【財産分与で損をしないために!】隠し財産を見つけ出す方法(預貯金編)

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財産分与の話し合いの際に、相手が財産隠しをしてくる場合があります。

特に預貯金は財産隠しが行われやすい資産です。

相手に財産を隠された場合、その隠された相手の財産を見つけ出さないと、その分財産分与で取得できる金額が減少したり、本来支払わなくても良いはずの高額の分与金を支払わなければならなくなったりしまう可能性があります。

この記事では、預貯金の財産隠しを見逃さないために、どのような事情・兆候があれば財産隠しを疑うべきか、隠し財産を見つけ出すためにはどのような方法があるのかを解説します。

1.財産隠しを見逃してしまうと財産分与で損をする

財産隠しを見逃してしまうと財産分与で損をする

離婚の話し合いでは、子どもに関する事項(親権者・面会交流の条件)やお金に関する事項(財産分与・慰謝料・養育費・年金分割・婚姻費用)など様々な事項を決めていかなければなりません。

そのような離婚の話し合いが長引くパターンの1つに、財産分与で揉めるパターンがあります。

財産分与とは、夫婦が婚姻期間中に築いた財産(夫婦共有財産)を離婚の際に分け合う制度をいいます。

財産分与のやり方は概ね決まっており、通常、以下の流れで進められます。

財産分与の話し合いの流れ

財産分与の基準時(いつの時点の財産を分け合うのか)を具体的に確定する

財産分与の基準時は「別居日又は離婚時のいずれか早い方」となります。

財産分与の基準時における夫婦それぞれの名義財産の総額を資料に基づいて明らかにする

夫婦が結婚した後に取得した財産であれば、それが夫婦のいずれの名義財産となっているかを問わず、原則として夫婦共有財産と扱われることとなり、財産分与の対象となります。

財産分与の基準時における夫婦それぞれの名義財産から夫婦ぞれぞれの「特有財産」を差し引く。

特有財産は財産分与の対象となりませんので、②の財産の中から差し引く必要があります。
なお、特有財産であるかどうかが不明の財産は、夫婦共有財産であることとされて、財産分与の対象となります。

この財産分与の話し合いにおいて、夫婦の双方が誠実に必要な資料を提出し合って財産分与の計算をするのであれば、揉めることにはなりません。

ただ、実際には、どうにか財産分与の金額を減らしたいと考えて、本来であれば提出するべき財産資料を出し渋ったり、財産隠しをしようとしたりすることが行われる場合もあります

財産隠しが行われた場合、隠された財産を見つけ出さないと、隠された財産の分与を受けることができず、財産分与で支払ってもらえる金額が減少したり、本来であれば支払う必要がない高額の分与金を支払わなければならなくなったりしてしまいます。

そのため、相手が財産隠しをしていると疑われる場合には、どうにか相手が隠した財産を見つけ出さなければなりません。

なお、財産分与全般に関して知っておくべき重要な事項は以下の各記事で説明していますので、併せてご確認ください。

2.預貯金の財産隠しを見逃さない!

⑴預貯金の財産分与の方法

預貯金の財産分与の方法は、基準時(別居時又は離婚時のいずれか早い時点)における夫婦それぞれの名義の預貯金の残高を2分の1ずつ均等になるように分けるという方法が基本です。

具体例で説明

事例:夫名義の預貯金の基準時における残高の総額が600万円、妻名義の預貯金の基準時における残高の総額が200万円であった場合

夫から妻に対して600万円の2分の1である300万円を支払うべき状況である
妻から夫に対して200万円の2分の1である100万円を支払うべき状況である

を併せて考えて、結局、夫から妻に対して財産分与として200万円を支払うこととなる

⑵財産隠しを見逃すと分与してもらえる金額が減ってしまう

夫も妻もそれぞれ自分の名義の預貯金の基準時の金額が分かる資料(通帳の写しや取引履歴など)を誠実に出し合うのであれば、あとは計算をするだけで夫と妻のいずれがいずれに対していくら分与するべきなのかは明らかになります。

