額に換算する

以下で具体的に説明します。

⑴①計算の前提となる夫婦の収入を確定

養育費の金額は夫婦の現実の収入金額に基づいて計算されるのが原則です。

ただし、現実の収入金額を前提として計算すると不当である場合には、現実の収入金額ではなく、その気になれば稼げるであろう水準の収入(潜在的稼働能力による収入)が存在していることを前提として養育費の金額が計算されることとなる場合もあります。

この潜在的稼働能力は、特に、養育費の支払い義務者が突如無職・低収入となった場合や、養育費の支払い権利者が働こうと思えば働ける状況にあるにも関わらず無職である場合などに問題となります。

⑵②夫婦それぞれの基礎収入金額を計算

実際に生活費として使用できるのは、実際の収入金額から税金などの様々な費用を差し引いた残りの金額です。

この実際に生活費として使用できるであろう金額のことを、基礎収入金額と呼びます。

標準算定方式では、基礎収入金額を、収入金額に一定の割合(基礎収入割合)を掛け算することで計算しています。

標準算定方式が計算で用いている基礎収入割合は、以下の通りです。

  • 給与所得者の場合の基礎収入割合
収入金額基礎収入割合
〜75万円54%
〜100万円50%
〜125万円46%
〜175万円44%
〜275万円43%
〜525万円42%
〜725万円41%
〜1325万円40%
〜1475万円39%
〜2000万円38%〜

  • 自営業者の場合
収入金額基礎収入割合
〜66万円61%
〜82万円60%
〜98万円59%
〜256万円58%
〜349万円57%
〜392万円56%
〜496万円55%
〜563万円54%
〜784万円53%
〜942万円52%
〜1046万円51%
〜1179万円50%
〜1482万円49%
〜1567万円48%

具体例で説明①

妻の収入が200万円の給与所得である場合
⇨妻の基礎収入金額は「200万円×43%」の86万円

夫の収入が500万円の給与所得と400万円の事業所得である場合
⇨夫の基礎収入金額は「500万円×42%+400万円×55%」の430万円

⑶③仮に養育費の支払い義務者が子と同居していた場合の子の生活費を生活費指数に基づいて算定

例えば、

・夫婦の間に2人の子供 (8歳と16歳)が存在
・離婚して妻が親権者となって夫とは別に生活をしている
・仮に子供2人が夫と生活をしていた

とすれば、夫が必要とする生活費は、以下のようになります。

夫が必要とする生活費

 大人1人分(自分の分)
   +
 8歳の子どもの分
   +
 16歳の子どもの分

そして、大人が必要とする生活費の金額は、子供が必要とする生活費の金額よりも高額になります。

また、子供についても、子供の年齢によって必要となる生活費の金額は異なります。

標準算定方式はこのことを生活費指数という数値を用いて計算しています。

具体的には、標準算定方式は、この大人と子供のそれぞれに必要となる生活費について、大人の生活費を「100」だとした場合、14歳以下の子供の生活費は「62」、15歳以上の子供の生活費は「85」だろうと考えて、生活費指数を割り振っています。

生活費指数
大人100
14歳以下の子ども62
15歳以上の子ども85

具体例で説明②

上記の夫婦の例で説明します。

⚫︎生活費指数の検討
・大人1人分(自分の分)
 ⇨生活費指数は「100」
・8歳の子供の分
 ⇨生活費指数は「62」
・16歳の子供の分
 ⇨生活費指数は「85」
・合計
 ⇨生活費指数の合計は「247」であり、そのうち子供の生活費指数の合計は「147」である

⚫︎夫の基礎収入金額
収入が500万円の給与所得と400万円の事業所得である場合
⇨夫の基礎収入金額は「500万円×42%+400万円×55%」の430万円

⚫︎子供の生活費の金額
夫の基礎収入金額430万円のうちの「247」分の「147」は子供の生活費の金額である。
⇨「430万円÷247×147」
 =255万9109円

⚫︎結論
子供の生活費は255万9109円

⑷④ ③で計算した子供の生活費を夫婦それぞれの基礎収入にて按分比例して養育費の支払い義務が実際に負担するべき子供の生活費の年額を算定

実際に義務者が負担するべき具体的な養育費の根学は、仮に義務者が子どもと同居していた場合の子どもの生活費を、義務者と権利者の基礎収入にて按分比例して計算します。

具体例で説明③

⚫︎事例
妻には200万円の給与所得が、夫には500万円の給与所得と400万円の事業所得がある。
夫婦の間には子供2人(8歳と16歳)がいる。
夫婦が離婚して、妻が親権者となって子供と生活することとなった。

⚫︎②妻と夫の基礎収入金額
・妻の収入は200万円の給与所得
 ⇨妻の基礎収入金額は「200万円×43%」の86万円
・夫の収入は500万円の給与所得と400万円の事業所得
 ⇨夫の基礎収入金額は「500万円×42%+400万円×55%」の430万円

⚫︎③子供が夫と生活をしていた場合の子供の生活費の金額
⇨夫の基礎収入金額430万円÷夫・子供2人の生活費指数の合計「247」×子供2人の生活費指数の合計「147」
 =255万9109円

⚫︎④③の子供の生活費を妻と夫の基礎収入金額で按分比例
255万9109円を「妻(86万円):夫(430万円)」で按分計算すして、夫の負担分を計算する。
⇨255万9109円×(430万円÷(86万円+430万円)
 =213万2591円

⚫︎結論
つまり、夫は、子供の養育費として年額213万2591円を支払うべきこととなる。

⑸⑤ ④で算定した子どもの生活費の年額を月額に換算する

④で計算した金額は年額ですので、これを毎月の支払い金額に引き直す(12か月で割る)必要があります。

具体例で説明④

上記の例ですと、夫が養育費として支払うべき年額は213万2591円ですので、これを月額に換算すると月額17万7716円(213万2591円÷12か月)となります。

そのため、夫は、妻に対して、月額17万7716円の養育費を支払うべきこととなります。

3.養育費の相場金額は様々な事情で変動する

養育費の相場金額は様々な事情で変動する

養育費の金額は、当事者間の協議で合意ができなかった場合、離婚前である場合には離婚調停(夫婦関係調整調停)、離婚後である場合には養育費請求調停で話し合われます。

養育費請求調停の話し合いにおいて当事者間の合意が成立しなかった場合、調停手続きは自動的に養育費請求審判に移行して、養育費の金額は裁判所が判断することとなります。

そして、審判で法律上認められ得る養育費の金額(すなわち、当事者間で合意が成立しなかった場合に最終的に裁判所が決めるであろう養育費の金額)は、養育費算定表の考え方に基づいて計算した金額です。

ただし、夫婦(元夫婦)の間に養育費算定表から算出できないパターンの事情がある場合には、双方がその金額や計算方法について主張し合うこととなります。

例えば、夫婦の双方が子供の親権者となっている場合(例えば長男は妻が親権者であり二男は夫が親権者となっている場合)などの場合はまた計算結果が変わってきますし、その他にも特別な事情によって計算結果が変わる場合もあります。

ご自身の状況が養育費算定表に当てはまらないパターンである場合には、算定表の金額で納得せず、一度離婚や養育費に詳しい弁護士へ相談してみることをお勧めします

レイスター法律事務所では、無料法律相談において個別具体的な事情に基づいて可能な限り具体的に養育費の適正な金額及び話し合いを進める際のポイント・注意点をお伝えしていますので、是非ご利用ください。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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