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DVの種類には、身体的DV以外にも、精神的DV、経済的DV、性的DV、社会的DVがあります。
その他にも、悪質なDVの手法として、子供を使ったDVがあります。
コロナ禍の影響で働き方が変わり、リモートワークが増えて自宅で夫婦で過ごす時間が増加したことに伴い、今まで見えてこなかった配偶者のDVの予兆を感じることもあるでしょう。
この記事では、配偶者のどのような行動がそれぞれのDVに該当するのか、チェックリスト方式で解説します。
ご自身がDVの被害を受けていることはないか、配偶者がDVをしてくる予兆を示してはいないか、ご確認ください。
このページの目次
1.DVとは身体的暴力だけを指すものではない
DV(家庭内暴力)は、絶対にあってはならないはずの最悪の行動です。
DVと言われて真っ先に思い浮かべるのは、殴る・蹴るなどといった身体的な暴力でしょう。
ただ、DVとは、そのような身体的暴力に限られるものではなく、その他にも様々な種類のDVが存在しています。
DVの種類
- 身体的DV(身体的暴力)
- 精神的DV(精神的暴力)
- 経済的DV(経済的暴力)
- 性的DV(性的暴力)
- 社会的DV(社会的暴力)
- 子どもを使ったDV
⑴①身体的DV(身体的暴力)
身体的DV(身体的暴力)は、DVの典型例であり、例えば以下のような行為です。
身体的DV(身体的暴力)の具体例
- 殴る、蹴る、小突く、腕をねじる、首を絞める
- 突き飛ばす、階段から突き落とす
- 髪を引っ張る、髪を持って引きずり回す
- 物を投げつける
- 必要な治療を受けさせない
- 包丁などの凶器で切りつける、突きつける
- このような行動をする素振りを見せて脅かす
身体的DVは家庭内で行われる行為であり、DV被害者はDV加害者と生活の本拠地が同一であるため、DV夫から逃げたくても逃げられないという状況に陥ることもあります。
特に幼い子どもを持つ母親は、DV夫の攻撃から逃れる手段が見つけられず、自分さえ我慢をすれば済むと考えて、DVの被害を受け続けている例も多くあります。
もし、あなたが現在進行形で身体的DVを受けている状況である場合には、シェルターの利用も検討することをお勧めします。
シェルターを利用することで、どんなタイミングでも速やかにDV夫による暴力から逃れることができます。
DVシェルターとは?利用の流れや重要事項を解説【DV夫から今すぐ逃げる方法】
⑵②精神的DV(精神的暴力)
精神的DV(精神的暴力)は「モラハラ」(モラルハラスメント)とも呼ばれるもので、DVの一種です。
配偶者暴力防止法(DV防止法)も、精神的DV(精神的暴力)も「配偶者からの暴力」(すなわちDV)に該当することを定めています(同法1条1項)。
配偶者暴力防止法(DV防止法)1条1項
「この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい(略)」
このような夫婦間のモラハラは「家庭」という「三密」で恒常的に行われるため、逃げ場がなく、精神的にぎりぎりまで追い詰められてしまい、精神疾患を発症してしまう例もある、深刻な問題です。
夫婦間のモラハラの特徴
⇨「家庭」という「三密」での恒常的なモラハラ
- 密閉空間でのモラハラ
モラハラをしてくる配偶者と生活の本拠が同一なので逃げ場がない - 密集場所でのモラハラ
夫婦間のモラハラは同一の部屋内で行われるので逃げ場がない - 密接場面でのモラハラ
夫婦間のモラハラは対面で行われるので逃げ場がない
↓
精神疾患などの深刻な被害
例えば以下のような行為は精神的DV(精神的暴力)に当たる場合があります。
精神的DV(精神的暴力)の具体例
- 独善的な解釈や自分の判断を押し付けてくる
- 口汚くののしる、暴言を吐く
- 脅す
- 価値観や人間性を否定したり、見下すような発言をする
- 強く従わせようとする
- 大声で怒鳴る
- 無視する
- 発言をさせない
- 自宅への出入りを制限する、自宅から締め出す
- 大事にしている物を壊す、捨てる
- 趣味や大事にしている物事をバカにする
- 人前でバカにする
- 自分の失敗や苛立ちの原因・責任を押し付けてくる