しかし、離婚を決意した者が、将来の離婚・財産分与に備えて、財産分与の支払金額をできるだけ低く済まそうと前々から準備をしている場合があります

例えば、以下のような行動です。

財産隠しをする相手の手口

①隠し口座に預貯金を移しておく

相手が、同居中から秘密裏に作成した隠し口座に預貯金を少しずつ移していることがあります。

そのような財産隠しをしている相手は、財産分与の話し合いにおいても、存在が知られている口座の資料しか出してこないことが多いです。

②別居前に預貯金を引き出しておく

相手が、別居前(基準時の前)に預貯金を引き出して基準時の預貯金の残高を低くなるように調整していることがあります。

そのような財産隠しをしている相手は、財産分与の話し合いにおいても、自分の口座の基準時の残高が載っている資料のみをピンポイントで提出して、同居中の預貯金の引き出しがバレないようにしつつ、財産分与の話し合いを切り抜けようとしてきたりします。

相手がこのような財産隠しをしている場合には、相手の財産隠しを見逃してしまい、そのまま相手が提出した資料だけに基づいて財産分与の金額を計算してしまうと、結局、隠された財産は分与してもらえないこととなってしまいます。

⑶財産隠しを疑うべき場合

財産隠しを疑うべき場合

預貯金の財産資料としては、通常、通帳の写し(WEB通帳の場合には残高の分かるページの写し)又は取引履歴を提出して基準時における預貯金の残高を確認することになります。

その際、やましいことがないのであれば、ただ誠実に通帳の写し又は取引履歴を提出すれば良いだけです。

それなのに、相手があえて基準時ピンポイントの残高しか記載されていない残高証明書(特定の日付における預貯金残高のみが記載してある資料)をわざわざ金融機関から取得して提出をしてきた場合には、相手には”通帳を見せたくない”(同居中の預貯金の移動を隠したい)との動機がある可能性(財産隠しをしている可能性)があります。

また、相手が提出してきた資料が黒塗り・マスキング加工されていたり、基準時の残高が同居中の収入や生活状況から考えて不自然に低額であったりする場合も、相手が財産隠しをしている可能性があります。

このように、以下の場合は、相手の財産隠しを疑う必要があります。

  1. 相手がわざわざ残高証明書を提出してきた場合
  2. 相手の預貯金の基準時の残高が不自然に低額である場合
  3. 相手の預貯金の基準時の残高が不自然にキリの良い数字である場合
  4. 相手が提出した資料に黒塗り・マスキング加工が施されている場合
  5. 相手が「他の口座は使っていない」などといった理由でそもそも資料を提出しない場合

3.相手に隠された財産を見つけ出すための方法

相手が財産隠しをしていると疑われる場合には、隠された財産を見つけ出すために、以下の行動をとってみることは有益です。

隠された財産を見つけ出すための方法

  1. 相手に対して過去分の通帳の写しや取引履歴の提出を求める
  2. 相手の給与口座・賞与口座を確認する
  3. 相手の日常的な支払いの引き落とし先口座を確認する
  4. 有価証券・株取引などの資産形成のための口座を確認する

以下で順に解説します。

①相手に対して過去分の通帳の写しや取引履歴の提出を求める

相手に対して過去分の通帳の写しや取引履歴の提出を求める

相手の財産隠しが疑われる場合、相手に対して、過去の履歴が分かる資料(通帳の過去分の写しや取引履歴、黒塗り・マスキング加工が施されていない資料)の提出を求めましょう

その際、財産隠しは将来の離婚・財産分与に備えて開始されるパターンが多いので、基準時の数か月〜1年程度の期間(可能であれば相手が離婚を意識し始めたと思われる時期から別居開始までの期間)の、通帳の写しまたは取引履歴の提出を求めることをお勧めします。

そして、過去分の通帳の写しや取引履歴の提出があれば、それを丁寧に分析して、隠し財産をあぶり出します。

相手の通帳・取引履歴から財産隠しを発見できる例

①「振替」や「振込」との記載

⇨取引履歴に「振替」と記載されている箇所や「振込」と記載されている箇所があれば、「振替」先の口座や「振込」先の口座に預貯金が移動されていることになります。

②不自然な出金

⇨相手が別居前に不自然な出金を行なっていることが判明した場合(例えば離婚を切り出されてから別居に至るまでの期間に従前見られなかったような出金が行われていた場合)には、相手が当該出金の理由を合理的に説明しない限り、その出金額も財産分与の対象としたり、財産分与の割合に関する「2分の1ルール」を有利に変更することができたりする可能性があります。