- 謝罪や反省を強いてくる
- 命令口調で要求する
このようなモラハラ人間は自身が尊重されることを極めて重要視した言動を続けますが、基本的に相手の意見や人間性を尊重することをしません。
相手からモラハラ被害を恒常的に受け続けていると、優しい人・夫婦関係を大切に思っている人ほど相手のことを思いやって、相手の機嫌を過度に気にするようになり、悪いのは自分であると考えるようになってしまったりします。
そして、モラハラ行動は、基本的に改善されず、徐々にエスカレートしていくものです。
そのため、「いずれ改善されるだろう」と相手を信じて我慢を重ねても改善される日が来ることはなく、むしろ相手がどんどん助長していってしまう可能性があります。
自分の配偶者からされてきた言動が実はモラハラ行動であった場合には、深刻な事態になる前に、モラハラをしてくる夫(妻)との付き合い方をしっかりと見直していくことが必要です。
モラハラ離婚の慰謝料の相場と慰謝料獲得を失敗しないための方法・必要な証拠を説明
⑶③経済的DV(経済的暴力)
生活をしていくためにはどうしても金銭を消費することが必要です。
経済的DV(経済的暴力)は、その金銭を消費することを徹底的に制限し、管理下に置いて監視する行為です。
稼ぎのない状況で生活資金(=生きていくためのお金)を徹底管理され監視下に置かれてしまったら、生きていくために否応がなく相手に従わざるを得ない状況に陥ってしまう可能性があります。
DV加害者の大きな傾向として、配偶者を力で支配したいという思いがあります。
経済的DVは、そのような思いが、配偶者の経済的な状態を支配し、配偶者から経済力・金銭という生きるための力を奪うことに向かった形です。
例えば以下のような行為は経済的DV(経済的暴力)に当たる場合があります。
経済的DV(経済的暴力)の具体例
- 仕事をさせない、仕事を辞めさせて専業主婦(夫)になることを強いる
- 自由に使えるお金(お小遣い)を渡さない
- 何も買わせない、買い物の決定的を与えない
- 欲しいものを買う際に懇願・土下座をさせる、自分に都合の良い条件を出す
- 十分な生活費を渡さない
- 生活費を渡す時に懇願・土下座をさせる、自分に都合の良い条件を出す
- 生活のために預貯金を取り崩していたり、両親から援助を受けていたりすることを見て見ぬふりをする
- 生活のために借金をしていることを見て見ぬふりをする
- 過度に家計を管理する
- お金の使途を過度に細かくチェックして、使途の背景事情などについての詳細な説明を求めてくる
- 金銭の消費につき苦言を呈して謝罪を強要する
- 過度に倹約を強いる
- 家計の状況を頑なに明かさない、預金通帳を見せない
- 給与明細や自身が管理している家族の貯蓄口座の状況を頑なに明かさない
- 半ば無理やり借金を負わせる
- 生活のために借金をしていることを見て見ぬふりをする
- 相手の金を無断で使用する
経済的DV(経済的暴力)は、被害者が自身がDVの被害者であることに気が付きにくいとの特徴があります。
その理由の一つは、どこまでが通常の範囲内の家計管理等であって、どこからが経済的DVに該当するほどの状況であるのかが分かりにくいことにあります。
ただし、配偶者から上記のような行為を受けている場合には、あなたは経済的DVの被害を受けている状況である可能性があります。
⑷④性的DV(性的暴力)
夫婦であっても同意のない性行為が許されないのは当然です。
また、避妊に協力しなかったり、中絶を強要したりすることも、当然許されない行為です。
例えば以下のような行為は性的DV(性的暴力)に当たる場合があります。
性的DV(性的暴力)の具体例
- 望まない性行為を強要される
- 過剰な頻度での性行為を強要される
- 嫌がる性的な行為を強要される
- 特殊な性的嗜好(SM行為、排泄行為、他人との性交渉など)を強要される
- AV(アダルトビデオ)で視た性的な行為の実践を強要される
- 薬を使わせて性行為をされる
- 扇情的な動画の視聴や書籍を読むことを強要する
- 卑猥な言葉を聞かされる、言わされる
- 他の女性との比較や過去の性的経験・性的体験を聞かされる
- 過去の性的経験・性的体験を言わされる
- 外出先での露出・性的な行為をすることを強要される
- 衣服や下着を身に付けずに行動することを強要される
- 写真や動画の撮影を強要される
- 身体を道具のように扱われる
- 性的な事柄について侮辱・否定する、性的に貶められる
- 避妊に協力してくれない
- 望まぬ妊娠・出産を繰り返させる(多産DV)
- 中絶を強要する
- 売春・性風俗・性的サービス産業での労働を強要される
このような行為が行われていた場合には、たとえ殴る・蹴るなどの身体的DV(身体的暴力)が伴わない場合でも、性的DVに該当する可能性があります。
夫の一方的な性的欲望を満足させるために我慢をする必要は一切ありません。
性的DVは、様々なDVの中でも最も他人に相談しにくいDVであり、最も泣き寝入りが起こりやすいDVです。
ただ、性的DVにより被った精神的なダメージは、単純な身体的DVによるダメージよりも回復して立ち直ることができるまで非常に時間を要することが多いこともあり、その被害は深刻です。
言うまでもなく、性的DVは決して許されるものではありません。
【性的DV】夫による性的暴力・性的強要という悪質なDVと離婚・慰謝料
⑸⑤社会的DV(社会的暴力)
家族や友人を含む家庭外の全ての人間関係の断絶・希薄化を強要することも、DVの一種です。
社会と断絶させられて、生きる世界が文字通り家庭内にしかない状況に置かれると、人は逃げられず、理不尽な要求に立ち向かう力も気力も失ってしまいかねません。
これも、配偶者を力で支配したいというDV加害者の思いが現れたものと言えます。
例えば以下のような行為は社会的DV(社会的暴力)に当たる場合があります。
社会的DV(社会的暴力)の具体例
- 実家や友人との交流に強く苦言を呈したり、制限(連絡遮断・許可制)したりする
- 他者との交流の断絶を要請するなど、他者との関係の希薄化を強要する
- 行動を監視する
- 電話やメールをチェックする
- 携帯電話にパスワードをかけることを許さない、開示を求める
- 手帳などを細かくチェックする
⑹⑥子供を使ったDV
DVの手法として、子供が使われることもあります。
例えば、以下のような行動です。
DVの手法として、子供が使われている例
- 子供を取り上げる
- あえて子供の前で暴力を振るう
- 子供の前で喧嘩をふっかけられる
- 子供の前で罵倒する
- 子供を虐待する
- 「子供に危害を加える」などと脅す
- 子供に悪口を吹き込む
- 子供に非難・中傷する内容の発言を言わせる
このような行動は、子供に対する虐待でもあって、子供にも多大な悪影響が生じるものであり、非常に悪質性の高い行為です。
2.DV被害の可能性を感じたら
コロナ禍の影響で在宅勤務が増加したことや、休日に外出しないで自宅で過ごす時間が増加したことで、夫婦で過ごす時間が増えました。
その影響で、以前は問題とならなかった配偶者の側面が見えてくる場合もあり、ちょっとしたすれ違いからDVに発展していく場合もあります。
また、人生の転機(結婚、転職、転勤、引越し、妊娠・出産、子供の進学、両親の介護など)で夫婦の生活スタイルが変化すると、配偶者のDV気質な性格が突然に露呈することもあります。
周りから客観的に見ればDV被害を受けていることが明らかである場合も、DV被害者本人はそのことに気がついていない場合もあります。
仮にあなたが、もしかしたら自分はDVの被害を受けているかもしれないなと思ったとしたら、実は「かもしれない」というレベルの話ではなくて、明らかなDV被害を受けている状況である可能性もあります。
DVの被害を受けているかもしれないな、もしかしたら配偶者にDVの予兆があるかもしれないなと感じた場合には、事態が悪化する前に、
などに相談することをお勧めします。
また最近では、男性(夫)が、妻である女性からDVを受けているというご相談も増えており、男性側がDV被害者であるパターンも多く存在します。
そんな中で、相手のDVを立証し、DV加害者から慰謝料を獲得した上で離婚に至るためには、同居中に証拠を確保することも重要となってきます。
このように、将来の離婚を見据える場合には、できるだけ早めに弁護士に相談しておくことが重要です。
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