あなたが財産分与の金額の計算のために資料の提出を求めている(その資料を提出すれば財産分与の話し合いが進む)状況にあるにも関わらず相手が資料の提出を過剰に拒否してくる場合は、ますます相手が財産隠しを行なっている可能性が高まります。

②相手の給与口座・賞与口座を確認する

相手が給与の入金先を複数に分けて片方を隠し口座に設定している場合や、賞与を隠し口座への入金としている場合があります。

具体例で説明

毎月の給与の振込金額が40万円であるはずなのに通帳を見ると毎月の給与の振込金額が30万円しかない場合

⇨残りの10万円は別の給与口座への入金となっている可能性

そのため、相手に対して、給与口座・賞与口座及び給与・賞与の振込金額を資料で明確に示してもらいましょう

その際に相手の給与明細・賞与明細の提出を求めることもお勧めします。

相手の給与明細から発見できる可能性があること

①給与振込口座に入金されるべき正確な金額

⇨給与振込口座に入金されるべき正確な金額が分かれば、それと相手の給与振込口座への給与の入金額を示し合わせることで、相手が財産隠しをしているかどうかを確認することができます。

②給与振込先口座の詳細(複数の口座に分けて入金しているかどうかなど)

⇨相手の給与振込口座が1つなのか複数の口座に分けて給与が入金されているのかを確認することができる場合があります。

③給与から差し引かれる形で積み立てている資産の存在

⇨株、財形貯蓄、保険 など

相手が対応を拒否する場合には、相手にはあなたに隠している給与・賞与口座などの隠し口座が存在している可能性が高まります。

③相手の日常的な支払いの引き落とし先口座を確認する

相手が提出した財産資料の中に、本来存在しているはずのの引き落としの記載が存在していなかった場合は、別の隠し口座からの引き落としになっている可能性があります。

例えば、以下のような引き落としを確認する必要があります。

  1. 相手が使用しているクレジットカードの引き落とし
  2. 住宅ローンの引き落とし
  3. 家賃や管理費の引き落とし
  4. 保険料の引き落とし
  5. 駐車場代の引き落とし
  6. カーローンの引き落とし
  7. 水道光熱費の引き落とし
  8. インターネット代の引き落とし
  9. 携帯電話代の引き落とし

そのため、相手にこれらの引き落とし先の口座及び引き落とし金額を資料で明確に示してもらいましょう

相手がその対応を拒否する場合には、相手にはあなたに隠している口座などの隠し口座が存在している可能性が高まります。

④有価証券・株取引などの資産形成のための口座を確認する

相手が有価証券取引や株式の取引をしている場合には、その取引履歴の提出を求めることも必要です。

そこから相手の隠し口座にたどり着ける場合もあります。

4.相手がどうしても資料を提出しない場合

⑴離婚調停や弁護士との相談を利用する

相手がどうしても資料を提出しない場合

相手が財産分与の計算のために必要な資料の提出に協力しない場合は、相手に対して、資料の提出がなければ財産分与に合意できないと明確に意思表示をして、相手に提出を要請しましょう。

相手がどうしても提出しない場合には、離婚調停を利用したり、弁護士との無料相談を利用したりして今後の対応を検討することをお勧めします。

離婚調停では、相手が資料を提出していない隠し口座が存在している可能性が高い状況であって、その資料の提出がなければ話し合いがまとまらないという状況であれば、調停委員会が相手に対して資料の提出を強く促してくれるでしょう。

また、離婚問題に強い弁護士であれば、手持ちの証拠や現在置かれている状況に鑑み、財産分与で損をしないために今後どのように話し合いを進めていくべきか、相手の隠し財産を炙り出すために現実的にどのような方法を取り得るのかなどといった事項について具体的なアドバイスをしてくれるはずです。

財産分与に関してお悩みの際は、是非、レイスター法律事務所の無料法律相談をご利用ください。

⑵調査嘱託を利用する

調査嘱託とは、簡単にいうと、裁判所が相手名義の預貯金口座の取引履歴などの必要な資料を取得してくれる制度です。

「調査嘱託」については、改めて別の機会で解説します。

     

この記事の執筆者

弁護士山﨑慶寛

弁護士法人レイスター法律事務所
代表弁護士 山﨑慶寛

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